People & Culture【CSV担当者対談】キリングループのCSV戦略 グループシナジーで健康に貢献する

持続可能な開発目標(SDGs)の目標年は2030年。残り9年となった今、一部の目標は達成に近づいているものの全体の進捗は思わしくないと、国連が指摘している。世界中のさまざまな企業や団体、個人が、行動を加速させているところだ。

キリンホールディングス株式会社は、SDGsの取り組みが評価されている日本企業のひとつだ。日本経済新聞社による「SDGs経営」総合ランキングでは、最高位である「★★★★★」(偏差値70以上)に2年連続でランクイン。2013年から「CSV経営」を掲げ、社会と共有する価値の創造を目指してきた。今回は、キリンホールディングス株式会社と、グループ企業である協和キリン株式会社のCSV担当者が対談を実施。2人が共有するのは「生(いのち)」への尊厳を大切にする想いをベースに、グループシナジーでCSV経営の実現を目指す姿勢だ。

  • CSV経営:Creating Shared Valueの略。社会課題への取り組みにより「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」を両立させること。

対談者プロフィール

石山 薫子(いしやま かおるこ)
キリンホールディングス株式会社 CSV戦略部

キリンビール株式会社入社後、外食事業開発部、営業部(ワイン担当)にて酒類関連業務に携わる。産休・育休後はお客様相談室で酒類全般のお客様対応や、お客様の声を社内に届け商品やサービスに活かす業務を担当。2013年よりCSV戦略部。復興支援活動やCSVの社内浸透等を担当後、現在は、主にCSVの社外コミュニケーションを担当。

太田 貴之(おおた たかゆき)
協和キリン株式会社 CSR推進部企画推進グループ

1998年キリンビール株式会社(医薬事業本部、現:協和キリン株式会社)に研究員として入社。抗がん剤、造血幹細胞増幅に関する研究に従事し、米国での感染症研究も経験。2015年よりCSR推進部にてリスクマネジメント業務を担い、現在はCSV経営に関連する業務も担当。

キリングループのCSV経営戦略に4つの社会課題

太田 貴之(以下、太田)キリングループが重点的に取り組む4つの課題「酒類メーカーとしての責任」「健康」「地域社会・コミュニティ」「環境」は、経営戦略にしっかりと位置づけられていますね。

石山 薫子(以下、石山)はい。2017年に発表した長期経営構想「キリン グループ・ビジョン2027(KV2027)」で、グループ・マテリアリティ・マトリクスを策定し、特に4つの課題を重点課題として位置づけ「CSVパーパス」として整理しました。そして、それを事業会社のアクションプランに落とし込み、SDGsとの関連性も示しました。

画像:キリンホールディングス株式会社 石山 薫子

太田4つの課題を、石山さんはどのように捉えていますか?

石山「酒類メーカーとしての責任」は、アルコールの製造・販売に携わる事業を有する企業グループとして、すべての前提となる課題です。私自身、酒類事業に従事してきた経験があるので、お酒の正しい知識を得たうえでお酒を楽しんでいただくためにも、適正飲酒を啓発していくことは非常に大切だと感じています。「環境」は、農産物など自然の恵みを使うキリングループにとって、不可欠の分野。私たちは社会に先駆けて環境問題に取り組んできましたが、菅内閣の脱炭素社会宣言にもあるように「先延ばしできない課題」として社会から認識されるようになっています。また、新型コロナウイルスの感染拡大で人との接触が制限されたこともあり、「コミュニティ」の大切さが見直されています。飲み物を手に集い語り合う笑顔のあるシーンに代表されるように、人々が幸せな時間を共有する機会を作るお手伝いをするのは、ビール会社を出発点とするキリングループらしい貢献ではないでしょうか。そして「健康」は、協和キリンと連携して、今まで以上に力を入れていきたい分野です。昨今の新型コロナウイルスに関しても先が見えない状況下で、健康に対する皆さんの意識がますます高まっていると感じています。

画像:CSVパーパスの図(出典:https://www.kirinholdings.co.jp/csv/purpose/別ウィンドウで開きます

太田そうですね。健康意識の高まりの中で、キリングループとして、また、我々製薬会社が社会の期待や要請に対して何ができるのか、改めて考えますね。協和キリンは製薬会社としてこれからもCSVコミットメントの「健康」に強く貢献していきますが、画期的な医薬品を患者さんにお届けするのはもちろん、我々の経験や知識を活かして「医薬品にとどまらない新しい価値の提供」についても社内で議論しているところです。

石山「医薬品にとどまらない新しい価値の提供」とは、どういうことでしょう?

太田健康を支えるアプリを作って治療がうまく継続できるような仕組みを作ったり、まだ知られていない病気の存在を社会にうまく伝えたりすることも、医薬品そのものとは別の観点での価値の提供になると思います。また、個人的に興味があるのは、スマートフォンなどを活用して、日常的に楽しみながら病気や老化の予防ができるアプリケーションの提供などです。いずれにしても重要なのは、患者さんとそのご家族や医療従事者の満たされていないニーズを見出し、医薬品という枠に限定せずに視野を広く持って、それを解決するためのあらゆる方法を模索することであると考えています。

協和キリンが今年発表した2021年中期経営計画では、戦略のひとつとして「患者さんを中心においた医療ニーズへの対応」を掲げています。患者さんのために何ができるかという発想の立脚点を一層高いレベルで従業員一人ひとりが意識・議論し、患者さんが「生活が劇的に良くなった」と感じて笑顔になっていただけるような価値(これを我々は「Life-changingな価値」と呼んでいます)を、一つでも多く提供していきたいです。医薬品にとどまらない価値の提供については、キリングループのシナジーが大いに活かせると考えています。

画像:協和キリン株式会社 太田 貴之

すべての人に笑顔を 協和キリンとSDGs

石山大変興味深いですね。太田さんは、SDGsについてどのように考えていますか?

