ブロスマブの小児X染色体連鎖性低リン血症を対象とした第3相臨床試験の64週結果について

本ニュースリリースは、当社と当社子会社のKyowa Kirin International PLC、ならびに米国ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルが発表した英文プレスリリースの内容を、当社が日本語に翻訳、再構成し、発表しています。本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先しますことをご留意下さい。
協和発酵キリン 英語リリース別ウィンドウで開きます

協和発酵キリン株式会社(本社:東京、代表取締役社長:宮本 昌志、以下「協和発酵キリン」)および当社の欧州子会社である Kyowa Kirin International PLC(本社:英国、社長:トム・ストラットフォード)とウルトラジェニクス・ファーマシューティカル(本社:米国、社長:エミル・D・カキス)は、本日、小児 X 染色体連鎖性低リン血症(XLH)注1を対象としたブロスマブ(欧米製品名:Crysvita®注2の第 3 相臨床試験について、投与64週時点において、有効性および安全性、いずれにおいても良好な結果が得られたことをお知らせします。

本試験は小児XLH患者を対象として、64週間の投与によるブロスマブ群と既存治療群(リンおよび活性型ビタミンD経口投与)との間での有効性および安全性を比較する第3相臨床試験です。64週間投与の結果、ブロスマブ群は有効性に関する主な項目の全てにおいて、既存治療群に対して優れた効果を示しました。具体的にはくる病重症度や下肢の変形、成長速度の大きな改善、および歩行距離増加で示された身体機能の改善などが認められました。安全性については、本試験の40週時点での結果、およびその他の小児XLHを対象とした試験で得られた結果と同様でした。

本試験における40週時点の試験結果については、既存治療に比べて統計学的に有意なくる病所見の改善(p<0.0001)が認められるなど、主要評価項目を達成したことを2018年5月に発表しています。

第3相小児XLH臨床試験について

本試験は、第3相無作為化オープンラベル試験で、米国、欧州、カナダ、オーストラリア、日本および韓国において1歳から12歳までの患者さん61名が登録された、ブロスマブ群(29名)と既存治療群(32名)との間で有効性および安全性を比較する試験です。本試験の主要評価項目は独立した3名の小児放射線専門医によって盲検下で評価されたRadiographic Global Impression of Change(RGI-C)スコアに基づく、試験開始後40週時点でのくる病所見の変化としました。副次評価項目ではRGI-CスコアやThacher Rickets Severity Scoring(RSS)を指標とした追加のくる病所見の評価および、薬力学的評価、成長速度と身長の変化、歩行能力、痛みや疲労および身体機能に関する患者報告アウトカム、安全性を評価しました。また、RGI-Cの下肢変形スコアや身長のz-scoreを含む、すべての項目を64週時点において再度評価しました。全ての被験者は試験参加前に、平均して約4年間にわたり既存治療を受けていました。ブロスマブ群の被験者は初期用量0.8 mg/kgで2週間に1回の皮下投与を受け、そのうち8名は試験期間中に1.2 mg/kgまで用量を漸増しました。既存治療群の被験者は専門的なガイダンス資料に基づき、各担当医により最適化された各国における標準的な治療を受けました。

64週時点の有効性および安全性解析から得られた結果は以下の通りです。

64週時点でのブロスマブ群と既存治療群を比較した骨に対する結果

  • 3名の盲検下にある小児放射線専門医によって評価されたRGI-Cスコアはブロスマブ群が既存治療群に比べて有意な改善を示しました。(最小二乗平均の群間差 +1.02、p < 0.0001)。
  • くる病の実質的な改善であるRGI-Cスコアの上昇(RGI-Cが+2以上)が認められた被験者の割合は、ブロスマブ群で86.2%、既存治療群で18.8%となりました(p = 0.0002)。
  • くる病重症度を示すRSSスコアもブロスマブ群の方が既存治療群よりも顕著な改善がみられました(最小二乗平均の群間差 -1.21、p < 0.0001)。
  • くる病の生化学的指標として測定した平均血清アルカリフォスファターゼ活性レベルは、ブロスマブにより正常範囲内まで低下し、64週の時点で既存治療より顕著な低下が認められました(p < 0.0001 )。
  • 下肢変形(下肢の湾曲および変形を評価したRGI-Cスコア)はブロスマブ群が既存治療群よりも改善していました(最小二乗平均の群間差 +0.97、p < 0.0001)
  • ブロスマブ群の成長速度は、既存治療群と比較して立位および臥位の身長(z-score)が大幅に増加し、統計学的に有意な改善が認められました。(最小二乗平均の群間差 +0.14, p=0.0490)。
  • 6分間歩行テスト(6MWT)での歩行能力はブロスマブ群が既存治療群よりも改善しました(最小二乗平均の群間差 +45.6m、p = 0.0399)。

