事務職 人事部 工学部卒業 2001年入社

自分から積極的に働きかけコミュニケーションを
工夫していくことで
やりがいのある
仕事をこなし、より良い
職場作りに貢献

会議では音声認識ソフトを活用、
手話の講師も

私は先天性の聴覚障害があります。2001年に当時のキリンビール社の障害者採用で入社し、現在は協和キリンの人事部で仕事をしています。人事部内の備品の発注や契約書管理等の庶務的な仕事に加え、協和キリン全社員の災害時の安否確認システムの管理や、全国の事業所の人事担当者が集まる会議の運営にも携わっています。
入社4年目に最初の子どもを出産してから3人の子どもに恵まれ、育児休職を取り、長く職場を離れていた時期がありました。その間に、会社が統合し協和キリンが発足しました。休職から復帰した部署は、多くの人が別の部署に異動していたため、知らない人ばかりになっていて不安を覚えたり、異動でこれまでとは違う新しい仕事に挑戦したりと、公私ともに環境が変わる目まぐるしい日々でした。子どもができたら仕事はやめるかもしれない、と考えていた時期もあります。しかし、子育てしながら働いている先輩に「必ず復帰してください」と言われ、背中を押されました。会社に必要とされていると思うと非常にうれしかったのを覚えています。妊娠中に体調が悪かったときは「休んでいいよ」と言ってもらうなど、女性にとって働きやすい環境であることも仕事を続けていられる理由だと思います。
社内での会話は基本的に文字の書けるタブレットを使った筆談です。会議では参加者がしゃべる言葉が画面に文字になって表示される「音声認識システム」を使っています。さらに、「やってみたら」という上司の助言から、人事部内で手話の勉強会も行っています。希望者を募り、毎週1回から2回、手話の講師を務め、人に教えることで私自身も大きく成長できたと思います。

システム管理や事務局運営など
重要なミッションを担当

人事部に異動して一番驚いたのは、重要な仕事をいろいろと任されたことです。まず、安否確認システムの管理は自分でもびっくりしました。私にできるのかと不安でしたが、挑戦してみることにしました。このシステムは災害などが発生したことをメールで社員に通知し、社員の安否確認を行うものですが、パスワードを忘れたり、携帯の機種変更をしたりして使えなくなってしまう人もいます。従業員の安全にかかわる大切なことですので、ユーザーサポートやシステムの安定運用に気を配っています。このシステムの管理業務では引き継ぎを含めて外部との打ち合わせも多く、慣れるまでは不安もありましたが、次第にやり方を把握するにつれて自信がつきました。また、全国の事業場から人事担当者が集まる会議の事務局もやりがいのある仕事です。
会議の案内メールから出欠のまとめ、進行表作成と資料整備、会議の準備まで、やることはたくさんあります。周囲のサポートも受けながら事務局の仕事を進めています。障害者だから難しい仕事はやらせてもらえないのでは、と思う人がいるかもしれません。しかし、協和キリンでは、私のようにシステムの管理や会議の事務局運営といった重要な仕事を任され、責任をもって確実に実行することが求められます。こうした仕事を通じて、自分自身が成長できたと思います。
やりがいを持って働けるのは、理解のある会社や上司、同僚の皆さんのおかげですが、私自身はまだまだ働く環境を変えていく必要があると思っています。それは職場のバリアフリーです。例えば、会社のホームページに動画があっても、字幕がないと私には何を言っているかわからないのです。そうした、聞こえる人にしか把握できないような状況はさまざまな場面であり、なくしていかなければならないと思っています。社内には私のほかにも聴覚障害者がいますが、私たちが気持よく働き続けるためには、周りの方のサポートがとても重要になります。私たち聴覚障害者は、一見したところでは健常者と変わらないので、周囲からのサポートについては自分たちから積極的に発信していかないと、状況が変わらないこともまだまだ多いのが現実です。仕事で必要とされ、頼られる人材になるとともに、障害者が健常者と同じ情報をストレスなく得られるような、職場のバリアフリーを実現していくことも私の目標です。