本ニュースリリースは、当社と米国Ardelyx社が発表した英文プレスリリースの内容を、当社が日本語に翻訳、再構成し、発表しています。本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先しますことをご留意下さい。
協和キリン 英語リリース
Ardelyxと協和キリンがASN Kidney Week 2020にてファーストインクラスのリン吸収阻害剤tenapanorの安全性および有効性を発表
- 5件のポスター発表により、tenapanorの高リン血症治療薬としての可能性を裏付けるデータが示された
- 特別講演では、リン吸収に関するサイエンスの進歩について紹介
Ardelyx社 (カリフォルニア州Fremont、社長兼CEO:Mike Raab、以下「Ardelyx」)と協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本 昌志、以下「協和キリン」)は、アメリカ腎臓学協会(American Society of Nephrology (ASN))のバーチャル年会であるKidney Week 2020(10月22日~25日に開催(米国東部時間))において、tenapanorの臨床試験結果に関する新たな5件の発表を行いました。
5件の発表は、Ardelyxが米国にて実施した第3相臨床試験に関する発表3件(BLOCK試験、AMPLIFY試験、PHREEDOM試験)と、協和キリンが日本の血液透析患者を対象に実施中の有効性と安全性を評価する第2相臨床試験の結果に関する発表2件です。tenapanorはArdelyxが創製したファーストインクラスの開発品で、現在、米国食品医薬品局(FDA)において透析期の成人慢性腎臓病(CKD)患者における血中リン濃度のコントロールを適応症とする医薬品承認のための審査が行われています。Ardelyxと協和キリンはtenapanorに関する心腎疾患を対象とした日本における独占的な開発権および販売権のライセンス契約を締結しており、協和キリンは日本において本年会で発表する2件の試験を含む計3件の第2相臨床試験を実施中です(開発コード:KHK7791)。
Ardelyx のポスター発表概要:
- ePoster #PO0384
表題 『透析期のCKD患者の血中リン濃度のコントロールを目的とした、tenapanor長期投与時の安全性と有効性について』
英文表題 “Long-term Safety and Efficacy of Tenapanor for the Control of Serum Phosphorus in Patients with CKD on Dialysis”
本発表では透析期のCKD患者の血中リン濃度のコントロールを目的とした、tenapanor長期投与時の安全性と有効性を評価する第3相長期投与試験(PHREEDOM試験) のデータがまとめられています。また、有効性の解析結果から、ベースライン時の血中リン濃度(平均値)が7.7 mg/dLから、ランダム化された治療期間終了時には、5.1 mg/dLに低下し、tenapanorは血中リン濃度を持続的に低下させるという新たな詳しい知見が紹介されました。 - ePoster #PO0374
表題 『 透析期のCKD患者の血中リン濃度のコントロールを目的とした、tenapanorの有効性ー新たな作用機序が単剤と併用両方の治療方針を可能にー』
英文表題 “Efficacy of Tenapanor for the Control of Serum Phosphorus in Patients with CKD on Dialysis: Novel Mechanism of Action Allows for Both Monotherapy and Dual Mechanism Approach”
本発表では、CKDを有し透析期の高リン血症患者に対するtenapanorの単剤投与により血中リン濃度の低下が示された第3相臨床試験(BLOCK試験)データが紹介されました。また、血中リン濃度のコントロールが難しい高リン血症患者に、tenapanor及びtenapanorとは作用機序の異なる薬剤であるリン吸着薬を投与することにより血中リン濃度の低下が示された第3相臨床試験(AMPLIFY試験)についても発表されました。高リン血症の治療について新たな治療方法のニーズがあること、そして、tenapanorは新たな作用機序を有し、透析期のCKD患者にとって新たな治療の選択肢となりえることが強調されました。 - ePoster #PO0376
表題 『透析期のCKD患者の血中リン濃度コントロールを適応症とする、ファーストインクラスの非リン吸着薬である開発医薬品、tenapanorの忍容性について』
英文表題 “Tolerability of Tenapanor, an Investigational, First-in-Class, Non-Binder Therapy for the Control of Serum Phosphorus in Patients with CKD on Dialysis”
本発表ではtenapanorの忍容性プロファイルについて、3つのPIVOTAL試験であるBLOCK試験、PHREEDM試験、AMPLIFY試験を横断的に詳細解析した結果が示されました。解析の結果、いずれの臨床試験においてもtenapanorは総じて良好な忍容性プロファイルを有しており、その全消化管忍容性は、tenapanorの新しい作用機序と一致していることが示されました。
協和キリンのポスター発表概要:
- ePoster #PO0382
表題 『血液透析実施中の日本人高リン血症患者におけるtenapanorの有効性および安全性の用量依存性。ランダム化第2相試験結果より』
英文表題 “Dose-Response Efficacy and Tolerability of Tenapanor on Hyperphosphatemia in Japanese Hemodialysis Patients: Results of a Randomized Phase 2 Study”
本発表では、日本人患者においてtenapanorは容量依存的に血中リン濃度レベルを有意に低下させ、いずれの用量においても総じて良好な安全性プロファイルであったと結論付けています。プラセボ群と比較して、1日2回30 mgのtenapanor投与群は6週間の治療期間中にベースラインから平均2.6 mg/dL(p<0.001)と統計学的有意に血中リン濃度が低下しました*1。 - ePoster #PO0375
