Zandelisibの濾胞性リンパ腫症例を対象とした第2相国際共同試験結果のお知らせ

本ニュースリリースは、当社とMEI Pharma, Inc.が発表した英文プレスリリースの内容を、当社が日本語に翻訳、再構成し、発表しています。本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先しますことにご留意下さい。協和キリン 英語リリース別ウィンドウで開きます

  • 客観的奏効率(ORR)70.3%、完全奏効(CR)35.2%を示す
  • 薬剤に関連する有害事象で治療を中止した症例は9.9%
  • MEI社は11月30日現地時間午前8時(日本時間午後10時)にウェブキャストを開催

協和キリン株式会社(本社:東京、代表取締役社長:宮本昌志、以下「協和キリン」)とMEI Pharma, Inc.(本社:米国サンディエゴ、社長兼 CEO:Daniel Gold、以下「MEI」)は、本日、現在B細胞悪性腫瘍の治療薬として開発中のホスファチジルイノシトール3-キナーゼデルタ(PI3Kδ)阻害剤であるzandelisib(開発番号:ME-401)を単剤投与で評価する濾胞性リンパ腫症例を対象とした第2相国際共同試験の結果をお知らせします。

独立効果判定委員会(IRC, Independent Review Committee)の評価の結果、主要評価項目の解析対象集団(n=91)(以降、本解析対象集団)で客観的奏効率(ORR, objective response rate)が70.3%であり、35.2%の症例が完全寛解(CR, complete response)を達成しました。現状追跡期間が十分ではないため、正確な奏効期間(DOR, duration of response)を算出するには至っておりません。また既に報告した第1b相試験のデータと同様に、zandelisibの忍容性は概ね良好でした。本試験の全体集団(n=121)の追跡期間の中央値は9.4か月(範囲:0.8-24か月)で、薬物に関連する有害事象による中止率は9.9%でした。本試験に登録された症例は、今後も安全性と奏効期間について追跡調査が行われます。

再発または難治性の濾胞性リンパ腫に関するTIDAL試験のデータの概要

現在実施中のTIDAL試験(NCT03768505)は、zandelisibを単剤で評価するグローバル非盲検第2相試験で、2つの疾患コホートで構成されています。1つ目のコホートは再発または難治性の濾胞性リンパ腫、2つ目のコホートは再発または難治性の辺縁帯リンパ腫が対象疾患であり、いずれも化学療法や抗CD20抗体を含む、少なくとも2回の全身療法歴のある症例が対象です。濾胞性リンパ腫コホートの登録は完了しており、辺縁帯リンパ腫コホートの登録は進行中です。各コホートの試験データは、試験結果と米国食品医薬品局(FDA)との議論の結果に従い、迅速承認(accelerated approval)申請のためにFDAに提出される予定です。
濾胞性リンパ腫コホートでは合計121名の症例が登録され、そのうち91名が本解析対象集団として登録されました。濾胞性リンパ腫症例の年齢中央値は64歳で、同コホートに登録された症例は中央値で3回の前治療を受けています(範囲:2-8回)。本試験においてはzandelisibを1日1回で2サイクル(1サイクル = 28日)投与し、その後は各サイクルの最初の7日間だけ1日1回投与とする間歇投与療法(IDT, Intermittent Dosing Therapy)を行いました。

有効性

本試験の主要評価項目は、独立効果判定委員会の評価による客観的奏効率です。同委員会が最短追跡期間である6か月後に評価した、本解析対象集団である再発または難治性の濾胞性リンパ腫症例91名における客観的奏効率は70.3%(n=64、95%信頼区間:59.8~79.5%)、完全奏効率は35.2%(95%信頼区間:25.4~45.9%)でした。
データカットオフ日時点では追跡期間が不十分なため、本試験の副次評価項目である、本解析対象集団における最終的な奏効期間の正確な算出には至っておりません。しかし、本解析対象集団の追跡期間中央値8.4か月時点では、奏効期間の中央値には達していませんでした。データカットオフ日は、最後の症例がzandelisibの初回投与を受けてから約6か月後です。

安全性と忍容性

Zandelisibは本試験において、データカットオフ日までの期間で概ね良好な忍容性が確認されました。本試験で観察された安全性は、B細胞悪性腫瘍症例を対象としたzandelisibの単剤またはリツキシマブ(Rituxan®)との併用による第1b相試験(NCT02914938別ウィンドウで開きます)で既に報告したデータと整合しています。
データカットオフ日時点で、濾胞性リンパ腫試験対象集団の追跡期間の中央値は9.4か月(範囲:0.8-24か月)で、グレード3以上の注目すべき有害事象の発現率は、ALT/AST上昇が1.7%、大腸炎が1.7%、下痢が5.0%、粘膜炎が2.5%、非感染性肺炎が0.8%、皮疹が3.3%、また薬剤に関連する有害事象による中止率は9.9%でした。
本試験のデータカットオフ時に得られたデータを含むより詳細な結果は、2022年中に学会発表する予定です。

MEIのCEOであるDaniel P. Goldは次のように述べています。「今回新たに明らかになったzandelisibのデータは非常に有望であり、再発または難治性の濾胞性リンパ腫患者さんの標準治療に良い影響を与える可能性を示すものだと考えます。本日報告した有効性と安全性のデータを基に、本剤の迅速承認申請のタイミングについてFDAと協議を継続予定です。今後は我々のパートナーである協和キリンと一緒に本試験を継続し、さらには濾胞性リンパ腫と辺縁帯リンパ腫以外の適応症の臨床開発プログラムも継続しながら、今後開催される学会にてより詳細なデータを報告する予定であり、その機会を楽しみにしています。」

