バルドキソロンメチル(RTA 402)の国内第2相臨床試験結果に関する学会発表について

協和発酵キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:花井陳雄、以下「協和発酵キリン」)は、リアタ ファーマシューティカルズ(米国テキサス州アービング、CEO:ウォーレン・ハフ、以下「リアタ社」)から導入した低分子化合物バルドキソロンメチル※1(開発番号:RTA 402)の国内第2相臨床試験(TSUBAKI試験)の開鍵を行い、その結果を米国腎臓学会(ASN)腎臓週間2017のLate-Breaking Clinical Trial口頭演題として発表したことをお知らせします。

本試験は、2型糖尿病を合併する慢性腎臓病(CKD)を対象とした多施設共同プラセボ対照無作為化二重盲検下比較試験※2であり、RTA 402(5~15mg)を個体内漸増法により、1日1回、16週間反復経口投与したときの有効性及び安全性を評価しました。対象は、体液貯留のリスク因子として同定されたBNP※3<200pg/mL及び心不全による入院歴をもたないCKDステージG3及びG4患者としました。有効性の主要評価項目は、ステージG3患者での16週時点の糸球体濾過量(GFR)※4変化量とし、事前に規定した中間解析を行いました。なお、GFRの測定はgold standardであるイヌリンクリアランス法※5を用いました。

ステージG3の患者では、85名がRTA 402群あるいはプラセボ群に1:1で無作為に割り付けられ(3名は治療開始前に中止)、82名(RTA 402群:41名、プラセボ群:41名)が治療を開始しました。ベースラインのeGFR及びGFRの平均値は、各々46.7及び48.5mL/min/1.73m2でした。有効性の主要評価項目である 16週時点のGFRの変化量は40名(RTA 402群:17名、プラセボ群:23名)で評価され、RTA 402群でプラセボ群に対してGFRの有意な改善(6.64mL/min/1.73m2、p=0.008)が認められました。ステージG4の患者では、39名がRTA 402あるいはプラセボ群に2:1で無作為化され(1名は治療開始前に中止)、38名(RTA 402群:24名、プラセボ群:14名)が治療を開始しました。ステージG3及びG4の患者は共に、RTA 402に対する忍容性は良好であり、体液貯留の所見は認められませんでした。

このように、RTA 402はイヌリンクリアランス法により測定したGFR(腎機能)を明確に改善することが示されました。また、対象患者を適切に選ぶことにより、本剤は安全に使用できる可能性が示唆されました。より多くの患者を対象とした、本剤の有効性及び安全性を検証するための第3相臨床試験は2018年開始を目標としています。

協和発酵キリンは2009年12月24日に、リアタ社との間で、本剤の日本、中国、台湾、韓国及び東南アジア諸国における腎疾患などを対象とした独占的開発・販売権を取得するライセンス契約を締結しております。なお、リアタ社は結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症※6を対象とする国際共同第3相臨床試験およびアルポート症候群※7を対象とする国際共同第2/3相臨床試験を実施中です。

協和発酵キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。

  • ※1:バルドキソロンメチル
    バルドキソロンメチルは体内の250以上もの抗酸化因子及び解毒因子の産生を調節する転写因子であるNrf2を活性化します。Nrf2の活性化は、細胞内の抗酸化因子の増加や炎症のシグナル経路の抑制により、組織を炎症から保護します。慢性の炎症は、2型糖尿病や、心血管イベントおよび慢性腎不全などの合併症を促進することが知られています。
  • ※2:二重盲検比較試験
    医師および患者がいずれも処置内容を知り得ない状況で行う試験で、プラセボ効果などの先入観が評価に反映される可能性を防ぎ、新薬などの処置による有効性を客観的に評価します。
  • ※3:BNP
    BNPとは、正式には「脳性ナトリウム利尿ペプチド」という名称で、心臓を守るため心臓から分泌されるホルモンです。
  • ※4:糸球体濾過量(GFR)
    糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)の略。腎機能の指標となるもので、腎臓が1分間あたりに処理できる尿量を示します。腎機能の評価には、一般的に、血清クレアチニン値の測定結果を基にした推算GFR(eGFR)を用いますが、腎移植ドナーなど正確な腎機能評価が必要な場合にはGFR測定のgold standardであるイヌリンクリアランス法を実施します。
  • ※5:イヌリンクリアランス法
    標準法と簡易法があり、本試験では標準法を用いました。標準法は、1%イヌリンを含む生理食塩水を持続静注し、30分間隔で蓄尿と中間点採血を3回行い、3回のクリアランスの平均値を求める方法です。
  • ※6:肺動脈性肺高血圧症
    肺高血圧症は肺動脈での血圧が上昇する病態で、すぐに疲れる、息苦しく感じるなどの症状が現れます。炎症、自己免疫および全身性血管障害などが原因となる肺高血圧症のひとつに、「結合組織病に伴う肺動脈性肺高血圧症(CTD-PAH)」があります。CTD-PAH患者の肺血管拡張薬への反応は不良であり、身体機能の有意な改善はもたらしていません。
  • ※7:アルポート症候群
    アルポート症候群は、腎臓の糸球体を構成するのに重要なタンパク質である4型コラーゲンの遺伝子に異常がある場合に発症し、末期腎不全へと進行する遺伝性腎炎です。腎炎進行の機序は不明で、根治的な治療法はありません。4型コラーゲンは内耳や眼にも存在するため、難聴や眼症状を合併します。
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