運動

1日1万歩の謎

一度は耳にしたことがある『1日1万歩』説。
はたしてこれには根拠があるのか?
最近の研究結果も含め解説します。

そもそも「1日1万歩」説は
どこからきた?

厚生労働省の「健康日本21」参考1)では、身体活動量増加のための手段として「歩数の増加」をあげており、「1日1万歩」が理想とされています。「1日1万歩」の根拠としては、身体活動量と死亡率との関連を調査した研究結果 参考2)から、1週間に約2,000kcal(1日約300kcal)以上のエネルギー消費に相当する身体活動が推奨されており、普通のペースで約1,000歩あるいた場合(約10分)の消費カロリーが、おおよそ30kcalとなるので、1日300kcal消費するのに必要な歩数は約1万歩(約1時間40分)となります。

ちなみに米国では
米国におけるデータを基に、現在米国では1日30分、週5回(150分/週)の早歩きが推奨されています参考3)

最近の研究から75歳以上は
“1日8千歩・早歩き20分”説も

群馬県中之条町に住む65歳以上の住人約5,000人を対象に、身体活動と病気の関係を15年以上にわたり調査した研究参考4)によると、75歳以上の場合は、1日8千歩・早歩き20分(1年間の1日平均歩数が8千歩、うち早歩きなど少し強度の高い運動が20分)、75歳未満の場合は1日1万歩・早歩き30分でメタボの予防に効果が期待できるとしています。ただし、この値は1年間の平均です。疲労が溜まっているときや悪天候の時などは無理せず、長いスパンで目標達成を目指しましょう。

わざわざウォーキングに
出かけなくても達成できるかも

時間がある時は一駅分歩く、なるべく階段を利用する

まずは歩数計で現状の歩数をチェックしてみましょう。ちなみに平成27年「国民健康・栄養調査」参考5)では、歩数の平均は男性7,194歩、女性6,227歩という結果でした。ただ、歩数が足りないからといって、そのためだけにウォーキングに出かける必要はありません。「時間がある時は一駅分歩く」「できるだけ階段を利用する」「改札や乗り換え口から遠い車両に乗る」など日常生活の中で少しずつ補っていくことで達成できることも。また、達成できない日があっても、週末に歩き貯めをして「1週間7万歩」でも良いので、自分のライフスタイルにあったやり方で歩数を増やしましょう。

  • 参考 1)厚生労働省:健康日本21[身体活動・運動]
  • 参考 2)Paffenbarger RS Jr:N Engl J Med, 314:605, 1986
  • 参考 3)Haskell WL:Med Sci Sports Exerc, 39:1423, 2007
  • 参考 4)青柳幸利:医学のあゆみ,243:793,2015
  • 参考 5)厚生労働省:平成27年 国民健康・栄養調査結果の概要