アルポート症候群を対象としたバルドキソロンメチル(RTA 402)の国内製造販売承認申請のお知らせ

協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本昌志、以下「協和キリン」)は昨日7月27日付で、リアタ ファーマシューティカルズ(米国テキサス州プラノ、CEO:ウォーレン・ハフ、以下「リアタ社」)から導入した低分子化合物バルドキソロンメチル(開発番号:RTA 402)について、アルポート症候群を対象とした製造販売承認申請を厚生労働省に行いましたのでお知らせいたします。

バルドキソロンメチルは、2021年5月24日に「アルポート症候群における腎機能の改善」を予定される効能又は効果として厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けており、優先審査品目に該当します。

協和キリンの執行役員 グローバル製品戦略部長 須藤友浩は次のように述べています。「今回、アルポート症候群を対象としたバルドキソロンメチルの製造販売承認申請を行うことができ、うれしく思います。アルポート症候群は進行性の重い疾患であり、新たな治療選択肢を期待するアンメット・メディカルニーズが存在しています。当社は、本剤がアルポート症候群の患者さんとそのご家族に、有意義な治療法を提供できるものと強く信じています。」

今回の申請は、リアタ社がアルポート症候群を対象として実施したCARDINAL試験の中の第3相試験の結果に基づくものです。本試験における主要評価項目はeGFRのベースラインからの変化量(投与開始後48週及び100週時点)であり、いずれの時点でも、バルドキソロンメチル群はプラセボ群と比較して有意なeGFRの改善が認められました。

協和キリンは2009年12月24日に、リアタ社との間で、本剤の日本、中国、台湾、韓国および東南アジア諸国における腎疾患などを対象とした独占的開発・販売権を取得するライセンス契約を締結しております。

協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。

バルドキソロンメチルとは
本剤は、体内のストレス防御反応において中心的な役割を果たす転写因子Nrf2を活性化する低分子化合物であり、広範な抗酸化及び抗炎症作用によって腎機能を改善させると考えられます。国内で実施された2型糖尿病を合併する慢性腎臓病を対象とした国内第2相臨床試験(TSUBAKI試験)において、本剤がイヌリンクリアランス法により測定したGFRを有意に改善することが示されています。現在、アルポート症候群の他に、糖尿病性腎臓病を対象とした国内第3相試験(AYAME試験)、および常染色体優性多発性嚢胞腎を対象とした国際共同第3相試験(FALCON試験)が進行中です。
アルポート症候群とは
血尿、蛋白尿および腎機能低下を伴う進行性の遺伝性疾患であり、厚生労働省が定める指定難病の一つです2。糸球体基底膜の構成成分であるⅣ型コラーゲンα鎖の遺伝子変異が原因であり、徐々に腎機能が低下して、最終的に末期腎不全に至ることの多い疾患です。また、Ⅳ型コラーゲンは内耳や眼にも存在するため、難聴や眼症状を合併します。現在までに疾患特異的な治療法は確立されておらず、腎機能低下を遅らせることを目的とした腎保護療法が主な治療法となっています3
CARDINAL試験とは
12~70歳で、eGFRが30~90 mL/min/1.73m2のアルポート症候群患者を対象とした第2/3相試験です。CARDINAL試験の第3相試験は、国際共同ランダム化プラセボ対照二重盲検比較試験として実施され、eGFRのベースラインからの変化量を投与開始後48、52、100、104週時点でそれぞれ評価しました。このうち、投与開始後52および104週時点は、4週間の休薬期間を経た時点での評価です。これらの評価項目において、バルドキソロンメチル群とプラセボ群との平均値の差は、いずれの時点でもプラセボ群と比較して有意であり、臨床的に意義のあるeGFRの改善が認められました。
eGFRとは
Estimated glomerular filtration rate(推算糸球体ろ過量)の略。腎移植ドナーなど正確な腎機能評価が必要な場合にはGFR測定のgold standardであるイヌリンクリアランス法を実施しますが、日常臨床では血清クレアチニン値の測定結果を基に算出されるeGFRが用いられます。
  • リアタ社が2019年に開始した試験で、協和キリンが本年1月より日本における治験国内管理人として参加しています。
  • 公益財団法人 難病情報センター 「アルポート症候群(指定難病218)」
    https://www.nanbyou.or.jp/entry/4349別ウィンドウで開きます
  • 日本小児腎臓病学会「アルポート症候群診療ガイドライン2017」
トップへ戻る