抗FGF23完全ヒト抗体KRN23の小児および成人のX染色体遺伝性低リン血症を対象とした第2相臨床試験の中間解析結果のお知らせ
協和発酵キリン株式会社(本社:東京、社長:花井陳雄、以下「協和発酵キリン」)は、ウルトラジェニクス・ファーマシューティカル(本社:米国、社長:エミル・D・カッキス、以下「ウルトラジェニクス」)とのKRN23の開発、販売に関する協業およびライセンス契約に基づき実施中の小児及び成人のX染色体遺伝性低リン血症(XLH)を対象とした第2相臨床試験において良好な成績が得られ、その内容がAmerican Society for Bone and Mineral Research(ASBMR)の2016年年会にて発表されたことをお知らせ致します。
小児XLH患者を対象とした第2相臨床試験では、KRN23投与により血清リン濃度、骨病変、成長速度及び身体機能の改善が認められました。また、その有効性は、4週に1回投与群よりも2週に1回投与群で高く、更にベースラインのくる病スコアが高い被験者において、骨病変及び成長速度の改善が強く確認されました。
成人XLH患者を対象とした第2相臨床試験においても、KRN23投与24週後の評価において、血清リン濃度の有意な上昇、歩行能力、運動能力、痛みやこわばりといった臨床所見の改善が確認されました。安全性に関しては、これまでに報告した臨床試験成績と一致した内容でした。
小児XLH第2相臨床試験
本試験は、多施設共同非盲検ランダム化用量設定試験であり、5~12歳までの52名の患者が登録され、その内49名は既存治療である経口リン製剤および活性型ビタミンD製剤の投与を受けていました。既存治療による治療期間は、本試験参加時点で平均7年間でした。本試験に登録された最初の36名については64週間の投与が完了し、これらの被験者のうち18名はベースラインのRSS(Rickets Severity Scoring)スコアが1.5以上でした。残りの16名の被験者は、ベースラインのRSSスコアが1.5以上の被験者であり、すべての被験者において40週までの投与が完了しています。
薬力学の評価:血清リン濃度、TmP/GFR、1,25(OH)2D濃度等
KRN23を64週間投与することにより、すべての被験者で血清リン濃度、腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)および血清1,25ジヒドロキシビタミンD濃度の上昇が認められました。また、いずれの投与群においても、64週の投与期間において平均血清リン濃度は正常値下限を上回って維持したことから、本疾患の根本原因である”Phosphate wasting”を改善することにより、改善した血清リン濃度を維持できることが示されました。
くる病画像所見の評価
Thacher Rickets Severity Scoring(RSS)を指標とした評価
くる病の重症度は、KRN23投与後40週及び64週時点においてRSSを用いて評価しました。全体としてKRN23投与によりくる病画像所見の改善が認められ、特に2週に1回投与群及びRSSスコアが1.5以上の被験者において高い効果が認められました。
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 26 | 52 | 人数 | 17 | 34 |
RSSスコア減少率 (p<0.0001) |
0.61 | 0.5 | RSSスコア減少率 (p<0.0001) |
0.71 | 0.61 |
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 18 | 36 | 人数 | 9 | 18 |
RSSスコア減少率 (p<0.0001) |
0.51 | 0.38 | RSSスコア減少率 (p<0.0001) |
0.57 | 0.51 |
Radiographic Global Impression of Change(RGI-C)スコア)
くる病重症度の変化をRGI-Cスコアにおいても評価した結果、くる病の改善効果が有意に示され、2週に1回投与群のベースラインRSSが1.5以上であった1名を除いたすべての被験者が”Substantial healing(くる病の十分な治癒)”と評価されました。
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 26 | 52 | 人数 | 17 | 34 |
スコア変化 (p<0.0001) |
1.72 | 1.56 | スコア変化 (p<0.0001) |
2.04 | 1.91 |
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 18 | 36 | 人数 | 9 | 18 |
スコア変化 (p<0.0001) |
1.35 | 1.35 | スコア変化 (p<0.0001) |
1.96 | 1.91 |
成長速度の評価
RSSスコアが1.5以上の被験者では、ベースライン時の成長障害は高度でしたが(ベースライン身長のパーセンタイル値:5.8%(52名/40週)、3.9%(36名/64週)、KRN23投与による成長速度の改善効果がより高く認められました。
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 26 | 52 | 人数 | 17 | 34 |
成長速度[cm/年] | +0.96 | +0.68 | 成長速度[cm/年] | +1.69 | +1.23 |
p値 | 0.0088 | 0.0321 | p値 | <0.0001 | 0.0046 |
