協和発酵バイオ株式会社 cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンの商業生産開始のお知らせ

協和発酵バイオ株式会社 (本社:東京都千代田区、代表取締役社長:石野修一、以下「協和発酵バイオ)は、アミノ酸誘導体である『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の画期的な新規工業的製法注1を確立しました。商業生産を2011年上半期中に開始する予定です。

cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』はアミノ酸の一種であるL-プロリンの4位が水酸化された化合物で、医薬品や香粧品の原料として用途が期待されています。『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の立体異性体注2であるtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリン注3は、1997年に当社が発酵法による効率的な製法を確立して以来広く利用されています。一方、『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』は煩雑な化学合成法でしか製造できず、高価であることから利用が限られていました。

当社は、早稲田大学・木野邦器教授が見出した、立体および位置特異的にL-プロリンを水酸化する新規酵素を用いて、『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の効率的な工業的製法を確立しました。これにより高純度の『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』を安価に、かつ安定に供給することが可能となります。また、当社は従来trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンを始めとして、cis-3-ヒドロキシ-L-プロリン、D-プロリン等様々なプロリン誘導体を高純度で安価に生産する技術を有しております。このたびの『cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』を加えることで、お客様の多様なニーズに応えてまいります。

発酵法によるアミノ酸の工業生産に世界で初めて成功した協和発酵バイオは、生命科学の進歩を発酵技術に生かして、今後も発酵法により有用な物質を製造・供給し、世界の人々の健康と豊かさに貢献していきたいと考えています。

  • 注1.cis-4-ヒドロキシ-L-プロリン』の画期的な新規工業的製法
    プロリンに水酸基を入れる反応は化学合成では非常に困難です。従来、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンを得るには、生物試料からの抽出、あるいは発酵法で製造されたtrans-4-ヒドロキシ-L-プロリンの水酸基を化学合成によって位置を入れ換えるという手法を用いていました。この方法は、反応性の高い官能基を高価な試薬で保護し、水酸基を入れ換えた後に脱保護するというものであり、煩雑で多段階の工程を経るのでコストがかさみ収率ロスもあります。当社の方法は、安価なL-プロリンに直接水酸基を導入する酵素を用いた1段反応であり、環境負荷が少なく高収率で安価な方法です。
  • 注2.立体異性体
    お互いに分子式は同じだが、3次元空間内でどのように移動・回転させても重なり合わせることのできない分子をいいます。注1の図にありますように、trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンとcis-4-ヒドロキシ-L-プロリンとでは、水酸基の結合する向きのみが異なっており、立体異性体の関係と言えます。
  • 注3.trans-4-ヒドロキシ-L-プロリン
    trans-4-ヒドロキシ-L-プロリンは皮膚のコラーゲン中に見られるアミノ酸で、コラーゲン構造を安定化させることが知られています。コラーゲン合成促進作用や角質層保湿作用があるとの知見もあることから、化粧品や健康食品等に広く用いられています。一方、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンはその立体異性体であり、生体成分ではありませんが構造がよく似ているので未知の薬理効果があるかもしれません。また、医薬品にはプロリン骨格を持つものがいくつかあるので、cis-4-ヒドロキシ-L-プロリンを安価大量供給できる体制を整えることによって、医薬品開発原料としての用途が広がるものと期待されます。
会社概要
協和発酵バイオ株式会社

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本社 東京都千代田区大手町1-6-1
設立 2008年10月1日
資本金 100億円
売上高 842.3億円(2010年12月期実績)
代表者 代表取締役社長 石野 修一
事業内容 医薬品原料、各種アミノ酸、健康食品、植物成長調整剤の製造・販売
URL http://www.kyowahakko-bio.co.jp/別ウィンドウで開きます

2008年10月1日、協和発酵バイオは、協和発酵キリン(本社:東京都千代田区 代表取締役社長:松田 譲)の100%子会社として新たに設立されました。協和発酵バイオは、協和発酵工業(現 協和発酵キリン)がグルタミン酸発酵の発明以来50年間培ってきた資産、人材、技術開発力を引き継ぎ、その基盤の上に、「発酵と合成の有機的結合」を大きな目標として掲げ、今後も多種多様な製品を革新的に開発し、医薬品や健康食品などを通じて世界の人々の健康と豊かさに貢献してまいります。

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