Rocatinlimab(KHK4083/AMG 451)に関する
2023年米国皮膚科学会での発表のお知らせ
協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本 昌志 以下、協和キリン)は、中等度から重度のアトピー性皮膚炎患者を対象として開発中のrocatinlimab(KHK4083/AMG 451)のPhase 2b試験の結果について、2023年3月17日から21日までニューオーリンズで開催される米国皮膚科学会(AAD)2023年総会で2つの演題をポスター発表することをお知らせします。
アトピー性皮膚炎(AD)は、皮膚の発赤、そう痒、疼痛を特徴とする慢性的で不均一な炎症性疾患であり、皮膚バリア障害とT細胞依存性の炎症によって引き起こされます。疾患の原因となる様々な炎症メカニズムと病態との関連性は個々の集団や個人によって異なり、また時期によって変化することがあります。
ADは小児期に発症することが多く、成人では最大10%が罹患するのに対して、小児では15~20%が罹患しています。非致死性疾患としては15番目に多い疾患として世界的にも広がりを見せており、また、世界のAD患者の約3人に1人が中等症から重症であるとされています。有効な治療薬も登場している一方で、様々な疾患背景の患者さんに持続的な効果をもたらし、高い有効性と忍容性を有する新規治療薬が依然として求められています。
協和キリンの執行役員 研究開発本部長の鳥居義史は次のように述べています。「RocatinlimabのPhase 2b試験の追加データをこのたび発表できることを嬉しく思います。ADにおけるOX40シグナルの生理的な役割についてさらに理解が深まり、この疾患で苦しむ患者さんの将来の治療オプションの創出につながることを期待しています。」
- 演題
- Rocatinlimab demonstrates a significant reduction in IgE concentrations in addition to clinical efficacy measures in patients with moderate-severe atopic dermatitis (msAD) in a randomised, double-blind, placebo-controlled Phase 2 trial
- 演者
- Emma Guttman-Yassky, MD, PhD., Camilla Chong, MD, DipPM, MFPM
Ehsanollah Esfandiari, MD, PhD.
- 発表日時
- 米国中部標準時間3月17日(金)午後2:55
- 場所
- Ernest N. Morial Convention Center (Level 1, Hall E, Poster Center 2)
第2相(Phase 2b)多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照試験(NCT03703102)では、被験者(n=274)をrocatinlimab 150mgもしくは600mgを4週ごと(Q4W)、rocatinlimab 300mgもしくは600mgを2週ごと(Q2W)、あるいはプラセボ(プラセボ:0~18週、rocatinlimab 600mg Q2W:18~36週)の5群に1:1:1:1:1の割合で割り付け、36週間の皮下投与を実施したのち、その後20週間(56週まで)のフォローアップ期間を設けました。
解析対象は267名で、rocatinlimab:n=210(78.7%)、プラセボ:n=57(21.3%)でした。Rocatinlimab投与により、16週目までに平均血清IgE濃度がベースライン以下に低下しました。この血清IgE濃度の減少は36週目まで継続し、その後56週目までベースライン以下の値を維持しました。
プラセボ群の血清IgE濃度(平均)は投与16週目まで上昇しましたが、18週目にrocatinlimab 600mg Q2W投与に切り替えた後、血清IgE濃度は36週目の投与終了まで低下し、その後56週目までベースライン以下の低値を維持し続けました。投与16週目、36週目、56週目の血清IgE濃度のベースラインからの低下率(平均)は次の通りでした。
- -19.7%、-38.9%、-26.7%(150mg Q4W)
- -17.1%、-39.5%、-46.5%(600mg Q4W)
- -18.6%、-44.8%、-10.9%(300mg Q2W)
- -16.9%、-48.6%、-58.5%(600mg Q2W)
- 34.2%、-8.8%、-29.1% (placebo/600mg Q2W)
報告された有害事象は、ロカチンリマブ群間で概ね同様で、二重盲検期間中の主な有害事象は、発熱や悪寒、頭痛、アフタ性潰瘍、吐き気などでした。
- 演題
- Rocatinlimab demonstrates improvements in patient-reported outcomes in adult patients with moderate–severe atopic dermatitis in a Phase 2 trial
- 演者
- Eric Simpson, MD, MCR, Angela Williams, PhD.
