社員座談会「協和キリンが取り組むペイシェントエンゲージメント/ペイシェントアドボカシー」「この薬の先に、患者さんの笑顔がある」
全社で推進する協和キリンのPE/PA活動とは

鈴木 康平スズキ コウヘイ

メディカルアフェアーズ部2004年度入社/新卒

髙藤 修平タカフジ シュウヘイ

生産本部 高崎工場人材開発室2022年度入社/キャリア

吉川 由利子ヨシカワ ユリコ

開発本部 開発企画部2013年度入社/新卒

村上 真淑ムラカミ マスミ

研究本部 研究企画部2015年度入社/新卒

  • ペイシェントセントリシティ(PC)
    患者さんの経験、視点、ニーズ、プライオリティを積極的に理解し、患者さんにとって意味のある形で事業活動に組み入れようとするマインドセットのこと
  • ペイシェントエンゲージメント(PE)
    患者コミュニティと協和キリンとの相互交流を通じて、患者さんや介護者の生活やケアにおける課題を深く理解し、課題解決のために共創する取り組み
  • ペイシェントアドボカシー(PA)
    患者さんや医療従事者など、さまざまなステークホルダー間の話し合いや連携を通じて、病気とともに生きる人々に対する、よりよい疾患認知、疾患理解、ケア、治療を推進する取り組み

「患者さん中心(ペイシェントセントリシティ:PC)」の考えのもとで事業を続けてきた協和キリン。2021-2025年中期経営計画では「患者さんを中心においた医療ニーズへの対応」が戦略の柱に据えられました。ともすれば接点の多い医療従事者の声が中心となってしまう可能性のある製薬業界において、薬の最終的な消費者である患者さんのために何ができるのか。患者さんを支援する活動である「ペイシェントエンゲージメント(PE)/ペイシェントアドボカシー(PA)」をテーマに、所属部署の異なる4人に語っていただきました。

協和キリンが目指す「PC」や「PE/PA」について教えてください。

私が新卒で研究職として入社したとき、「PE/PA活動」というワードこそ表に出ていませんでしたが、「患者さんのために薬を作る」という理念には大きく共感しました。ただ、忙しく働いていると、どうしても薬を次の部署に渡すことがゴールとなり、薬を届ける相手である患者さんへの意識が薄れてしまうときがあります。2021-2025年中期経営計画で「患者さんを中心においた医療ニーズへの対応」が戦略の柱に据えられ、PE/PA活動に注力するという決意表明がなされたことで、あらためてハッとしたのを覚えています。頭ではわかっていたつもりの患者さん中心の考え方を日々の業務に落とし込み、具体的にPE/PA活動に取り組むきっかけになりました。

村上

協和キリンには、2008年に作られた「私たちの志」というメッセージがあります(https://www.kyowakirin.co.jp/careers/recruit/ambition/index.html)。病気と向き合うすべての人に笑顔を届けたい。そのために力を合わせ、人の「いのち」と歩んでいくという強い思いが根底にあるからこそ、患者さん中心の考え方であるPCやPE/PAは自然な概念として受け入れられていると感じています。

鈴木

協和キリン2021-2025年中期経営計画 2030年に向けたビジョン

患者さんを中心においた医療ニーズへの対応

協和キリンでは、全社的なPE/PA活動はコーポレートコミュニケーション部が主導しており、全社向けに活動を推進しています。各部門のPE/PA担当者は、各部門の啓発に加えて、開発品や上市後の製品に関する課題解決を目的として、患者さんと共創するPE/PA活動を主に進めています。

吉川

皆さんの普段のお仕事と、取り組んでいるPE/PA活動について教えてください。

私が所属する研究本部は、所属するメンバーの約7割が研究職で、薬の「種」を見つけて育てていく役割と、それに必要な技術研究を行う役割を担っています。研究は外から見ると単独で黙々と取り組むイメージがあるかもしれませんが、実際にはチーム単位で、それぞれの専門分野を組み合わせて補いながら進めていきます

私は新薬候補分子を作製する業務を担当していましたが、その分子を別の部署のメンバーが評価・解析して新たな発見を付加するようなフローのなかで、協和キリンにはすごい研究者がいるなと常々思っていました。しかし反面、優秀な研究者がなぜか組織のなかで才能を発揮できないようなケースも目の当たりにして、次第に研究支援に興味が湧きました。そこで研究環境の仕組みづくりや戦略立案を担う研究企画部に異動し、現在は患者さんの声を研究に取り入れる活動と、DXを取り入れた人材育成戦略の検討に取り組んでいます。

村上

村上さんが所属する研究本部で基礎研究や探索研究、薬理試験がなされたあと、私が所属する開発本部での非臨床・臨床開発に移ります。私も2年ほど前までは臨床開発現場の最前線で臨床試験の計画やオペレーションを行っていましたが、現在は開発企画部で、そうした最前線で奮闘するプロジェクトメンバーを支援しています。臨床開発を遂行する皆さんは、1日でも早く患者さんにお薬を届けることを目指し、時にはタイムラインを遅らせられないというプレッシャーとも闘っています。そのため、臨床開発の流れや苦労を知っている私が後方からサポートし、皆さんの負担を軽減したいと考えています。