協和キリンの執行役員 研究開発本部長 鳥居義史は「本日報告されたzandelisibのTIDAL試験のデータは、我々を大いに勇気付けるものだったと考えています。当社はパートナーであるMEIと共にzandelisibの開発を続け、その価値をより深く理解することで、世界中のリンパ腫患者さんに希望をもたらすことを目指しています」と述べています。

MEI Pharma社 カンファレンスコール・ウェブキャスト

MEIは本日2021年11月30日 米国東部時間 午前8時(日本時間同日午後10時)に投資家・アナリスト向けウェブキャストイベントを開催し、本日報告された第2相TIDAL試験データの報告と会社概要の説明を行います。
スライド付きのライブウェブキャストは、MEIのウェブサイト(www.meipharma.com別ウィンドウで開きます)のIRセクション内”Events & Presentation”からアクセスできます。ウェブキャストの再放送は、ライブイベント終了後、少なくとも30日間アーカイブされます。
MEIのその他のメディアおよび投資家向けリソースは、こちら別ウィンドウで開きますからご確認ください。

Zandelisibについて

Zandelisib(開発番号:ME-401)は、B細胞悪性腫瘍を対象とした、1日1回経口投与する治療薬として現在開発中のPI3Kδ選択的阻害剤です。臨床試験では、単剤および他の治療法との併用で、IDTを実施して本剤の有効性と安全性を検討しています。IDTは本剤特有の分子および生物学的特性を活用したものです。

2020年3月、FDA(米国食品医薬品局)より、2回以上の全身療法を受けた再発または難治性の濾胞性リンパ腫症例に対する治療薬として、本剤がファスト・トラックに指定されました。さらに2021年11月、FDAより、濾胞性リンパ腫症例の治療薬として、本剤が希少疾病用医薬品に指定されました。

2020年4月、MEIと協和キリンは、本剤のさらなる開発と商業化のためのグローバルライセンス、開発、および販売契約を締結しました。MEIと協和キリンは米国で本剤の共同開発および共同プロモーションを行い、MEIは米国での販売によるすべての収益を計上します。協和キリンは米国外での独占的な販売権を有しています。

現在、TIDAL試験における再発または難治性の濾胞性リンパ腫症例を対象としたコホートの追跡調査と、再発または難治性の辺縁帯リンパ腫症例を対象としたコホートが継続中です。また第3相試験であるCOASTAL試験(NCT04745832別ウィンドウで開きます)では、抗CD20抗体と化学療法またはレナリドミドを含む1回以上の前治療歴のある、再発または難治性の濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫症例を対象に、本剤とリツキシマブの併用効果を標準化学療法と比較する試験が進行中です。また本試験より、少なくとも1回の前治療歴のある再発または難治性の濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫症例におけるFDAの承認取得、および世界各国での販売承認申請をサポートする結果を得ることを期待しています。さらに本試験は、少なくとも2回以上の前治療歴のある、再発または難治性の濾胞性リンパ腫および辺縁帯リンパ腫症例を対象とした第2相TIDAL試験の結果に基づく、zandelisibの迅速承認に要求される検証的試験としての役割も備えています。
その他の進行中の試験としては、協和キリンが日本で実施している低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症を除く)を対象とした第2相試験(NCT04533581別ウィンドウで開きます)があります。

TIDAL試験について

TIDAL試験(Trials of PI3Kδ DeltA in Non-Hodgkin's Lymphoma)は、zandelisib単剤の効果を評価する、2つのコホートからなる第2相国際共同試験です。1つ目のコホートは再発または難治性の濾胞性リンパ腫の成人症例を対象とし、2つ目のコホートは再発または難治性の辺縁帯リンパ腫を対象としています。いずれのコホートでも、化学療法や抗CD20抗体を含む、少なくとも2回の全身療法歴のある症例を対象としています。この試験の結果とFDAとの議論に基づいて、各試験群のデータはFDAに各対象疾患の迅速承認の申請を行う際の資料となる予定です。

本試験では最初にzandelisib 60mgを1日1回、28日を1サイクルとして2サイクル投与し、その後IDTに切替えます。本剤のIDTは28日サイクルの最初の7日間に1日1回投与するもので、本剤特有の非臨床および臨床エビデンスに基づいて開発されました。有効性の主要評価項目は客観的奏効率で、その他の評価項目には奏効期間および忍容性が含まれます。再発または難治性の濾胞性リンパ腫の主要評価項目を評価するための解析対象集団は91名、再発または難治性の辺縁帯リンパ腫の同解析対象集団の症例数は64名になります。2021年4月に濾胞性リンパ腫の主要評価項目の解析対象集団の登録完了を発表しました。濾胞性リンパ腫コホートの全登録症例数は121名であり、追加の安全性データはこの症例数のもとで取得され、承認申請時に提出される見込みです。

本試験の詳細情報は、ClinicalTrials.gov別ウィンドウで開きますでご覧いただけます。

濾胞性リンパ腫について
濾胞性リンパ腫は全ての非ホジキンリンパ腫(NHL)のうち約20-30%を占める、最も代表的な低悪性度リンパ腫です。この疾患はリンパ球と呼ばれる白血球の1つであるB細胞で生じ、大半の症例では緩やかに進行する傾向を示します。診断時年齢の中央値は65歳と高齢者に多く、進行型のNHLであるびまん性大細胞型B細胞リンパ腫に転化することがあります。
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