People & Culture 【解説記事】LGBTQについて考える。問題と取り組みとは

LGBTQについて考える。問題と取り組みとは LGBTQについて考える。問題と取り組みとは

少しずつ理解が深まってきているとはいえ、国内のLGBTQへの理解は十分ではない。ヨーロッパなどの諸外国と比べると、法的整備も進んでいないのが現状だ。メディアなどで、LGBTQへの差別の問題などもよく取り上げられるようになってきたが、実際のところどうか。

この記事では、LGBTQとは何か、LGBTQを取り巻く問題は何か、問題に対して国内ではどのような取り組みが行われてきたかを紹介する。

LGBTQとは?

LGBTQは、性的少数者(セクシャルマイノリティ)を表す言葉である。

Lesbian(レズビアン)、Gay(ゲイ)、Bisexual(バイセクシャル)といわれる性的指向、Transgender(トランスジェンダー)といわれる性自認、Questioning(クエスチョニング)の頭文字をとった言葉だ。

LGBTQではなく、LGBTと表現されることもある。ここでの「Q」は、自身の心の性がわからない、あるいは意図して決めていない「クエスチョニング」。あるいは、性的少数者の総称として使われる「Queer(クィア)」の意味が反映されることもある。

LGBの示す性的指向とは、どのような性別の人に対して恋愛や性愛を抱くかということ。そして、TやTQの示す性自認は、相手の性別ではなく、自分自身の性別への認識であり、心の性別はどうかという自身の性の捉え方だ。

Sexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字をとって、SOGIと表現されることもある。LGBTQのうち、LGBTの意味を詳しく見ていこう。

レズビアン

レズビアンとは、自分の性を女性と認識している人で、恋愛対象が女性である同性愛者のことを指す。

ゲイ

ゲイとは、自身の性を男性と認識している人で、恋愛対象が男性である同性愛者のことを指す。

バイセクシャル

バイセクシャルとは、恋愛対象が女性にも男性にも向いている両性愛者のことを表す。女性であったり、男性であったり、あるいはどちらでもなかったり、自身の性の認識は関係しない。

トランスジェンダー

身体的な性別が男性、あるいは女性だからといって、心の性別も一致しているとは限らない。トランスジェンダーは、身体の性に違和感をもつ人のことで、身体の性と認識している性(心の性)が一致しない人を指す。

LGBTQを取り巻く問題

LGBTQの認知が広まってきているとはいえ、LGBTQを取り巻く問題は根強く残っている。LGBTQへの理解を深めるためにも、当事者が抱えやすい問題について理解しておこう。

抱えている問題が表面化しにくい

LGBTQとひとくくりに表現されることもあるが、性的指向のマイノリティと、性自認のマイノリティでは、当事者が抱える問題や困難は大きく異なる。特に問題なのは、性的マイノリティの人たちが抱える問題が、当事者以外には見えづらいことだ。

LGBTQ当事者の多くは、家族を含め、自身の性的指向や性自認を周囲に明かしていない。そのために、自分一人で問題を抱えてこんでしまい、家族や友人にも頼れないことがある。
また、職場やLGBTQの相談窓口に相談しようと思っても、受け取る相手の理解が得られない可能性もあり、相談するにも心理的な障壁がともなう。

LGBTQの当事者にしかわからない問題があって、それがなかなか表面化しにくいことが問題のひとつだ。

カミングアウトの難しさ

性的マイノリティというだけで、ハラスメントの被害に遭いやすい。そのため、ハラスメントをはじめ、差別や職場で被る不利益などの可能性から、当事者は周囲にカミングアウトしないケースが多い。

カミングアウトしないということは、自身の性的指向や性自認を偽って生活する、あるいは隠して生活するということである。LGBTQ当事者は、自身の性的指向や性自認を偽って生活することにより、日常的にストレスを感じている。

カミングアウトすると不利益を被る可能性があるが、カミングアウトしないことも、当事者にとっては生きづらさにつながるのだ。
性的マイノリティであることを隠して生活する場合、周囲の人に対して本音で話しにくくなる。職場でもプライベートな会話をするのが難しくなるため、人間関係が築きにくかったり、孤立しやすくなったりもする。

また、カミングアウトのタイミングも難しい。本来なら、当事者の思うタイミングでカミングアウトするのが望ましいが、意図せずカミングアウトさせられるようなケースもあるからだ。心理的な負担のある繊細な問題といえる。

トランスジェンダーの抱える問題

トランスジェンダー は性別や見た目、書類上の性別と自認する性別とが違うことで、さまざまな問題が起こりやすい。

たとえば、職場環境や慣行である。自認する性別のようにふるまいたくても、職場の慣行により、自身の心の性を偽って行動するよう求められることもある。例として、服装や健康診断に関する規定、性別の取扱いなどである。

書類上の性別に関するトラブルでは、例として、戸籍上の性別が変更されていないことで、差別につながるケースがある。いくら書類上では変更していても、変更前の性別が知れ渡り不利益を被る可能性もゼロでない。

ほかにも、トランスジェンダーに関してはトイレや更衣室の問題もある。自認する性別のトイレが使えなかったり、トイレを使わないよう我慢して体調を崩したりすることなどがある。

このように、性的マイノリティの中でも、トランスジェンダーの抱える問題は、日常生活においてさまざまな支障をきたす。周囲の理解を得られないと、問題を取り除くことは難しい。

国や自治体での取り組み

LGBTQを取り巻く問題を困難にしているのが、LGBTQに対する周囲の理解である。多くの人がLGBTQの問題について認識し、性的マイノリティというだけで生きづらさを感じないよう、行政も主導してLGBTQの問題についての取り組みを実施するようになった。

ここでは、国や自治体の取り組みを紹介する。

パートナーシップ制度

2015年頃から増えているのが、自治体によるパートナーシップ制度の実施だ。2020年(令和2年)3月の時点で、全国34の自治体が独自に制度を整備してきた。

パートナーシップ制度の定義はさまざまだ。たとえば、千葉市では、人生のパートナーとして共同生活を送る2人であって、同等の権利をもち、互いに協力し、責任をもって生活する合意に基づくパートナーと位置付けている。
なお、千葉市のパートナーシップ制度は、LGBTQに限定しているわけではない。同性、異性問わず、家族のあり方は多様化していることと、意図しないLGBTQのカミングアウトを防ぐためだ。

このように、さまざまな家族のあり方が社会で認識され、認められるように、パートナーシップ制度を実施する自治体が増えている。

女性の活躍推進のための開発戦略

日本政府は、2016年に「女性の活躍推進のための開発戦略」を発表した。
この政策は、脆弱な立場に置かれる女性や女児の権利を尊重し、個人が能力を発揮できる環境を整備して、政治や経済など、さまざまな分野へ参入できる社会を目指すための取り組みだ。

取り組みのきっかけは、2015年の国連サミットで採択された、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )である。SDGsの目標の中には、「ジェンダー平等を実現しよう」があり、当戦略にも深く関係している。

SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」については、以下の記事で詳しく紹介している。

まとめ

国や自治体の働きかけなどもあり、LGBTQを取り巻く問題は少しずつ社会で認知されてきている。行政に限らず、企業でもLGBTQの問題やジェンダー平等を意識した施策がとられるようになってきた。
協和キリン株式会社でも、女性の活躍推進や公正な採用など、CSV経営をとおして「Diversity&Inclusion(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進」の取り組みを行っている。

協和キリンの「People & Culture」についてもっと知る

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