臨床検査値

  • 平均血清リン濃度は、ベースラインでは両群ともに正常域の下限を下回っており、既存治療群でわずかな上昇が認められた一方で、ブロスマブ群では正常域の下限値に到達していました。ブロスマブ群では、血清リン濃度や腎におけるリン再吸収レベルは試験開始後から64週まで、正常域の範囲内でした。一方、既存治療群においては血清リン濃度や腎におけるリン再吸収レベルは64週の全試験期間において正常域下限値よりも低い値のまま推移しました。この両群間の比較で観察された差異は統計的な有意差が見られました。(p<0.0001)
  • 両群いずれにおいても、血清中の活性化ビタミンD濃度が上昇しており、正常域の範囲内の濃度が64週間通して維持していました。

安全性および忍容性について

64週間時点で本試験において認められたブロスマブの安全性プロファイルは40週時点と概ね一致しており、その他の小児XLHを対象とした臨床試験で得られたものと同様でした。64週間時点で投薬の中止は認められず試験期間を通じて死亡例の報告はありませんでした。重篤な有害事象はブロスマブ群にて3件、既存治療群にて3件認められましたが、いずれも治療との関連性は認められませんでした。ブロスマブ投与群では51.7%の患者さんに注射部位反応が見られましたが、1件を除いて軽度であり、その他も重大なものではありませんでした。両群ともに、平均血清カルシウム濃度および血清副甲状腺ホルモン濃度のいずれも臨床的意義のある変動は認められず、高リン血症をきたすような事象もありませんでした。また、治療の前後における腎臓の超音波所見についても、臨床的に有意な変化を認めた被験者は両群ともに認められませんでした。

  • 注1 X染色体連鎖性低リン血症(XLH)とは
    XLHは、遺伝的な原因により血中の線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が過剰となることで、体内のリンが尿中に過剰に排泄され低リン血症となり、その結果として骨の成長・維持に障害をきたす希少な疾患です。XLHは幼児から発症し、成人までその影響がみられます。小児のXLH患者さんでは、骨疾患を引き起こし、下肢の変形や低身長が多くみられます。成人のXLH患者さんでは骨折のリスクが高くなります。
  • 注2 Crysvita(ブロスマブ)とは
    ブロスマブは協和発酵キリンにより創製されたFGF23に対する完全ヒトモノクローナル抗体です。FGF23は、腎臓におけるリン排泄と活性型ビタミンD産生を制御することで、血清リンおよび活性型ビタミンD濃度を低下させる液性因子です。ブロスマブはFGF23の過剰産生に由来した疾患であるXLHおよび腫瘍性骨軟化症(TIO)を対象として開発が進められています。XLHおよびTIO患者さんにおけるリン排泄亢進はFGF23の過剰な作用により引き起こされています。ブロスマブは、XLHおよびTIOの患者さんにおけるFGF23の過剰な作用を阻害することで、腎臓におけるリンの再吸収を増加させ、腸管におけるリンとカルシウムの吸収を促進するビタミンDの産生を増加させます。
     ブロスマブは1 歳以上の小児および成人における XLHの治療薬として、アメリカ食品医薬品局(FDA)およびカナダ保健省(Health Canada)から医薬品販売承認を取得しています、また、同剤はX線画像診断で骨疾患所見を有し、成長期にある1歳以上の小児および青少年におけるXLHの治療薬として、欧州委員会(European Commission)から条件付き医薬品販売承認を取得しています。今回の第3相臨床試験結果のデータは、欧州で検証試験として提出します。ウルトラジェニクス・ファーマシューティカルはXLHを適応として、ブラジルおよびコロンビアに承認申請を行いました。
トップへ戻る