表題 『血液透析期の日本人難治性高リン血症患者に対する、リン吸着薬へのtenapanor追加投与における有効性および安全性。 第2相二重盲検試験結果より』
英文表題 “Efficacy and Safety of Add-on Tenapanor to Phosphate Binders for Refractory Hyperphosphatemia in Japanese Patients on Hemodialysis: A Phase 2, Double-Blind Study”
本発表ではtenapanorとリン吸着薬併用の有効性および安全性が、日本で実施された単剤の臨床試験結果と相違ないことが紹介されました。プラセボとリン吸着薬を投与された群と比較して、tenapanorとリン吸着薬を投与された群は血中リン濃度レベル(平均値)が統計的に有意に2.1 mg/dL (p<0.001)低下し、tenapanorが投与された群のうち87%の患者が目標としていた血中リン濃度に到達したことから、難治性高リン血症患者に対する有効性が示されたと結論付けられました*1。
いずれのポスター発表の内容も一般公開されており、オンデマンド動画へアクセスすることができます。アクセス先はこちらです。
ASN年会ではポスター発表に加え、Ardelyxがスポンサーの特別講演(Exhibitor Spotlight presentation)が開催されました。このセッションではリン吸収に関するサイエンスの進歩と、tenapanorの臨床データに関する講演がありました。
特別講演(来賓講演者による講演)
“リン吸収に関するサイエンスの進捗: 傍細胞経路、その血中リン濃度管理における意義”
英文 “ADVANCING THE SCIENCE OF PHOSPHATE ABSORPTION: Paracellular Pathway and Implications for Phosphorus Management”
- 表題 『血中リン濃度管理の課題をひもとく可能性をもつ、リン吸収に関するあらたな知見』
英文表題 “New Understanding of Phosphate Absorption May Explain Challenges in Phosphorus Management”
演者; KAMYAR KALANTAR-ZADEH, MD, MPH, PhD, Professor of Medicine, Pediatrics, Public Health, Epidemiology, and Nursing Sciences, Chief, Division of Nephrology and Hypertension and Kidney Transplantation, University of California, Irvine, School of Medicine - 表題 『高リン血症治療薬としての開発品-tenapanor-』
英文表題 “Tenapanor: An Investigational Therapy for the Treatment of Hyperphosphatemia”
演者; GLENN M. CHERTOW, MD, MPH, Chief, Division of Nephrology Stanford University School of Medicine
tenapanorについて
tenapanorはArdelyxによって創製・開発されたファーストインクラスのリン吸収阻害剤で、現在、透析期の成人CKD患者における血清リン濃度のコントロールを適応症としたFDAの審査を受けています(審査終了目標日:2021年4月29日)。tenapanorは胃で局所的にNHE3を阻害するという特徴的なメカニズムを有しています。 この結果、上皮細胞接合体のコンフォメーション変化が生じ、それによりリン吸収の一次経路におけるリンの傍細胞への取り込みが顕著に減少します。tenapanor はArdelyxにより米国において3つの第3相試験が実施され、いずれの試験においても主要評価項目を達成しており、tenapanorが高リン血症の管理における基礎治療としての潜在的な役割を支持するものと考えられます。 なお、協和キリンは2017年11月に締結したArdelyxとのライセンス契約により、tenapanorの高リン血症を含む心腎疾患を対象疾患とする日本における独占的な開発権および販売権を取得しており、国内にて3つの第2相臨床試験を実施しています。
高リン血症について
高リン血症は、血液中のリン濃度が異常に上昇する重篤な疾患で、主要先進国では74万5000人以上の透析患者さんが罹患していると推定されています。腎臓はリン濃度を調節する臓器ですが、腎臓の機能が著しく低下すると、リンが十分に体外に排出されなくなります。その結果、高リン血症は、透析を受けているCKD患者さんの罹患率が高い疾患となっています。リン吸着薬(高リン血症に対し唯一承認されている医薬品)による治療にもかかわらず、透析を受けているCKD患者の77%は、6ヶ月間にわたって5.5 mg/dL以下の血中リン濃度を一貫して維持することができません(Spherix Global Insights: RealWorld Dynamix, Dialysis 2019)。5.5 mg/dLを超える血中リン濃度は、透析を必要とする患者の心血管系の罹患率および死亡率の独立した危険因子であることが示されており(Block 2004)、国際的に認められた治療ガイドラインでは、血中リン濃度の上昇を正常範囲(4.6 mg/dL未満)に下げることが推奨されています。
Ardelyxについて
Ardelyx は患者さんのためにサイエンスのブレークスルーを実現するバイオ医薬品企業です。独自の革新的なプラットフォームを開発し、新たな生物学的メカニズムや生物学的経路の発見を可能にし、これらのニーズを満たすファーストインクラスの経口低分子治療薬を開発してきました。Ardelyxをリードする開発品であるtenapanorは、現在、透析期の成人慢性腎臓病患者における血清リン濃度のコントロールを適応症としたFDAの審査を受けています。また、自社創薬プラットフォームにより、腎臓病や心臓病の患者さんによく見られる高カリウム血症の治療薬として、RDX013プログラムでもリード候補を発見しました。詳細はhttps://ardelyx.com/をご覧ください。
- *1有効性や安全性等各臨床試験データの詳細は、こちら
の各発表内容をご覧ください。