現在、サポートの1つとして、患者さんの声を臨床開発に取り入れるための仕組みづくりをワーキングチームで進めています。どのような患者さんの声を、いつ、どのような方法で聞けばよいかを考える機会を創出することで、PEが臨床開発業務の一部として、自然と根付くことを目指しています。また、仕組みづくりと並行して、PEに関する各国の規制などの外部環境等を理解するためのトレーニングも検討しています。開発本部の社員の皆さんが、その必要性を腹落ちできた状態で、アクションをとれるような環境を整備しています。

吉川

私は薬を生産して送り出す生産本部に所属し、教育・研修のプランニングと実施にまつわる業務を行っています。ここ数年でキャリア採用の人数が増えたこともあり、協和キリンのマインドや基本知識といった初期サポートのほか、ビジネススキルや個別の技術習得などの研修を企画することもあります。またPE/PA活動としては、高崎工場の竣工式に患者さんを招聘するイベントを企画・運営したり、生産本部の別拠点で開催されるイベントへのオンライン参加を促進したりして、生産本部の皆さんのPCマインドの醸成に努めています。

髙藤

私が所属するメディカルアフェアーズ部(MA部)は、患者さんや医療従事者のアンメットニーズ、つまりまだ満たされていない医療ニーズの充足に取り組んでいます。アンメットメディカルニーズを把握し、それをもとにメディカルプランを作成して、エビデンスの創出を行います。この創出したエビデンスを用い、アンメットメディカルニーズの解決や疾患に対する理解促進のための情報提供を行っています。社内のコアバリューチェーンにおいて、製品へ付加価値をつけ、その価値の普及を目的として活動していると言い換えることもできますね。

私自身は、臨床研究の外部委託や品質のマネジメントといった日常業務に加え、MA部内のPCワーキングチームのリードとして活動しています。ワーキングチームでは、MA部全体の活動の底上げを目的に、患者支援団体による研修(2024年)、MA部の実施しているPE/PA活動を明確化し認知してもらう取り組み、PE/PA活動のモニタリング、社内への積極的な発信などを推進しています。また、他部署と連携し、医薬品の適正使用情報を提供しているくすり相談窓口や日々のメディカル活動で収集した患者さんに関する情報を、今以上に幅広く活かす方法について協議しています。これらの活動を通じ、PC・PE/PAをより根づかせ、協和キリン全体に貢献できるよう、活動を進めています。

鈴木

研究本部および開発本部では、他社との3社協働で各社が年1回の開催を持ち回りで担当しながら、「Healthcare Café」を開催しています。これは、病気だけではなく、生活や人生観にまでおよぶ幅広いインサイトを得ることを目的とした活動で、研究本部および開発本部の社員と患者さんやご家族との対話をコーディネートしたり、医療従事者に講演していただいたりしています。研究本部・開発本部以外の部署にも関わるようなテーマの場合、全社的にイベント開催を知らせて参加を募ることもあります。こうした活動によってマインドを醸成し、PEを業務に活かすことが当たり前になっていくのが理想ですよね。

吉川

医薬品のライフサイクルにおける患者さんとの協働機会 および 取り組み事例

皆さんの所属部署において、PE/PA活動を推進する目的はなんでしょうか。

ものづくりの現場にいると、どうしても「品質のよいものを納期までに作る」ことがゴールになりがちです。企業ですから、やはり納期・生産性・品質、さらに安全を優先することになりますが、PE/PA活動によって患者さんの生活や想いに触れると、どうしてそれを目指すのかの姿勢が変わるような気がします。

生産現場では、納期に間に合うのは当たり前のことで、それを褒めてくれる人はいません。トラブルは許されないという緊張感のなかで、「われわれの仕事の本質は物流倉庫に製品を入れることではなく、患者さんに届けることなんだ」という気づきは、品質向上と業務に対するモチベーション向上に大きく貢献すると思います。

髙藤

本当にそうですね。研究本部は薬の種を見つけ、育てるところを担当するので、作ったものが世に出るのは10年、15年先になります。自分の手を離れて上市された薬のことを考えられる機会はあまりありません。でも、15年先の患者さんに思いを馳せるために、まずは今、薬を使っている患者さんの声に耳を傾け、この患者さんの生活をどう変えたいかを考えることはすごく重要です。

村上

一方の臨床開発においては、患者さんの声は目の前の業務に直結することがあります。たとえば、薬の使用頻度をどうするかは臨床開発の段階で決まっていくのですが、毎日使用することは患者さんにとってどの程度の負担感なのか、逆に使用間隔が長すぎる場合の不都合は……など、いくつもの判断が必要になります。もちろん医師などの医療従事者にはヒアリングをしますが、実際に薬をお使いになる患者さんの声があるとより判断しやすくなります。社内で妥当と判断された医療機関への通院頻度であっても、働き世代の患者さんの場合、仕事との両立が困難な場合があります。患者さんの視点も取り入れながら臨床試験をデザインすることで、臨床試験が円滑に進み、1日も早く患者さんに薬を届けることにつながると思います。

