クリースビータ®(ブロスマブ)に関する論文発表のお知らせ
―長期投与による成人X染色体連鎖性低リン血症患者の疾患負荷軽減―
協和キリン株式会社(本社:東京、代表取締役社長:宮本昌志、以下「協和キリン」)は本日、希少な遺伝性代謝性骨疾患であるX染色体連鎖性低リン血症(XLH)の成人患者における、クリースビータ®(一般名:ブロスマブ)の持続的な有効性を示す新たなデータについて論文発表したことをお知らせいたします。本データでは、成人XLH患者が痛み、体のこわばり、疲労、身体機能および歩行機能の不調を経験すること、またクリースビータによる治療の結果、96週後にはベースラインからの有意な改善をもたらすことが示唆されました。※1
本データは、クリースビータの成人XLH患者に対する有効性および安全性の評価を目的とした、無作為化二重盲検プラセボ対照期間と、それに続く非盲検の延長期間からなる第3相試験で得られた結果です。※2 本試験では、主要評価項目である24週間後の血清リン濃度が、プラセボと比較して統計的に有意に上昇したことが認められました。※3 24週間後、すべての患者がクリースビータによる治療に切り替えられ、96週までの間、代謝および生化学マーカー、患者報告アウトカム(PROs)および運動機能に関するデータが収集・分析されました。今回の論文は、PROs分析と運動機能スコアの結果に焦点をあてて報告しています。
96週時点において、Western Ontario and the McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)、Brief Pain Inventory-Short Form(BPI-SF)、Brief Fatigue Inventory(BFI)などのPROsに、ベースラインと比較して統計的に有意な改善が認められました。また6分間歩行試験(6MWT)で測定される歩行機能についても、ベースラインと比較して96週目に統計的に有意な改善が認められました。他方、体のこわばりや痛み、骨折の治癒といったPROsは、48週時点においても改善が見られることを既に報告しています。※3
本論文の筆頭著者である、フランス パリのコシャン病院のDr. Karine Briotは以下の通り述べています。「本研究では成人のXLH患者さんが痛み、こわばり、疲労、歩行困難など、多くの身体的課題に直面することが再認識されました。これまでにもブロスマブは、プラセボと比較して成人XLH患者さんのリンのホメオスタシスを改善することが示されていましたが、今回の新たな結果は、成人XLH患者さんが長期的な合併症や身体的障害を有していても、ブロスマブで治療することによって、その身体機能や生活の質をも長期的に改善できることを示唆しています。」
協和キリンの執行役員 グローバル製品戦略部長 須藤友浩は次のように述べています。「協和キリンは、XLH患者さんとそのご家族の生活の改善に努めています。その中でも特に注力しているのが、XLHの最善な管理方法や治療方法に関する理解を深めるための、新たなデータを生み出すことです。今回得られた結果は、XLH患者さんが日々直面している様々な身体的課題を明らかにし、またどのようにすれば患者さんのニーズをより満たすことができるのか、そして協和キリンがどのようにして『人々を笑顔にする』という目的の実現に取り組んでいるのかを示すものです。」
本データは9月22日にBMJ誌のRMD Open, Rheumatic and Musculoskeletal Diseasesに掲載されました。※1
協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。
- X染色体連鎖性低リン血症(XLH)とは
- X染色体連鎖性低リン血症(XLH)は、遺伝的な原因によって血中の線維芽細胞増殖因子23(FGF23)が過剰となり、体内のリンが尿中に過剰に排泄され低リン血症となることで、骨、筋肉、関節に異常をきたす希少な遺伝性疾患です。※4,5 XLHは生命を脅かす疾患ではないものの、その負担は生涯にわたって継続し、進行性の疾患でもあるためQOL(生活の質)を低下させる可能性があります。※6
リンは体のエネルギーレベル、筋肉の機能、健康な骨や歯の形成に必要となる重要なミネラルです。※7,8 XLHでは上述のようにリンが尿中に過剰に排出され、また腸からの吸収も悪くなるため、血液中のリン濃度が慢性的に低くなります。※4,9 XLHの遺伝子異常を直接的に治療する根本的治療法は確立されていませんが、過剰なFGF23の作用を抑制することで血液中のリン濃度を正常なレベルに回復・維持できる治療法が確立されれば、この疾患の症状の進展の阻止が期待されます。※2
XLHは遺伝性くる病・骨軟化症の中でも最も一般的な病気です。※10 家族歴のない人でも発症することがありますが、通常は遺伝子異常を持つ親から引き継がれます。※11
- クリースビータ(ブロスマブ)とは
- クリースビータ(ブロスマブ)は、協和キリンにより創製・開発された、FGF23に対する遺伝子組換え完全ヒト型モノクローナルIgG1抗体です。FGF23は、腎臓からのリン排泄と活性型ビタミンDの産生を調節して血清中のリン濃度を低下させるホルモンです。XLHでは、過剰に存在するFGF23により血清リン濃度が減少し、低リン血症が引き起こされます。クリースビータは、FGF23に結合して患者の過剰なFGF23を阻害することによって腎臓からのリンの再吸収を促進し、活性型ビタミンDの産生を増加させ、リンとカルシウムの腸管吸収を促進します。
クリースビータは2018年から臨床使用が可能になりました。最初に承認されたのは欧州委員会(European Commission)で、X線画像により骨疾患が認められた1歳以上の小児および骨格が成長段階にある青少年におけるXLHの治療を目的として、条件付き販売承認が与えられました。その後2020年にはこの承認が拡大され、骨格の成長が終了した青年および成人も対象となりました。※2
北米においては、2018年4月に1歳以上のXLH患者に対して米国食品医薬品局(FDA)から、同年12月に1歳以上のXLH患者に対してカナダ保健省から、それぞれ承認されています。※12,13
日本においては、2019年9月にFGF23関連低リン血性くる病・骨軟化症の治療薬として厚生労働省から承認を受けました。また2020年12月、FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療のための在宅自己注射が保険適用になりました。
