透析中の高リン血症を対象としたフォゼベル®
第3相臨床試験結果の米国腎臓学会での発表について

本ニュースリリースは、当社が発表した英文プレスリリースの内容を、当社が日本語に翻訳、再構成し、発表しています。本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先することにご留意下さい。
協和キリン 英語リリース別ウィンドウで開きます

協和キリン株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:宮本 昌志、以下「協和キリン」)は、透析中の高リン血症患者※1を対象としたフォゼベル®(一般名:テナパノル塩酸塩、開発番号:KHK7791)※2における2つの第3相臨床試験の主な結果について、11月2日~5日開催の米国腎臓学会議(ASN Kidney Week 2023, ペンシルベニア州フィラデルフィア)にて2件のポスター発表を行います。発表要旨は学会ウェブサイト(https://www.asn-online.org/education/kidneyweek/別ウィンドウで開きます)から閲覧可能です。

ASN Kidney Week 2023   ポスター発表
  • 番号:TH-PO144
  • 発表日時:11月2日 午前10時~12時(現地時間)
  • 演題:Tenapanor effect on decrease in phosphate binder pill burden for hyperphosphatemia in Japanese patients undergoing hemodialysis: A phase 3 long-term study
    (日本語訳:血液透析施行中の日本人高リン血症患者を対象としたテナパノルによるリン吸着薬の服用負荷軽減効果について:第3相長期試験結果から)
試験の概要
透析施行中の高リン血症患者では、食事療法とともにリン吸着薬(PB)の服用が必要とされており、その服薬負荷の大きさと、そこに起因する服薬コンプライアンスの低下が問題とされています。本試験では、血液透析施行中の高リン血症患者を対象に、長期安全性とともにテナパノル塩酸塩によるPBの服薬負荷軽減効果を評価しました。本試験は、多施設共同、オープンラベル、単群の第3相試験です。ベースラインの血清リン濃度が3.5〜7.0mg/dLの血液透析患者を対象に、PB治療に加えて、テナパノル塩酸塩を1日2回52週間投与しました。投与開始後、血清リン濃度に応じて、テナパノル塩酸塩投与量を5、10、20、30mgの範囲で調整しながら、徐々にPBからテナパノル塩酸塩に切り替えました。主要評価項目は長期投与時の安全性、重要な副次評価項目は、PBとテナパノル塩酸塩の合計1日処方錠数のベースラインから30%以上の減少としました。
主な試験結果
212名の被験者が本治験に参加しました。PBとテナパノル塩酸塩の合計1日処方錠数がベースラインから30%以上減少した被験者は212名中158名(77.5%)でした。PBからテナパノル塩酸塩への完全な切り替えは、93名(45.6%)で達成されました。PBおよびテナパノル塩酸塩の1日あたりの平均処方錠数は11.4(SD; 7.62)錠から3.1(SD; 5.48)錠まで減少した一方で、平均血清リン濃度は、ベースラインおよび第52週でそれぞれ5.24(SD; 0.96)および5.11(SD; 1.17)mg/dLと良好にコントロールされました。最も多く認められた副作用は下痢(56.6%)であり、ほとんどの重症度は軽度でした。そのほか、テナパノル塩酸塩の安全性は既知のプロファイルと同様でした。
結論
テナパノル塩酸塩が血清リン濃度をコントロールしながら既存のPBによる服薬負荷を軽減し得ることが示唆されました。また、テナパノル塩酸塩の長期投与時の忍容性が確認されました。
ASN Kidney Week 2023   ポスター発表
  • 番号:TH-PO145
  • 発表日時:11月2日 午前10時~12時(現地時間)
  • 演題:Efficacy and safety of tenapanor in Japanese peritoneal dialysis patients with hyperphosphatemia: Results of a phase 3 study
    (日本語訳:腹膜透析施行中の日本人高リン血症患者を対象としたテナパノルの有効性および安全性:第3相試験結果から)
試験の概要
本試験は、腹膜透析施行中の高リン血症患者を対象にした多施設共同、オープンラベル、単群の第3相試験です。スクリーニング時の血清リン濃度が3.5〜7.0mg/dLであり、PBウォッシュアウト後に6.1〜9.9mg/dLに上昇した患者を対象に、テナパノル塩酸塩を1日2回16週間投与しました。投与開始後、血清リン濃度に応じて、テナパノル塩酸塩投与量を5、10、20、30mgの範囲で調整しました。主要評価項目は、投与開始8週後の血清リン濃度のベースラインからの平均変化量としました。
主な試験結果
54名の被験者が本治験に参加しました。平均血清リン濃度は、ベースラインの7.65mg/dLから、8週時点で6.14mg/dL、16週時点で5.44mg/dLに減少しました。8週時点および16週時点のベースラインからの平均血清リン濃度の変化量は、それぞれ-1.18mg/dL(95%信頼区間-1.54mg/dL、-0.81mg/dL)および-1.65mg/dLでした。主な有害事象は下痢であり(74.1%)、重症度は軽度または中等度でした。これらは、血液透析患者を対象とした他の第3相試験と同様の結果でした。
結論
テナパノル塩酸塩は腹膜透析施行中の高リン血症治療における新たな選択肢となる可能性が示唆されました。