吉川

昨年、沖縄の離島で地域医療に取り組んでいる方をPE/PAイベントの登壇者としてお招きし、 協和キリンで製造しているある製品の医療現場でのお話を伺いました。この製品があることで患者さんへの負担が軽減された実例を教えていただき、生産現場でもあらためて剤形への気づきを得られました。自分たちが製造した薬が確実に患者さんのお役に立っている。そういう生の声を聞けたことはとても励みになりました。

髙藤

実際にお話を聞くと、製薬会社と患者さんでは考え方が違うと気づく場面がよくあります。研究者の立場から「他社の薬とは作用機序が違うから、きっと患者さんのためになる」と思っていても、患者さんにとってはどんなメカニズムの薬かは重要ではないようです。それよりももっと「治療後に出てくる手のしびれを解消してほしい」といった本当の困りごとを聞くこと、疾患だけでなく、その疾患と付き合ってきた患者さんの生活を深く知ることは大切な機会ですね。

村上

MA部には、承認された薬の価値を高めるという使命があります。承認が取れたばかりの薬に付加価値をつけ、患者さんにより製品を理解していただいたうえで薬剤選択してもらえるように取り組んでいます。また、どうすれば患者さんに薬剤を知ってもらえるのかを模索することも活動の一環です。特に希少疾患では、患者さんに疾患や治療の情報が届きにくい環境があるため、情報発信方法を工夫しています。治療を必要とする患者さんが速やかに専門医に出会え、適切な医療にアクセスできるようにするためにも、患者さんとの対話は大切だと考えています。

鈴木

今後、PE/PA活動をさらに発展させ、日々の業務に活かしていく展望などがあればお聞かせください。

臨床開発の現場では、製品ごとにプロジェクトが進行しています。プロジェクトのなかで患者さんにお話を聞き、剤形や試験デザインなどに活かされたとしても、その経験がプロジェクトの中だけに留まっていてはもったいないと思います。機密保持などの兼ね合いで情報共有が難しい面はありますが、仕組みを整えることで、患者さんから得られた気づきをもっと臨床開発に活かすことができるかもしれません。

また、グローバルな視点を取り入れることも必要ですね。たとえば米国の状況を聞くと、国土が広いため飛行機で通院するようなこともあるようです。日本の患者さんとは日常生活や経験が異なってくるため、患者さんからの要望も違ったものになる可能性があります。地域によって治療選択肢が異なるケースも考えられますよね。協和キリンは今、リージョン(地域)をまたいだプロジェクトが当たり前になっているので、海外メンバーのこうした知見や経験が、日本のメンバーにもPEの重要性を伝える後押しになるのではないかと思います。

吉川

実は、患者さんからも感謝の声をいただくことがあります。「お薬について困っていることや、大変だと感じたことはありませんか」と伺うと、私たちの想像よりも大変な状況であっても「これが当たり前なので、大変だと思ったことはありませんでした」とおっしゃったり、「製薬会社がわざわざ私たちの話を聞いてくれるなんて」と驚かれたりしました。今、薬を使っている方にとって、この意見が反映された薬が出るのはかなり先になるのにもかかわらず、「私の意見が同じ病気の人の役に立つなら喜んで協力します」と言ってくださるのを聞くと、もっと頑張らなきゃ、患者さんの声を適切に反映して患者さんやご家族にとって真に価値のある薬を届けなければと思います。

村上

患者さんに聞かないとわからないことって本当にたくさんありますね。

高崎工場にいると、本社の活動がとても遠いものに思えてしまうことがあります。忙しく働いている工場のメンバーに「本社の研修・イベントに参加して」とただ勧めても響かない場合があるので、参加のハードルを下げるのも私たちの役割です。いざPE/PAに関するイベントに参加してもらうと、その後のアンケートなどで、参加者の熱量が大きいことに気づかされます。長文で思いを綴ってくれたり、自分の業務へのモチベーションを語ってくれたり。そういう反応を見ると私もグッと来ますし、将来的な可能性を感じます。

髙藤

そうですよね、マインド醸成は大切だと思います。私たちの日常業務の先に患者さんがいることを想い、日常業務に取り組むことは、とても大切だと感じています。特にMA部は、協和キリンのなかでも患者さんに近い部門です。患者さんとの架け橋となり、患者さんにより適切な医療や情報を届けていきたいと思っています。

私は、患者さんの笑顔を増やすことが、製薬会社としての成長や発展に大きく関係すると考えています。協和キリンの強みは、「私たちの業務が、患者さんへの貢献につながっている」という想いが私たちのなかに育まれていることだと思います。

冒頭でもお話しした「私たちの志」にある「たった一度の、いのちと歩く。」を具現化するため、PE/PA活動を通して、患者さんと一緒に製品を育てていこうと奮闘しているところです。全社的なPE/PA活動を通じ、病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値を提供できるよう、引き続き取り組んでいきたいと思います。

鈴木

  • 2025年5月時点

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