方針・戦略
協和キリングループでは経営理念とビジョンの実現、新しい価値を創造し続ける人・組織づくりの強化に向けて「協和キリングループ人材マネジメント基本方針」を定め、その中で「人材はイノベーションの源泉」と位置づけています。
さらに、2030年ビジョンとして「イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、Life-changingな価値を継続的に創出すること」を掲げ、その実現に向けた具体的な事業戦略を「Story for Vision 2030」として策定し、それに沿って「Unlock Individual Potential」「Enterprise Leader」「Co-creating Team」「OKK Culture」「Digital Transformation」を柱とする人事戦略をグローバルで掲げています。
私たちは、ビジョンをStrategy(事業活動/事業戦略)とTeam(人・組織)の双方から成り立つものと捉えています。私たちのビジョン実現のために事業戦略を推進していく人・組織に期待する行動として示したのが「KABEGOE Principles」です。
人事戦略に基づき、多様な人材が活躍できる職場環境整備や組織風土、企業文化の醸成など社内環境の整備通じ、従業員一人ひとりの持つ力を最大限に引き出し、KABEGOE Principlesを実践する人・組織づくりを進めることで、社内外に大きな環境変化が続く中にあってもグローバルレベルでより強くしなやかな組織となり、Life-changingな価値を提供し続けていくことを目指しています。
協和キリングループ 人材マネジメント基本方針
協和キリングループ(以下、「当社グループ」という)は、経営理念を実現するために、価値観と行動規範に基づき、高い倫理観をもって行動し、社会から信頼される企業グループを目指しています。
健康・医療に対するニーズ・技術が多様化する一方、医療経済の問題がグローバルな課題となるなど当社グループの事業を取り巻く環境変化は激しさを増しています。そうした環境変化のなかで、新しい価値を創造し、事業のグローバル展開を進めるなど、事業モデルの転換スピードを速めていくためには、リーダーシップを発揮し、自律的に変革に挑む社員の確保・育成が不可欠と認識しています。また、多様な背景を持つ個々の能力を活かし、新たな価値を生み出す共創の場を提供することが必要と考えています。
以上の背景を踏まえて、当社グループにおける社員と会社の関係および社員の能力開発に対するグループ共通の考え方を明確に示し、変革に挑み新しい価値を創造し続ける人・組織づくりを強化するため、以下の方針を定めます。
- 当社グループは、人材をイノベーションの源泉ととらえ、当社グループ社員一人ひとりの能力を最大限引き出し、変革に挑み新しい価値を創造し続ける人と組織をつくることを目指します。
- 当社グループは、当社グループ社員の個を活かし、共創を促します。
- 当社グループは、自由闊達な風土をつくります。
- 当社グループは、挑戦と成長の機会を提供します。
- 当社グループ社員は、自律し、当社グループの成長に資する変革に挑みます。
- 当社グループ社員は、自ら考え、対話し、行動します。
- 当社グループ社員は、自己成長と組織貢献を追求します。
- 当社グループは、当社グループが事業活動する国における労働関係法令・ガイドライン・業界ルールを遵守し、労務管理を行います。
- 当社グループは、上記1~4の実現のため、当社グループ各社において、適切な組織体制および業務プロセスを構築し、運用します。
以上
ガバナンス
グローバルタレントマネジメント体制の整備と推進
One Kyowa Kirin体制をサステナブルに発展させていくため、グローバルで各地域や機能部門の将来を担う次世代リーダー候補を発掘し、育成、抜擢する仕組みを推進しています。
グローバルタレントマネジメントを戦略的に進めるべくグローバル共通の人事基盤整備として、グローバルキーポジションとその人材要件の特定、グローバル共通のグレーディングの整備、グローバルサクセッションプランの策定などに取組んできました。これらのデータは、グローバル人事システム(HRIS)を通じてリアルタイムに共有され、データに基づいたタレントマネジメントに活用されています。適所適材の人材配置を実現することで、持続的にグローバルリーダーを発掘・育成・抜擢していくことを目指しています。
また、2025年にはパフォーマンスマネジメントの仕組みをグローバルに統一し、クロスリージョン・クロスファンクションでの人材マネジメントと価値創造をさらに推進しています。私たちの人・組織のありたい姿をまとめたKABEGOE Principlesは、パフォーマンスマネジメントに組み込まれたほか、今後もタレントマネジメントの各側面に取り込んでいきます。
指標および目標
エンゲージメント調査「Global Engagement And Motivation Survey (GEMS)」
協和キリンでは、従業員一人ひとりの能力を最大限に引き出す重要な指標として、毎年エンゲージメント調査 (Global Engagement And Motivation Survey) を実施し、組織改善課題の把握や組織活性化に向けての施策検討に活用しています。本調査では社員が能力を最大限に発揮するための重要な要素として、会社へのコミットメントの度合い、仕事における自発的な取り組み意欲を示す「社員エンゲージメント」と、適材適所の実現や、最大限に能力を発揮するための働きやすさを示す「社員を活かす環境」に着目しています。また、多様性を強みにできる組織を目指すべく2020年から「ダイバーシティ&インクルージョン」も指標に追加しています。
