血液透析施行中の高リン血症を対象とした tenapanor(KHK7791)国内第2相臨床試験結果の欧州腎臓学会議/欧州透析移植学会議での発表について

協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本 昌志、以下「協和キリン」)は、血液透析施行中の高リン血症を対象とした tenapanor(KHK7791)注1の国内第2相臨床試験で見出されたtenapanorへの切替えによるリン吸着薬の服薬負荷注2の減少効果について6月6~9日開催の第57回欧州腎臓学会議/欧州透析移植学会議(ERA-EDTA 2020)にてバーチャルでポスター発表したことをお知らせします。

第57回欧州腎臓学会議/欧州透析移植学会議 ポスター発表 番号:P1404
演題:A phase 2 open-label, single-arm, first Japanese study of tenapanor, a novel phosphate absorption inhibitor, focusing on pill burden decrease in patients with hyperphosphatemia undergoing hemodialysis.
(日本語訳:新規リン吸収阻害剤「tenapanor」の血液透析施行中日本人高リン血症患者における服薬負荷軽減に着目した第2相非盲検単群臨床試験)

試験の概要

本試験は多施設共同、非盲検、単群の第2相試験であり、血清リン濃度が3.5 mg/dL以上7.0 mg/dL以下、かつ、1日3回、1回2錠以上リン吸着薬を服用している血液透析施行中の高リン血症の患者さんを対象に、tenapanorを1日2回、26週間投与しました。tenapanor投与開始後、血清リン濃度をベースライン時の±0.5 mg/dL以内に維持するようにリン吸着薬を適宜調整しました。主要評価項目は、最終評価時におけるリン吸着薬とtenapanorの合計服薬錠数が、ベースライン時のリン吸着薬の服薬錠数から30%以上減少した被験者の割合としました。

主な試験結果

登録された67名の被験者のうち、主要評価項目である30%以上の服薬錠数減少を達成した被験者は48名(71.6%、[95%信頼区間:59.3%~82.0%]、p<0.001)でした。また、そのうち18名(26.9%)はtenapanorのみで血清リン濃度のコントロールが可能でした(最終評価時点のリン吸着薬の服薬錠数が0)。ベースライン時の血清リン濃度(平均値)は、5.2 mg/dLであり、最終評価時では4.7 mg/dLでした。最も多く発現した有害事象は下痢(76.1%)であり、ほとんどの重症度は軽度または中等度でした。67名中4名は下痢のため試験を中止しました。また、重篤な有害事象は5名の被験者で発現しました。

結論

tenapanorはリン吸着薬と比較して少ない錠数で血清リン濃度のコントロールを行うことができ、有害事象のプロファイルは米国先行研究注3と同様でした。この結果により、新規作用機序のリン吸収阻害剤であるtenapanorが、高リン血症治療の新たなアプローチとして血清リン濃度を効果的にコントロールしつつ、高リン血症治療薬の服薬負荷を軽減する可能性が示唆されました。

本試験にて、tenapanorにより血液透析患者さんの高リン血症治療に伴う服薬負荷を軽減しうる結果が得られました。tenapanorが高リン血症に対する治療剤の新たな、かつ、独自の選択肢となることを期待しています。協和キリンは本試験のほかtenapanorの単剤用量反応試験およびリン吸着薬との併用試験を国内にて実施しました。なお、米国においては Ardelyx 社(カリフォルニア州 フリーモント、社長兼 CEO:Mike Raab、以下「Ardelyx」)によりtenapanorの単独投与及びリン吸着剤との併用試験が実施されました。注3

協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。

  • 注1: tenapanor (KHK7791)について
    tenapanorはArdelyxによって創製・開発されたNHE3阻害剤で、高リン血症に対して特徴的な作用機序であるNHE3阻害を通じて、食事によるナトリウムの吸収を抑え、結果として細胞内のプロトン濃度を上昇させます。このプロトン濃度の上昇は、消化管のリン吸収を制御する細胞間接着を強固にし、リンの取り込みを抑制します。また、本剤は経口投与で吸収されにくい特徴を有しています。Ardelyxがこれまでに実施した非臨床もしくは臨床試験においてナトリウム以外の他のイオンに対して同様の現象は認められておらず、本剤の作用機序はリンに特異的であると考えられています。なお、協和キリンは2017年11月に締結したArdelyxとのライセンス契約により、tenapanorの高リン血症を含む心腎疾患を対象疾患とする日本における独占的な開発権および販売権を取得しています。
  • 注2: リン吸着薬の投薬負荷について
    透析治療中の患者さんは日々の投薬負荷が高く、中でもリン吸着薬の服用錠数が多いことが報告されています。
    参考文献1 Fissell RB, Karaboyas A, Bieber BA, Sen A, Li Y, Lopes AA, et al. Phosphate binder pill burden, patient-reported non-adherence, and mineral bone disorder markers: Findings from the DOPPS. Hemodial Int. 2016;20:38-49.
    参考文献2 Wang S, Alfieri T, Ramakrishnan K, Braundhofer P, Newsome BA. Serum phosphorus levels and pill burden are inversely associated with adherence in patients on hemodialysis. Nephrol Dial Transplant. 2014;29:2092-9.
  • 注3: 米国先行研究について
    米国においてAldelyxにより第3相臨床試験として単剤用量試験、単剤長期投与試験、リン吸着薬との併用試験が実施済みであり、それぞれ論文やArdelyxホームページ上で結果の概要が公表されています。
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