社会との共有価値 【解説記事】廃プラスチックのリサイクル方法│資源を循環させる企業の取り組み

環境問題に対する取り組みのひとつに、廃プラスチックのリサイクルがある。SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標14とも関連のある取り組みだ。この記事では、廃プラスチックとは具体的に何を指すのか、どのような方法で廃プラスチックのリサイクルが行われているのか、企業の取り組みも合わせて紹介していく。

廃プラスチックとは

廃プラスチックはコストの問題やリサイクルの難易度が高いことから、有効利用率が低い。

また、廃プラスチックによる海洋の環境汚染も近年世界的な課題となっている。海洋プラスチックとは、廃プラスチックが河川や水域などを通って海に流出したり、直接海に排出されたりするものを指す。

このような廃プラスチックの問題は、プラスチックが短期的に浸透し、さまざまな恩恵を与えてくれる中で負の側面として生じた。日本においては、他国と比べてとくに有効利用率が低く、ひとりあたりの容器包装量が世界で2番目に多いこと、未利用の廃プラスチックが多いことが課題となっている。

出典:プラスチック資源循環戦略 |外務省pdfが開きます

加えて、アジア各国においては、輸入規制が拡大してきている状況だ。国内資源循環が求められていることから、廃プラスチック問題に対するより一層の取り組みが重要視されている。

廃プラスチックとSDGsとの関係性

国際的な課題となっている廃プラスチックは、SDGsとも関連が深い。SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された2030アジェンダに記載された、2030年までに達成を目指す国際目標をいう。

SDGsは全部で17の目標で構成されており、そのうち廃プラスチックとの関連が深いのが目標14の「海の豊かさを守ろう」だ。

目標14では7つの達成目標と、3つの実現のための方法が示されている。廃プラスチックに関わるのは14-1の達成目標だ。

14-1では、「2025年までに海洋ごみや富栄養化のような特に陸上での人の活動による汚染を含め、あらゆる海洋汚染を防止し大幅に削減すること」を目標としている。富栄養化とはリンや窒素など、海の生き物が栄養とする成分が増えすぎてしまうことをいう。

廃プラスチックの3つのリサイクル方法

廃プラスチックの排出を抑えるために、リサイクルによる有効利用が進められている。廃プラスチックの有効利用を支えるのが、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つだ。

マテリアルリサイクル

マテリアルリサイクルとは、廃プラスチックを再びプラスチックとして再生利用することをいう。1970年代に誕生した技術で、汚れや異物の少なさやまとまった量を確保できることから、産業系の廃プラスチックが従来から再生利用されてきた。

容器包装リサイクル法の施行もあり、現在では、産業系の廃プラスチックだけでなく、家庭や店舗などから排出される一般系もマテリアルリサイクルで再生利用されている。

一般系の廃プラスチックとして近年行われるようになったのが、ペットボトルの再生利用だ。従来は、においや衛生面の問題もあり再生利用はされてこなかったが、化学的方法で解決できるようになった。

市町村で分別回収されたペットボトルは、事業者が洗浄や分離などを行うことでフレークやペレット化され、ペットボトルやそのほかのプラスチック製品として再生利用されている。

ケミカルリサイクル

ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学原料として再生利用する方法をいう。具体的な方法として挙げられるのが、モノマー化、高炉還元剤化、コークス炉化学原料化、ガス化、油化である。

原料・モノマー化とは、化学的分解により、廃プラスチックを原料やモノマーなどに戻すことをいう。原料化されたプラスチックは、繊維やシート、飲料用ペットボトルなどに利用可能だ。

高炉還元剤としての利用は製鉄所などで用いられている。コークスの代わりに石油を主原料としたプラスチックを使用することだ。酸素を還元し、銑鉄の生産をサポートする。

コークス炉化学原料化は、プラスチックをコークス炉に投入し、高炉で使用するコークス、化学原料となる炭化水素油、発電などに使用するコークス炉ガスに分離することをいう。

ガス化はプラスチックを炭化水素や水素などに変換して取り出すこと、油化は燃料に戻すことで、サーマルリサイクルとも共通する部分になる。

サーマルリサイクル

サーマルリサイクルとは、ごみ焼却熱利用や発電、セメント原・燃料化、RPFやRDFなどの固形燃料化により、エネルギーとして再生利用することをいう。

サーマルリサイクルに回される廃プラスチックは、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに適さないものだ。焼却炉で燃やすことで発生するガスや熱をエネルギーとして回収する。

なお、廃プラスチックは焼却時のエネルギーも発電などに有効利用できる。特に、ポリスチレン・ポリエチレン・ポリプロビレンなどのプラスチックは発熱量が高く、石油などの燃料と比べても引けを取らない。

プラスチックは焼却炉において、貴重なエネルギー源として認識されており、その有効活用が進められている。

廃プラスチックリサイクルへの企業の取り組み

廃プラスチックの問題に対処するには、まず廃プラスチックを出さないこと、次に排出された廃プラスチックを再生利用することが重要だとされている。

このような廃プラスチックの問題については、さまざまな企業が取り組みを行ってきた。ここでは、廃プラスチックのリサイクルに取り組む企業の事例をいくつか紹介する。

株式会社シード

株式会社シードは、ハードやソフト、使い捨てなどさまざまなコンタクトレンズを製造・販売しているメーカーである。

2019年より、使い捨てコンタクトレンズの空ケースを回収しリサイクルする「BLUE SEED PROJECT」をスタートさせた。

株式会社シードでは、シードのコンタクトレンズに限らず、すべての使い捨てコンタクトレンズの空ケースを回収の対象としている。同社は、眼科やコンタクトレンズ販売店、取引先企業などを含め、382の施設(2022年9月27日時点)で回収ボックスを設置して、回収しやすい環境を整備した。

さらに、回収したコンタクトレンズの空ケースは、ヴェオリア・ジャパン株式会社が購入し、プラスチックパレットにリサイクルされる仕組みだ。生まれ変わったプラスチックは、物流関係会社やパレット製造会社に販売される。

さらに、再利用のプラスチックの収益を一般社団法人JEAN(海洋問題解決に向けた活動を行う団体)に寄付しているのも同社の特徴だ。このように、株式会社シードでは、再利用から収益の利用まで、廃プラスチックと海洋ごみの解決に向けた取り組みに注力している。

イオン株式会社

イオン株式会社では、店頭で、紙パックや食品トレー、アルミ缶、ペットボトル、古紙、ダンボールなどの回収に取り組んでいる。古紙・ペットボトル回収機は2020年5月までに全国390か所、寄付参加型ペットボトル回収機は2021年11月までにビオセボン3店舗に導入が行われた。

回収された資源は、再生工場へと運搬され、さまざまなものへ再利用されている。例えば、回収されたペットボトルは再生化学繊維、食品トレーは再生トレーなどとして再生利用されてきた。同社は、店頭での回収と再利用の取り組みにより、二酸化炭素の排出削減に貢献している。

まとめ

廃プラスチックや海洋ごみの問題を改善していくには、個々人が意識をもって行動していくことが大切だ。消費者からプラスチックを回収してリサイクルに回す取り組みを行っている企業もあるので、積極的に回収に参加するのも良いだろう。

協和キリン株式会社では、社会課題に対する取り組みによる企業価値の向上に向けCSV経営を実践している。

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