抗FGF23完全ヒト抗体burosumabのX染色体遺伝性低リン血症および腫瘍性骨軟化症を対象とした臨床試験結果に関する追加データの学会発表について

本ニュースリリースは、協和発酵キリンと米国ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルが発表した英文プレスリリースを、当社が日本語に翻訳し、発表しています。
本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先しますことをご留意下さい。
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協和発酵キリン株式会社(本社:東京、社長:花井陳雄、以下「協和発酵キリン」)とウルトラジェニクス・ファーマシューティカル(本社:米国、社長:エミル・D・カキス、以下「ウルトラジェニクス」)は、現在実施中の1歳以上5歳未満の小児X染色体遺伝性低リン血症(XLH)※1を対象とした第2相臨床試験における40週のデータおよび腫瘍性骨軟化症(TIO)※2を対象とした第2相臨床試験における24週のデータについて、良好な成績が得られ、その内容をAmerican Society for Bone and Mineral Research(ASBMR)の2017年年会にて発表したことをお知らせ致します。なお、本学会では成人XLHを対象とした第3相臨床試験における24週のデータや、5歳から12歳の小児XLHを対象とした第2相臨床試験における64週のデータ、さらに同試験における身体機能の評価結果についても発表しました。

1歳以上5歳未満の小児XLH第2相臨床試験

本試験は、多施設共同非盲検試験であり、1~4歳までの13名の患者が登録され(平均年齢2.9歳)、その内12名は既存治療である経口リン製剤および活性型ビタミンD製剤の投与を受けていました。本試験は試験期間が64週でburosumabを2週間に1回皮下投与し、本剤の安全性や薬力学データ、有効性を確認することを目的としています。すべての被験者の初期投与量は0.8mg/kgで、目標血清リン濃度が目標値に達するまで、最大1.2mg/kgまで増量することが可能です。すべての被験者において40週までの投与が完了しています。

その結果、burosumabは投与開始1週間後から被験者の血清リン濃度を平均で1.2mg/dL上昇させ、被験者の血清リン濃度は正常値下限域に達しました。そのうち77%の被験者では40週時点での血清リン濃度が正常値下限域に維持されていることが認められました。血清1,25-ジヒドロキシビタミンD濃度も試験開始から40週までの期間で上昇しました。

くる病の重症度の評価をRSS(Rickets Severity Scoring)scoring systemを用いて行ったところ、全ての被験者は試験開始時にくる病症状を呈しており、13名の被験者のうち12名のRSSスコアは1.5以上でした。平均RSSスコアは40週時点で有意に低下しました(-59%,p<0.0001)。また、くる病の重症度の評価はRGI-C(Radiographic Global Impression of Change)スコアも用いており、すべての被験者でSubstantial healing(くる病の十分な治癒、RGI-C score >2)と評価されました(p<0.0001)。また、RGI-Cによる下肢変形の評価においてburosumabは脚の湾曲を有意に改善しました(p<0.0001)。アルカリフォスファターゼの平均値についても40週時点において有意な減少が観察されました(-39%,p<0.0001)。

すべての被験者において、1件もしくはそれ以上の有害事象が観察されました。重篤な有害事象として、本剤投与との関連性はないと考えられる歯の膿瘍が1例観察されました。その他については、本剤投与とは関連しないと評価されたGrade3の食物アレルギー1例を除き、いずれの事象も軽度もしくは中等度と判定されました。また3例において注射部位反応、本剤投与とは関連しないと考えられる過敏症の症状が4例に見られました。血清カルシウム濃度および尿中カルシウム、血清intact PTH濃度については、臨床的に意義のある変動は認められませんでした。高リン血症も観察されず、試験期間中の死亡例や試験からの脱落もありませんでした。

成人TIO第2相試験

本試験は、17名の成人TIO及びENS患者さんに対してKRN23の安全性及び有効性、至適用量の評価を目的とした非盲検用量設定試験です。主要評価項目は、血清リン濃度と骨軟化症に関連した主な骨生検パラメータの変動です。16例における平均血清リン濃度や腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)※3、血清1,25-ジヒドロキシビタミンD濃度は初回投与から24週までの期間で上昇しました。試験開始時の平均血清リン濃度は1.6mg/dLであり、正常下限値である2.5mg/dLを下回っていましたが、本剤投与開始後2週間で正常域に達し、その値は24週まで維持されました。24週時点における骨代謝マーカーのI型プロコラーゲン-N-プロペプチド(P1NP)やI型コラーゲン架橋C末端テロペプチド(CTX-1)も有意に上昇しました(それぞれ51%と38%)。

骨組織形態学的パラメータから、試験開始時において、全ての被験者が中等症あるいは重症の骨軟化症を有していることが確認されました。48週時点での骨生検を行った4例のうち3例については、burosumab投与により骨組織形態学的パラメータが改善しました。残りの1例についてはburosumabが継続投与されていませんでした。またBurosumabは患者報告アウトカムにおいて、臨床的に意義のある改善を示すことが認められました。試験開始24週時点において、簡易倦怠感尺度(Brief Fatigue Inventory:BFI)を用いた4つの疲労感に関するパラメータと痛みの指標が有意に減少しました。またburosumabは、24週での立ち上がりテストにおいて下肢筋力を有意に増加させました。

有害事象はすべての被験者で発現し、治療に関連した有害事象はビタミンD欠乏や発疹の他、味覚障害が7名(44%)に認められましたが、いずれの事象も軽度でした。重篤な有害事象を示したのは3名で腫瘍(転移性紡錘細胞肉腫)の増悪、胸部硬膜外腫瘍の圧迫、間葉腫瘍の増悪でした。治療に関連する有害事象として判定されたものはありませんでしたが、これらの被験者はすべて試験開始時に腫瘍の増悪の履歴があり、そのうち1例は増悪した腫瘍の治療のため試験から脱落しました。最も多い有害事象としてはGrade1もしくは2の注射部位反応と下肢静止不能症候群がそれぞれ2名の被験者で認められました。血清カルシウム濃度および尿中カルシウム、血清intact PTH濃度については、臨床的に意義のある変動は認められませんでした。

  • ※1X染色体遺伝性低リン血症(XLH)について
    XLHは、遺伝的な原因により血中のFGF23が過剰となることで、体内のリンが尿中に過剰に排泄され低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患です。
  • ※2腫瘍性骨軟化症(TIO)
    TIO及びその皮膚病変の変異型表皮母斑症候群(ENS)に伴う骨軟化症はFGF23を過剰分泌する一般的には良性の腫瘍や皮膚病変により生じるもので、尿中への過剰なリン排泄を引き起こすことにより、重篤な低リン血症や骨軟化症、筋力低下、疲労、骨痛、骨折を引き起こします。これらの症状は原因となる腫瘍や病変を切除すれば急速に改善しますが、摘出が不可能な場合や摘出しても再発する場合があります。切除不能な腫瘍や病変の場合、現在はリン酸製剤やビタミンD製剤による治療が行われていますが、この治療法は過剰なFGF23を直接抑制するものではなく、また腎臓の石灰化や高カルシウム血症を引き起こすリスクを踏まえて行う必要があるため、治療効果は限定的です。米国ではTIOの患者さんは500から1,000名程度存在し、そのうちの半数は切除不能と推定されています。
  • ※3腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)
    腎臓のリン再吸収能の指標です。XLH患者さんでは低値であり、リンが尿に過剰に排泄されている状態を示します。
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