FDAとの協議を踏まえたザンデリシブの米国での開発の見通しについて

本ニュースリリースは、当社とMEI Pharma, Inc.が発表した英文プレスリリースの内容を、当社が日本語に翻訳、再構成し、発表しています。本ニュースリリースの正式言語は英語であり、その内容・解釈については英語が優先することにご留意下さい。協和キリン 英語リリース別ウィンドウで開きます

協和キリン株式会社(本社:東京、代表取締役社長:宮本昌志、以下「協和キリン」)とMEI Pharma, Inc.(本社:米国サンディエゴ、社長兼 CEO:Daniel Gold、以下「MEI」)は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼデルタ(PI3Kδ)阻害剤であるザンデリシブ*(開発番号:ME-401)について、第2相TIDAL試験のデータに基づき、21 CFR Part 314.500, Subpart H*での迅速承認による製造販売承認申請に向けてFDA(米国食品医薬品局)と会議を行いましたので、その結果とそれを踏まえた今後の見通しについてお知らせいたします。

この会議においてFDAは、ザンデリシブを含むPI3K阻害剤の開発化合物に関して、薬効と安全性を適切に評価するためにはランダム化比較試験が必要であるとの見解を示しました。これを踏まえて、FDAは本剤の第2相TIDAL試験のデータに基づく本剤の申請を推奨せず、現在進行中の第3相COASTAL試験のランダム化比較試験を予定通り実施するよう強調しました。このFDAの推奨に沿って、協和キリンとMEIは、第2相TIDAL試験(単群試験)に基づいてFDAへ承認申請を行う計画を取りやめることとしました。加えてFDAは、本剤の60mgの間歇投与による安全性は妥当と思われるとしながらも、現在の用量および投与レジメンをさらに支持するために、至適用量の検討を継続するよう推奨しました。

MEIのCEO であるDaniel P. Goldは以下のように述べています。「単群試験の結果に基づいたPI3K阻害剤のリスクベネフィット評価に関するFDAのスタンスは、最近になって変化しつつあります。実際にFDAは、2022年4月21日に予定されているODAC (Oncology Drug Advisory Committee) において、PI3K阻害剤全般の有効性と安全性の適切なエビデンスを示すためにランダム化比較試験から得られたデータの提出が必要かどうかを議論する予定です。今回のFDAとの会議の結果は残念なものでしたが、私たちは現在進行中の第3相COASTAL試験に引き続き注力し、ザンデリシブを患者さんにお届けできるよう、ランダム化比較試験から得られたデータに基づいて最も迅速に承認が望める方法を検討していきます。本日の発表は、本剤の開発に対する私たちの信念と、本剤が生み出す新たな臨床的な意義を損なうものではありません。また現在の予測では、MEIは十分な運転資金を確保できており、COASTAL試験の症例登録を2024年に完了できると考えています。」
また、「私たちは協和キリンとのパートナーシップのもと、医師と患者さんに新たな治療選択肢としてザンデリシブの単剤または他剤との併用療法を提供し、重要な医療ニーズを満たすことができるよう、引き続き取り組んでまいります。当社は第2相TIDAL試験の評価を完了し、本剤の臨床的有用性についてさらに理解を深めることができる最終データを本年後半に報告する予定です」と付け加えました。

協和キリンの執行役員 研究開発本部長 鳥居義史は、「FDAとの対話により、PI3K阻害剤に対する規制当局の見解の変化について、理解を深めることができました。この知見をもとに、私たちはCOASTAL試験の推進に注力していきます。グローバルに展開する両社の従業員が患者さんの試験への参加を着実に進めており、私たちに強い推進力を与えてくれています。今後も当社はMEIとともに、治験責任医師、患者さん、患者支援団体と協力し、本剤の開発を継続的に推進していきます。」と述べています。

21 CFR Part 314.500, Subpart Hについて
重篤な疾患、または生命を脅かす疾患に対する、FDAの新薬の迅速承認制度です。
その開発品が重篤な疾患または生命を脅かす疾患、またはその状態の治療を目的としていて、既存の治療と比較して意味のある治療上の利益をもたらす場合、この迅速承認制度の対象となる可能性があります。この制度のもとでは、
  • 対象となる開発品の臨床的な有用性を合理的に予測し得る代替エンドポイント
もしくは
  • 回復不能な状態となる頻度や死亡率といった指標より早く測定が可能で、かつそれらの臨床的な有用性を合理的に予測し得る臨床エンドポイント
に対する効果を立証可能な、適切かつ十分に管理された臨床試験の結果に基づき、開発品の承認を取得することが可能です。FDAはこれらの予測される臨床的有用性を検証するために、承認条件として、迅速承認を受けたスポンサーに対して適切かつ十分に管理された市販後臨床試験の実施を要求することがあります。