太田SDGsのいずれの目標も非常に重要ですが、協和キリンと最も密接に関わるのは、目標3「すべての人に健康と福祉を」です。画期的な医薬品の創出を継続的に行い、それを必要としている一人でも多くの方々に広く届けるための活動も進めていきます。

例えば、「骨軟化症」という希少・難治性疾患は、推定患者数と通院患者数に開きがあり、希少疾患であるがゆえに適切な診断や治療を受けられていないケースがあると考えています。骨軟化症に対する啓発活動などを通じて、医療従事者や患者さんとそのご家族にこの疾患について広く知っていただき、適切な治療に繋げていただけるよう、情報発信をするなどの取り組みも積極的に行っていきます。

石山重要な取り組みですね。協和キリンには、社会貢献意識の高い方が多いのではないですか? 私は以前、東日本大震災の復興支援活動として被災地に従業員ボランティアを派遣する復興応援「キリン 絆プロジェクト」のボランティア事務局を担当したことがありますが、協和キリンからの参加者がとても多かったことをよく覚えています。

  • 絆プロジェクト:キリングループが2011年から取り組む、復興支援活動
画像:絆ボランティアでの活動の様子

太田社会に貢献したいとの強い想いで製薬会社に入る人は多いと感じます。私も、研究員をしていた当時「キリン 絆ボランティア」に参加しました。研究員時代は基礎研究を担当していたので、自分の仕事が患者さんや社会の役に立っているという実感を得にくかったこともあり、社会とのつながりを感じたくて参加しました。

しかし、SDGsなどで、グローバルにどのような社会課題があるかを改めて知ると、実際には私たちの事業活動の一つひとつが、様々な社会課題につながっていることに気づかされます。我々の日々の業務が、SDGsの目標達成に関わっているということを社内に伝えることで、自身の業務の中にSDGsやその他の社会課題の解決にもっと貢献できることがないかを、従業員一人ひとりが考えるきっかけになればと思います。

例えばCO2排出量の削減はもちろん、医薬品製造ではその製造工程で水を多く使うので、水資源の保全の取り組みも重要です。プラスチック削減も社会的関心が高いので、医薬品の品質や使いやすさを保った上で、できることを計画的に進めていきたいです。他にも、ジェンダー平等の推進や、サプライチェーンでの人権尊重なども無視できません。

石山太田さんが挙げてくださったどの課題にも共感します。本当にその通りですね。改めて、キリングループ各社で働く人が同じ方向を向いていると感じました。キリングループは健康分野を強化する戦略を打ち出していますので、独自の技術を持つ協和キリンによるCSV推進は心強いですし、事業を通じた様々な課題にも目を向けられていることが頼もしいです。

「生命」を大切にする思いをベースにグループシナジーを

太田キリングループ全体として、CSV経営を推進する核には何があるとお考えですか?

石山キリンビールは、約130年前、ビールの製造から始まった会社です。ビールは、ご存じの通り、酵母という微生物の力を使って発酵させる飲み物。自然の力で造られています。そこで、大切に受け継がれてきたのが「生への畏敬」という醸造哲学です。すべての事業のベースには、生命を畏れ、敬う姿勢があるのだと思います。

太田生命に対する思いは、協和キリンも強く持っています。当社の前身である協和発酵工業もキリンファーマも、発酵バイオ技術を活かしたバイオ医薬品研究に取り組んできた会社です。バイオ医薬品は、人間の体内にある酵素やホルモン、抗体などを応用し、生物の細胞を利用して作られる医薬品ですので、自然のメカニズムを応用して作るという点で、通じるところがあるように思いますね。

また、2008年の協和キリン設立前に作った「私たちの志」には、「いのちにまっすぐ真摯に向き合い、いのちと歩み続ける」という製薬会社で働く者としての思いが込められています。生命のために何ができるか、従業員一人ひとりが考えて行動することがつながりあって、当社の事業が成り立っているのだと捉えています。

石山今日お話を伺って、今後、グループとしてのシナジーをもっと出していけると感じました。飲料や食品分野でも、発酵バイオの技術力を生かして健康分野に一層貢献できるようになってきています。キリンホールディングス・協和発酵バイオ・協和キリンとグループの知見を結集し、2020年8月に免疫機能の機能性表示食品として日本で初めて届出公表された「プラズマ乳酸菌iMUSEpdfが開きます」もそのひとつです。商品の幅に加えて、販売チャネルも多様になってきました。研究を商品につなげてお客様に届けていくこと、是非、協和キリンさんと協力し実現していきたいです。

太田健康課題の解決に少しでも貢献できるよう、今後一層の連携を深めていきたいですね。変化が激しい今、社会からの要請は常に変化していきます。私たちに何が期待されているのかをしっかりと捉えて、「患者さんの笑顔のために」何ができるかを追求したい。その思いを新たにしました。

まとめ

事業を通じて社会と共有する価値を創造するキリングループ。多様な強みを持ったグループ各社のシナジーで、これからも一層、取り組みを加速させていく。

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