協和キリンはこの2つの試験のほか、血液透析施行中の高リン血症患者を対象としたテナパノル塩酸塩の第3相プラセボ対照二重盲検ランダム化並行群間比較試験および血液透析施行中の高リン血症患者を対象としたテナパノル塩酸塩の第3相プラセボ対照二重盲検ランダム化リン吸着薬併用並行群間比較試験を国内にて実施し、昨年の米国腎臓学会で発表しました。また、本年9月には透析中の慢性腎臓病患者における高リン血症の改善を適応症としたテナパノル塩酸塩(フォゼベル®)の国内製造販売承認を取得pdfが開きますしました。

協和キリンの執行役員 研究開発本部長 鳥居義史は、次のように述べています。「私たちはArdelyxと密に連携しフォゼベル®の研究開発を進め、先月日本において製造販売承認を取得することができました。この薬剤が血液透析および腹膜透析施行中の患者さんにとって新たな治療選択肢となる可能性や、服薬負荷を軽減させる可能性を示唆することができ、喜ばしく感じています。フォゼベル®が患者さんにとって利便性の高い治療選択肢の一つとなることを期待しています。」

フォゼベル®はArdelyx※3によって創製され米国で開発が進められたファーストインクラスのリン吸収阻害剤で、協和キリンは2017年11月にArdelyxとの間で、本剤の日本における高リン血症を含む心腎疾患領域を対象とした独占的開発・販売権を取得するライセンス契約を締結しています。

協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。

※1高リン血症について
高リン血症は、血液中のリン濃度が異常に上昇する重篤な疾患です。血中リン濃度は腎臓によって調節されていますが、腎機能が著しく低下すると、リンが体外に十分に排出されなくなります。そのため、透析施行中の慢性腎臓病患者さんにおいて、高リン血症は罹患率が高いことが知られています。国際的に認められている治療ガイドラインであるKDIGOでは、血中リン濃度を正常範囲(2.5mg/dL以上4.6mg/dL未満)に下げることが推奨されています。全世界で200万人以上の患者さんが透析または腎移植による治療を受けているというデータが知られている一方で、これは実際に治療を必要としている人々のわずか10%しか示していない可能性があるとも言われています#
# Couser WG, Remuzzi G, Mendis S, Tonelli M. The contribution of chronic kidney disease to the global burden of major noncommunicable diseases. Kidney Int. Dec 2011;80(12):1258-1270.
※2フォゼベル®(テナパノル塩酸塩)について
フォゼベル®はArdelyxによって創製・開発されたファーストインクラスのリン吸収阻害薬です。本剤特有のメカニズムにより、腸管で局所的にナトリウムイオン/プロトン交換輸送体3(NHE3)を阻害し、リン吸収の主要経路である傍細胞経路(細胞間隙経路)からのリン吸収を抑制します。
※3Ardelyxについて
Ardelyxは重大なアンメット・メディカルニーズを満たす革新的なファーストインクラスの医薬品の研究開発・販売をミッションとして創設されました。Ardelyxとして初めて承認を取得した便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)治療薬IBSRELA®(テナパノル塩酸塩)は、現在米国およびカナダで販売されています。また、ArdelyxはXPHOZAH®(テナパノル塩酸塩)の開発も行っています。また、Ardelyxの有するRDX013は、腎臓病や心臓病の患者さんにおいて認められる血中カリウム濃度の上昇(高カリウム血症)の有効な治療薬として第2相の開発段階にあります。RDX013は慢性腎臓病患者さんにおける重度な電解質障害である代謝性アシドーシス治療薬としても初期開発を行っています。Ardelyxは、テナパノル塩酸塩について協和キリン(日本)、Fosun Pharma(中国)、また、Knight Therapeutics(カナダ)と各地域における開発および販売に関する契約を締結しています。
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