更に2020年1月、スイスの医薬品承認機関であるスイスメディックは、本剤をXLHの成人、青年および小児(1歳以上)の治療薬として承認しました。※14
加えて2020年6月、FDAは2歳以上の腫瘍性骨軟化症(TIO)の患者に対して本剤を承認しました。TIOは、FGF23を過剰産生し、骨の軟化や脆弱化を生じる腫瘍の発生を特徴とする希少疾患です。※15
協和キリンとUltragenyx Pharmaceutical Inc. (NASDAQ: RARE: Ultragenyx)は、両社間で締結された提携およびライセンス契約に基づき、本剤のグローバルな開発と商業化を共同で行っています。
- 参考文献
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- ※1Briot K, Portale AA, Brandi ML, et al. RMD Open 2021;7:e001714. doi: 10.1136/rmdopen-2021-001714.
- ※2Insogna KL, Rauch F, Kamenický P, et al. Burosumab improved histomorphometric measures of osteomalacia in adults with X-linked hypophosphatemia: a Phase 3, single-arm, international trial. J Bone Miner Res. 2019;34:2183-2191.
- ※3Portale AA, Carpenter TO, Brandi ML, et al. Calcif Tissue Int 2019;105:271-84.
- ※4Linglart A, Biosse-Duplan M, Briot K, et al. Therapeutic management of hypophosphatemic rickets from infancy to adulthood. Endocr Connect. 2014;3:R13-30.
- ※5Haffner D, Emma F, Eastwood DM, et al. Consensus Statement. Evidence-based guideline. Clinical practice recommendations for the diagnosis and management of X-linked hypophosphatemia. Nat Rev Nephrol. 2019;15;435-455.
- ※6Skrinar A, Dvorak-Ewell M, Evins A, et al. The lifelong impact of X-linked hypophosphatemia: Results from a burden of disease survey. J Endocr Soc. 2019;3:1321-1334.
- ※7Pesta D, Tsirigotis DN, Befroy DE, et al. Hypophosphatemia promotes lower rates of muscle ATP synthesis. The FAESB Journal. 2016;39:3378-3387.
- ※8Unnanuntana A, Rebolledo BJ, Khair MM, et al. Diseases affecting bone quality: beyond osteoporosis. Clin Orthop Relat Res. 2011;469:2194-2206.
- ※9Beck-Nielsen SS, Mughal Z, Haffner D, et al. FGF23 and its role in X-linked hypophosphatemia-related morbidity. Orphanet J Rare Dis. 2019;14:58.
- ※10Carpenter TO, Imel EA, Holm IA, et al. A clinician's guide to X-linked hypophosphatemia. J Bone Miner Res. 2011;26:1381-8.
- ※11National Center for Advancing Translational Sciences. X-linked hypophosphatemia. Available at: https://rarediseases.info.nih.gov/diseases/12943/x-linked-hypophosphatemia
. Last updated: February 2018. Last accessed: July 2021.
- ※12Health Canada. Regulatory Decision Summary - CRYSVITA. Available at: https://hpr-rps.hres.ca/reg-content/regulatory-decision-summary-detail.php?linkID=RDS00463
. Last updated: April 2020. Last accessed: April 2021.
- ※13Available at : https://www.kyowakirin.com/media_center/news_releases/2018/e20180418_01.html
. Last accessed: July 2021
- ※14Swissmedic. Crysvita®, injektionslösung (burosumabum). Available at: https://www.swissmedic.ch/swissmedic/en/home/humanarzneimittel/authorisations/new-medicines/vrysvita-injektionsloesung_burosumabum.html
. Last updated: January 2020. Last accessed: July 2021.
- ※15FDA. Available at: FDA Approves First Therapy for Rare Disease that Causes Low Phosphate Blood Levels, Bone Softening | FDA
. Last accessed: July 2021