欧米における成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)モガムリズマブ(KW-0761)の第2相臨床試験開始

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:花井 陳雄、以下「協和発酵キリン」)は、治療経験のある成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)注1を対象としたモガムリズマブ(一般名、開発コード: KW-0761)の欧米第2相臨床試験を開始しましたので、お知らせいたします。

モガムリズマブは、ATLを対象疾病とした希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)注2の指定を、米国食品医薬品局および欧州委員会から受けています。

モガムリズマブは、ATL細胞など、様々な悪性T細胞に過剰発現しているCCR4注3に対するヒト化モノクローナル抗体です。本剤は、当社独自の強活性抗体作製技術「POTELLIGENT®(ポテリジェント)」注4を応用した抗体で、ADCC活性注5による抗腫瘍効果を示します。

モガムリズマブは、「ポテリジオ®点滴静注20mg」という製品名で、再発又は難治性のCCR4陽性のATLの治療薬として、2012年5月29日から国内で販売しております。本剤は、当社初の抗体医薬で、ポテリジェント技術を応用した抗体医薬としては、世界初の医薬品です。

協和発酵キリンは、革新的な医薬品の開発により、ATLをはじめとした希少疾患を含め、様々な疾患の治療およびQOLの向上に貢献してまいります。

ATLを対象としたモガムリズマブの欧米第2相臨床試験の概要

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対象疾患 治療経験のあるATL
デザイン 多施設ランダム化オープン比較試験(被験者をモガリズムマブ群と治験担当医師選択的治療群にランダムに割り付け、非盲検で比較を行う試験)を実施する。
用法用量 モガムリズマブ群:
モガムリズマブを1.0 mg/kgを、最初のサイクル(28日間)では1週間間隔で4回、その後のサイクルでは隔週で症状が悪化するまで投与する。
治験担当医師選択的治療群:
  1. プララトレキセート30 mg/m2を1週間間隔で3回投与後1週間休薬するサイクル(28日間)を、症状が悪化するまで繰り返す。
  2. ゲムシタビン1000 mg/m2とオキサリプラチン100 mg/m2を隔週で投与するサイクル(28日間)を、症状が悪化するまで繰り返す。
  3. デキサメタゾン40 mgを初日から4日目まで毎日、シスプラチン100 mg/m2とシタラビン2000 mg/m2は4週間ごとに投与するサイクル(28日間)を、症状が悪化するまで繰り返す。
目標症例数 70
予定試験期間 2012年7月~2015年6月
実施場所 米国、イギリス、フランス、ベルギーおよびその他の国
主要評価項目 全奏効率
  • 注1.成人T細胞白血病リンパ腫(ATL: Adult T-cell Leukemia-Lymphoma)
    ATLは、世界保健機関により成熟T細胞やNK細胞腫瘍に分類されています。レトロウイルスのHTLV-1が発症に関与している進行性の末梢性T細胞腫瘍です。ATLの発症は、南日本やカリブ海沿岸諸国などHTLV-1感染地域で認められます。北アメリカやヨーロッパのHTLV-1感染者は、感染地域からの移民、その子孫および性交に起因します。ATLの標準的な治療法は確立されておらず、特に再発および難治性ATLに対しては、有効な治療薬が待ち望まれています。
  • 注2..希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)
    希少疾病用医薬品とは、難病などの治療のため、必要性が高いにもかかわらず患者数が少ない疾患を対象とした医薬品です。米国では、米国食品医薬品局が、対象患者20万人以下の医薬品を希少疾病用医薬品とし、医薬品開発における税制上の優遇に加え、7年間の市場独占権が認められています。
  • 注3.CCR4(chemokine (C-C motif) receptor 4)
    CCR4は、白血球の遊走に関与するケモカインの受容体の一つです。CCR4は、正常組織中ではIL-4およびIL-5などのサイトカインを産生する(CD4陽性の)ヘルパー2型T細胞に選択的に発現することが知られています。また、ある種の血液がんにおいて高発現していることが知られています。
  • 注4.POTELLIGENT® (ポテリジェント)
    当社が独自に確立した高ADCC活性抗体作製技術です。本技術を用いることで、抗体が保有する糖鎖の中のフコースを低下させた抗体を作製できます。本技術で作製した抗体は、従来の抗体に比べて、標的細胞を極めて効率的に殺傷し、高い抗腫瘍効果を示すことが非臨床試験で確認されています。
  • 注5.ADCC(Antibody-Dependent Cellular Cytotoxicity(抗体依存性細胞傷害))
    ADCCは免疫応答の1種です。標的細胞にある抗原に抗体が結合すると、その抗体にエフェクター細胞(NK細胞など)が結合します。その後、エフェクター細胞によって抗原を持つ標的細胞が殺傷されます。
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