2024年の調査結果では、「社員エンゲージメント」が前年と同水準、「社員を活かす環境」が+1ポイント改善しました※1。
この調査結果を受けて、各組織において改善案を立案し、課題解決に向けたPDCAサイクルを着実に回していきます。
- ※1調査対象者数・回答率
- 対象者数:5,499名 回答者数:5,359名 回答率:97%
- 設問カテゴリー
- 社員エンゲージメント/戦略・方向性/リーダーシップ/品質・顧客志向/個人の尊重/成長の機会/報酬・福利厚生/社員を活かす環境/業績管理/権限・裁量/リソース/教育・研修/協力体制/業務プロセス・組織体制/ダイバーシティ&インクルージョン /経営理念・価値観 /行動規範・コンプライアンス/期待される働き方/会社のクオリティーカルチャー/KABEGOE
- ベンチマークデータ
- グローバル平均、好業績企業平均、製薬平均、Region別平均、地域・国別平均
- ※最新の組織構造に過去の組織を紐づけ、過去の結果も再計算している
具体的な取り組み
人材育成とキャリア開発
協和キリングループでは、One Kyowa Kirin体制の中でKABEGOE Principlesを実践し、イノベーションの創出につながる人材育成を目指しています。人材育成においては、業務を通じた成長機会の提供だけではなく、社員一人ひとりのキャリアの実現に必要なプログラムを整備してそれぞれに必要な選択をできるようにしています。
日本リージョンにおいては、グローバルグレードに準拠した等級制度、グローバル共通のパフォーマンスマネジメントを導入し、よりグローバルに人材マネジメントができる環境を整備しています。
厳しい競争環境や働き方が多様化する中では、自身のキャリアに対してオーナーシップを持つことが求められるため、全経営職のポジションについてジョブディスクリプションを作成して全従業員に公開しています。
さらに、社内公募の募集ポジション数や募集頻度を増やし、協和キリングループの中で実現したいキャリアを自ら見つけ、会社はその実現に向け努力することを支援していく、そうしたお互いの成長にコミットした対応な関係に基づいて各種関連施策を企画・実行していきます。
各種関連施策
- キャリア施策(マイキャリアシリーズ、キャリアデザイン研修・キャリア支援力向上研修、キャリア個別相談)
- 自己啓発支援(チャレンジ支援制度)
- 社内公募、社内副業
- マネジメント強化研修(新任経営職研修、初めてメンバーを持つ経営職のためのトレーニング)
- 新入社員育成(新入社員研修、3年育成施策)
- 海外短期派遣プログラム(Global Exchange Program)
- 次世代経営人材育成研修
- キリングループ選抜研修
- 異文化理解研修
- 異業種交流研修
- OKK Global Leadership Program
キャリア施策については、従業員全員が常にキャリアオーナーシップを持ち、キャリアを描くことが重要と考えます。そのためにも、キャリアのスタート時からキャリアの主体性と変革に挑む意識を持つことが重要であると考え、マイキャリアシリーズ(My Career Prologue session, Starting session, Leaping session)では、内定式からキャリアを考えるきっかけを提供し始め、入社後も継続して学びや気づきの機会を提供し続けています。また、自らのキャリア自律に向けて学ぶ「自律・チャレンジ・変革に向けたキャリア基礎研修」や、世代別のキャリアフォーラム等を通し、社員が自ら自身のキャリアを描くことができるよう支援をしています。メンバーをもつ経営職向けには、メンバーのキャリア自律支援について学ぶ「キャリア支援力向上研修」を展開しています。さらに、従業員がいつでも専門家であるキャリアカウンセラーに相談できる「キャリア個別相談」を設置し、従業員は、キャリア研修・上司とのキャリア面談・キャリア個別相談等で、自身のWill・Can・Mustを整理したうえで、必要な学びをしたいと考えた際には、自己啓発における学びを支援する「チャレンジ支援制度」も活用することが可能です。チャレンジ支援制度では、現時点の職務に必要な学びだけでなく、協和キリンでの将来に向けての学びへのチャレンジも支援しています。
マネジメント強化については、「新任経営職研修」に加え、「初めてメンバーをもつ経営職のためのトレーニング」を展開し、メンバーを持つマネージャーがいつでも必要な知識・スキル・マインドを習得できる環境を整備しています。また、ミドルマネジメント支援施策として、「変化の時代に求められるマネジメント」施策もスタートしました。
新入社員育成については、新入社員の成長を加速させる目的で、入社3年目までの新入社員の上司やOJT指導者、配属先の先輩社員たちが一丸となって新入社員の育成を伴走していく「3年育成プログラム」を実施しています。新入社員と関わる社員が3年後のありたい姿を共有し、上長のキックオフ会での情報共有やOJT指導者への教育も実施し、会社全体に育成の文化を醸成していくことも期待し、展開しています。
次世代経営人材の育成については、将来を担う若手リーダーを選出し、次世代経営人材育成と長期に亘るOJT・OFF-JTを通じて育成を行っています。OFF-JTでは、約半年間に亘り、アウトプット中心の教育を通じて、事業戦略をグローバルでベルで立案・実行できる知識やスキルを付与しています。ここで育成した人材を経営候補として捉え、研修終了時には、ポジションのアサインも積極的に行い、事業経験等のOJTを通じ、継続した育成を実施しています。