z-scoreの変化 | 0.17 | 0.13 | z-scoreの変化 | 0.22 | 0.18 |
p値 | <0.0001 | <0.0001 | p値 | <0.0001 | 0.0003 |
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全被験者 | Q2W | 全体 | 高RSS群(RSS>1.5) | Q2W | 全体 |
---|---|---|---|---|---|
人数 | 18 | 36 | 人数 | 9 | 18 |
成長速度[cm/年] | +0.35 | +0.27 | 成長速度[cm/年] | +0.74 | +0.58 |
p値 | N.S. | N.S. | p値 | 0.0173 | 0.023 |
z-scoreの変化 | 0.21 | 0.16 | z-scoreの変化 | 0.21 | 0.19 |
p値 | <0.0001 | <0.0001 | p値 | 0.0056 | 0.0002 |
身体機能の評価:6分間歩行テスト(6MWT)および患者報告アウトカム(PROs)
2週に1回投与群のベースラインで歩行障害が認められた被験者(予測正常値の80%未満)では、40週時点で平均84メートル(14名、p<0.001)、64週時点で平均97メートル(7名、p<0.001)の歩行距離の延長が認められました。
Pediatric Orthopedic Society North America/Pediatric Outcome Data Collection Instrument(POSNA/PODCI)を用いた身体機能の評価では、ベースラインで機能障害を有する被験者(n=28、ベースラインスコア40ポイント未満又は1SD以下)において、当該評価指標に含まれる5つすべてのsub-scaleで評価するGlobal Scoreの40週時点の平均値は17.5ポイント改善しました。
安全性
発現頻度の高い有害事象として、注射部位反応が33%の被験者で認められましたが、いずれの事象も軽度と判定されました。また、他の因果関係が否定できない有害事象は、すべて軽度と判定されました。因果関係が否定できない重篤な有害事象は1名で認められましたが(発熱及び筋肉痛)、現在も試験への参加は継続されています。その他、死亡や試験を中止するような被験者は認められません。
血清カルシウム濃度、尿中カルシウム及びintact PTH濃度に関して、臨床的に意義のある変動を認めた被験者は存在しませんでした。また、血清リン濃度が正常上限を超えた被験者は存在せず、腎臓の超音波所見においても臨床的に意義のある有意な変化を認めた被験者は存在しません。
成人XLH第2相継続投与試験
本試験は、以前に行われた成人XLHを対象としたPh-1/2試験(INT-001、INT-002)に参加した患者さんのうち20名の被験者が登録されました。すべての被験者は、本試験登録時点でKRN23の投与を止めてから少なくとも12か月が経過していました。被験者は事前に休薬期間としてリン酸と活性化ビタミンD製剤の経口投与を21日間行わず、その後12週間の用量漸増期間を含む本剤の投与を開始しました。今回の発表は、試験期間24週時点でのデータを解析したものです。
薬力学の評価:血清リン濃度、TmP/GFR、1,25(OH)2D濃度等
KRN23投与後24週において、血清リン濃度は上昇し、正常値範囲の下限で推移しました。腎近位尿細管リン再吸収閾値(TmP/GFR)および1,25ジヒドロキシビタミンD濃度も同様にベースラインからの増加が認められました。
身体機能の評価:患者報告アウトカム(PROs)、6分間歩行テスト(6MWT)等
ベースラインにおいて、20名の被験者のうち19名は、Brief Pain Inventory Question 3(BPI-Q3)において「中程度から重度の痛み」に分類される4以上の強い痛みを持っている被験者でした。BPI-Q3スコアの平均値は、24週時点でベースラインからの低下が確認されました(p=0.0268;ベースライン6.6、24週5.5)。また、これらの被験者は、BPI pain interference 及びPain severityにおいて有意な改善が認められました(p=0.0009、p=0.0141)。
Western Ontario and McMaster Universities Arthritis Index(WOMAC)の評価では、Pain、Stiffness及びPhysical function関するスコアが24週の時点で有意に減少しました。また、StiffnessやPainの改善が認められた被験者では、Timed Up and Go及び6MWTを含む運動機能評価においても有意な改善が認められました。
安全性
発現頻度の高い有害事象は、関節痛(30%)や鼻咽頭炎(25%)、背部痛(20%)、投与部位反応(20%)、四肢の痛み(20%)でした。本剤投与との関連が否定できない有害事象は40%の被験者で認められましたが、いずれも重症度は軽度と判定されました。また、重篤有害事象は4件報告されましたが、いずれも本剤との因果関係は否定されました。死亡や試験中止が必要となる有害事象が発現した被験者は認められていません。
協和発酵キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。
- X染色体遺伝性低リン血症(XLH)について
- XLHは、遺伝的な原因により血中のFGF23が過剰となることで、体内のリンが尿中に過剰に排泄され低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患です。