Camilla Chong, MD, DipPM, MFPM
Ehsanollah Esfandiari, MD, PhD.
- 発表日時
- 米国中部標準時間3月17日(金)午後2:05
- 場所
- Ernest N. Morial Convention Center (Level 1, Hall E, Poster Center 2)
第2相(Phase 2b)多施設共同無作為化プラセボ対照試験では、被験者(n=274)をrocatinlimab 150mgもしくは600mgを4週ごと(Q4W)、rocatinlimab 300mgもしくは600mgを2週ごと(Q2W)、あるいはプラセボ(プラセボ:0~18週、rocatinlimab 600mg Q2W:18~36週)の5群に1:1:1:1:1の割合で割り付け、36週間の皮下投与を実施したのち、その後20週間(56週まで)のフォローアップ期間を設けました。患者報告アウトカム(Patient-reported outcomes: PRO)には、数値評価指標(Numerical Rating Scale: NRS)を用いて測定されたそう痒(pruritus)スコアおよび睡眠障害(sleep disturbance: SD)スコア、皮膚疾患がQOLに及ぼす影響の評価指標(Dermatology Life Quality Index: DLQI)などが含まれます。これらは、ベースラインから16週目まで、さらに56週目まで評価されました。
267名の被験者が無作為に割り付けられ(rocatinlimab:n=210、プラセボ:n=57)ました。16週目まで、Rocatinlimab群のNRS-pruritusスコア(p≦0.029)およびNRS-SDスコア(p≦0.025)のベースラインからの減少率は、プラセボ群と比較して大幅に減少しました。Rocatinlimab群におけるそう痒スコアおよびSDスコアの改善は、56週目まで維持されました。
Rocatinlimab群ではプラセボ群と比較して16週目までの各時点でDLQIの大幅な低下が認められました(いずれもp<0.05)。DLQIは36週目まで更に改善し、フォローアップ期間中も改善が維持されました。
18週間の二重盲検期において、治療に関連した有害事象(TEAE)はrocatinlimab群では216人中175人(81%)、プラセボ群では57人中41人(71.9%)の被験者にみられました。Rocatinlimab群全体で10%以上の被験者で報告された高頻度に認められたTEAEは、発熱、鼻咽頭炎、ADの悪化、悪寒でした。発熱と悪寒の重症度はいずれも軽度から中等度で、そのほとんどがrocatinlimabの初回投与後のみに認められ、それにより治験が中止されることはありませんでした。また、過敏症の出現例や死亡例はありませんでした。
上記ポスター発表のほか、協和キリンはアムジェン社とともにシンポジウムを共催します。シンポジウムのタイトルは“Uncovering the Critical Role of OX40 Signaling in Orchestrating Inflammation in Atopic Dermatitis”(和訳:アトピー性皮膚炎の炎症を司るOX40シグナルの重要な役割の解明)で、3月17日12-13時(米国中部標準時間)にProduct Theater 1でJonathan Silverberg, MD, PhD., MPHが発表します。
- Rocatinlimabについて
- Rocatinlimab(KHK4083/AMG 451)は、現在開発中のファーストインクラスになりうるヒト型抗OX40モノクローナル抗体であり、全身および局所の炎症反応を促進する役割を担っているOX40を発現した病原性T細胞を阻害し、またその数を減少させます。アトピー性皮膚炎の病変部には、OX40を発現した細胞が存在し、その発症に重要な役割を果たしていることが報告されています。初期の抗体は当社の米国研究チームとラホヤ免疫研究所の共同研究により見いだされました。
- アムジェン社と協和キリン社の提携について
- 2021年6月1日、協和キリンとアムジェンはrocatinlimabの共同開発・販売に関する契約を締結しました。本契約に基づき、アムジェンは本剤の開発、製造、および協和キリンが単独で販売活動を担当する日本を除くグローバルでの販売活動を主導します。両社は米国において本剤のコ・プロモーションを行い、また、協和キリンは米国以外(日本を除く欧州およびアジア)においてコ・プロモーションを行う権利を有しています。