またグローバルの各拠点においてさまざまな従業員の能力開発、キャリア開発を目的とした学習プログラムを展開しています。EMEAや北米のタレントデベロプメント担当者とも連携し、グローバルビジネスを加速させていくために重要な、お互いの文化的背景違いを理解する異文化理解研修や、会社を牽引していくリーダー層を対象としたOKK Global Leadership Program、さらには、地域や部署を越えてOJT経験を積むことのできるGlobal Exchange Program等を通して、グローバルで活躍する人材の育成にも力を入れています。
2024年度人事部主催研修実施状況
名称 |
参加人数 |
研修合計時間(h) |
階層別必修研修 |
階層別研修(一般職) |
365 |
9194 |
階層別研修(経営職) |
126 |
1991 |
選抜研修 |
OKK Global Leadership Program |
10 |
900 |
キャリア支援 |
キャリアデザイン_キャリア支援力向上研修 |
638 |
3828 |
キャリア個別相談 |
70 |
70 |
マネジメント支援 |
はじめてメンバーをもつ経営職のためのトレーニング |
141 |
423 |
公募型研修 |
異業種交流研修 |
10 |
382 |
異文化理解研修 |
691 |
1382 |
医薬英語研修 |
153 |
918 |
自己啓発 |
チャレンジ支援制度 |
1096 |
- |
キャリア入社 |
キャリア入社者研修 |
77 |
348 |
合計 |
|
3377 |
19436 |
2024年度の当社の年間受講者一人あたりの研修時間と、従業員一人あたりの研修時間は以下のとおりです。(人事部主催の全体共通教育のみ、部門ごとに実施している職種別の専門人材教育は除く。いずれも自己啓発に関する時間を除く。)
- 年間受講者一人あたりの研修時間:5.8時間
- 従業員一人あたりの研修時間:4.7時間
(また、研究開発に携わる人材のサイエンスレベル向上や、社外での活躍機会の提供などを目的に、大学等の教育機関にて教育研修プログラムへの参画等の取り組みを実施しています。)
評価制度
協和キリングループでは、グローバルで共創を促す人材マネジメントの基盤を作り、全員でKABEGOE文化を醸成していくため、パフォーマンスマネジメントの仕組みをグローバルで共通化しました。パフォーマンスマネジメントは、社員の能力開発、エンゲージメント向上、育成を通じて社員と会社の成長を促進する継続的なプロセスです。これによって病気と向き合う人々に笑顔をもたらすという私たちの使命を実現する力となります。このプロセスにおいては、継続的な対話とフィードバックの共有を重要視し、グローバル戦略およびリージョナル戦略に沿って、各自が何を達成すべきかを明確にすることに役立てます。同様に大切にしているのは、これらの目標をどのように達成するか、です。KABEGOE Principlesは、KABEGOE文化を醸成し、ビジョンを達成するために、日々の行動や意思決定において私たちが目指すべき考え方や行動をより具体的に示し、従業員一人ひとりの行動指針としています。また、中長期的なキャリア、能力開発を支援するため、キャリア希望、目標を上司とすり合わせながら、対話を通じてキャリア形成を支援していく仕組みも設けています。
社員との対話
協和キリングループでは国内外で「Meet Up」という経営層と従業員との対話の機会を設けています。経営層が現場に赴いて従業員の生の声を聞き、また経営の立場から会社や方向性について語ることで相互理解を深め、役職や立場、リージョンの壁を越えた対話を行っています。
また、日本においては、労働組合との間でユニオン・ショップ制の採用を合意し、働きやすい職場環境の維持、企業文化の醸成に向け、お互いの立場を尊重し、建設的な議論を重ねています。
業績連動型の報酬体系
協和キリンでは、会社業績を反映して賞与水準を決定する、業績連動型の報酬体系を採用しています。また、個人ごとの賞与額については、組織業績に対する貢献度合いを反映することとしています。会社業績や個人の貢献度を一定の範囲内で報酬に反映することで、業績向上に向けた一人ひとりの意欲喚起につなげています。
学位取得支援の取り組み
協和キリンは、研究開発型ライフサイエンス企業として、主に研究開発分野における社員のキャリアパスに資する学位取得を支援しています。支援対象者に対しては、学位取得に係る費用を会社が負担します。
ハイブリッドワーキングモデル
協和キリンでは、Life-changingな価値創造に向けて全従業員がその能力を最大限発揮するため、従業員一人ひとりが主体となって、機能ごと、リージョンごと、組織ごとに最適な働き方を考える「ハイブリッドワーキングモデル」を提唱しています。
【協和キリン ハイブリッドワーキングモデル3つの基本方針】
- Nothing that costs our well-being is worth it(ウェルビーイングを第一の判断基準に)
- Flexibility within a framework(価値創造に向けた枠組みの中で柔軟に)
- Employees are the architects of the new Model(意思をもって自分たちの働き方をつくる)