本制度に基づき、他のPI3K阻害剤について、FDAはこれまでに再発または難治性の濾胞性リンパ腫(FL)および辺縁帯リンパ腫(MZL)を対象とした迅速承認を与えてきました。これらの承認は、承認後にランダム化比較データを含む検証的な第3相臨床試験を実施することを前提に付与されています。一般に、FDAはランダム化比較試験を優先するとしていますが、今回の会議で初めて、第2相TIDAL試験のような単群試験のデータでは本制度に基づく有用性とリスクの評価には不十分であり、迅速承認の可能性を裏付けるにはランダム化比較試験が必要である、との見解が協和キリンとMEIに通達されました。

ザンデリシブ(zandelisib, ME-401)について

本剤は選択的PI3Kδ阻害剤であり、B細胞悪性腫瘍症例を対象に、1日1回投与の経口治療薬として開発されています。臨床試験では、B細胞悪性腫瘍症例の治療において、単剤および他の治療法との併用で、間歇投与療法(IDT)を用いて本剤の有効性と安全性を検討しています。IDTは本剤に特有の分子的・生物学的特性を活用するものです。

2021年11月、MEIは少なくとも2回以上の全身療法歴のあるFL症例を対象に、本剤を単剤で評価する第2相TIDAL試験(NCT03768505別ウィンドウで開きます)のデータを発表しました(プレスリリース)。本剤は主要評価項目の解析対象集団(n=91)において、独立評価委員会(IRC)の評価で70.3%の客観的奏効率(ORR)を示しました。また、35.2%が完全奏効を達成しました。なおデータカットオフ時点では、奏効期間(DOR)を正確に推定するためのデータは十分には蓄積されていませんが、以前に報告した第 1b 相試験のデータと同様、本剤は概ね良好な忍容性を示しました。濾胞性リンパ腫の試験対象集団(n=121)の追跡期間中央値は9.4カ月(範囲:0.8~24)であり、中間データでは薬剤関連有害事象による投与中止率が9.9%でした。本試験の登録症例は、安全性とDORを確認するために、引き続き追跡調査が行われます。

現在進行中のザンデリシブの主な試験としては、TIDAL試験(NCT03768505別ウィンドウで開きます)を実施中です。再発または難治性のMZL症例を評価するコホートと、再発または難治性のFL症例を評価するコホートがあり、後者は現在フォローアップ期間中です。また、抗CD20抗体と化学療法またはレナリドミドの併用療法を含む前治療歴が少なくとも1回ある、再発および難治性のFLまたはMZL患者を対象に、ザンデリシブとリツキシマブを標準治療の化学療法とリツキシマブの併用療法と比較する第3相COASTAL試験(NCT04745832別ウィンドウで開きます)が現在進行中です。COASTAL試験は、米国および世界各国での薬事承認申請をサポートすることを目的としています。

その他の進行中の試験としては、協和キリンが日本で実施している低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫(小リンパ球性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、ワルデンストレームマクログロブリン血症を除く)を対象とした第2相試験(NCT04533581別ウィンドウで開きます)があります。

2020年3月、FDA(米国食品医薬品局)より、少なくとも2回以上の全身治療歴のある再発または難治性のFL症例に対する治療薬として、本剤が米国でファスト・トラックに指定されました。さらに2021年11月、FDAより、FL症例の治療薬として、本剤が米国で希少疾病用医薬品に指定されました。

2018年11月、協和発酵キリン(当時)は本剤の日本国内における独占的な開発及び販売に関するライセンス契約を締結しました。さらに2020年4月、MEIと協和キリンは、本剤をグローバルに開発、販売することを目的に、本剤のグローバルライセンス、開発、販売に関する契約を締結しました。MEIと協和キリンは米国で本剤の共同開発および共同プロモーションを行い、MEIは米国での販売によるすべての収益を計上します。協和キリンは米国外での独占的な販売権を有しています。

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