社会との共有価値高品質な医薬品を世界中の患者さんへ

本記事は協和キリンアニュアルレポート2021より再構成したものです。アニュアルレポートはこちら別ウィンドウで開きます

確かな品質の医薬品を安定的に供給すること、これが製薬企業にとって何よりも大切なことです。
これを実現し、維持するには、各ファンクションが適切に業務を遂行することに加え、従業員一人ひとりが「患者さんの笑顔を作り続けること」に対して責任感を持つことが非常に重要だと考えています。

世界に向けて高品質な医薬品を

協和キリンは群馬県高崎市と山口県宇部市の2か所に基幹生産拠点を有しています。高崎地区は主にバイオ医薬品を扱う拠点であり、生産技術開発と承認申請業務を行う「バイオ生産技術研究所」と治験薬および上市品の原薬製造と製剤化を行う「高崎工場」があります。隣接するメリットを活かし、お互いに協力しながら、世界屈指のバイオ医薬品研究・製造拠点として全員が一丸となって業務に取り組んでいます。

バイオ生産技術研究所

バイオ医薬品に関する原薬研究、製剤研究、分析研究を行い、高品質なバイオ医薬品生産技術を支えています。

「原薬研究」では、最先端のプロセスサイエンスに基づき、遺伝子組み換え技術を応用することで、医薬品候補を生み出す遺伝子を安定的に細胞に導入し、培養・精製法を確立します。そして、それをスケールアップすることで、品質、安全性、有効性、経済性に優れた原薬製造につなげます。バイオ医薬品は、用いる生産細胞の目的たんぱく質分泌能力が高いほど生産性が高く、製造コスト低減の可能性が高いことが知られていますが、協和キリンの生産性は世界トップレベルだと自負しています。

「製剤研究」では、医薬品候補となった原薬を、患者さんに安心して使用していただけるように製剤化します。さまざまな特性を有する原薬の安定性評価を行い、処方や製品化に向けたスケールアップ検討などを行います。また、すでに上市された薬剤に関し、バイアル製剤のプレフィルドシリンジ化や通院を必要としない自動投与デバイスの開発など、より使いやすい製剤とするための新剤形開発も行っています。

「分析研究」では、医薬品候補の特性解析や安定性試験等に用いる分析方法を確立し、それらの評価を行って品質規格を設定します。

バイオ医薬品の生産に必要な「創る」「見る」「保つ」「磨く」 の4つの技術要素に最先端技術を組み合わせ、協和キリンのバ イオ医薬品生産を支えています。

高崎工場

治験薬と製品の製造ラインを有し、国際基準であるGMP(Good Manufacturing Practice/ 医薬品の製造管理および品質管理の基準)に適合した、最先端のバイオ医薬品生産工場です。製造部門と品質部門が緊密に連携し、原材料から製造工程、試験検査、最終的な出荷判定に至るまで、さまざまな確認作業を経て、患者さんが安心して使用できる高品質な医薬品を製造し、世界中に送り出しています。

バイオ医薬品の原薬は、動物細胞や微生物の遺伝子組み換え体を、1万リットルの容量を持つ大型タンク(リアクター)により大量培養することで生産しますが、ラボスケールでの生産性を大型スケールで維持することは容易ではありません。高崎工場では、隣接するバイオ生産技術研究所との密な連携により的確かつスムーズな技術移管を行い、高い生産性を維持しながら大規模商用生産プロセスを構築し、安定的に生産できる体制が整っています。これは、これまで多くのバイオ医薬品を製造してきた高い経験値と、そこから醸成された最先端の技術力があってこそ実現できることだと考えています。

現在高崎地区では、複数の設備投資プロジェクトが進行しています。その中で最も大きなプロジェクトが、総投資額140億円を見込む7階建て新品質棟の建設です。これまで高崎地区内に分散していた品質管理・品質保証の機能をここに集約することで、業務の効率化とコミュニケーションの促進を図り、正確でスピード感のある業務遂行を目指します。将来のレギュレーション変更を意識した最先端の分析機器類も導入し、高品質なバイオ医薬品の安定供給に貢献してまいります。

新品質棟 外観完成予想図
バイオ医薬品の原薬生産設備

「CMC研究センターは、主に低分子医薬品の製剤設計、治験薬製造、試験法開発、商業生産へのスケールアップ検討や製造現場への技術移転など、開発初期から上市後までの幅広い業務を担っています。私はいつも、1日でも早く新薬を患者さんに届けたいという気持ちと同じくらい、安心安全で高品質な薬を安定して供給するために今自分ができることは何かを意識しています。判断に迷うときは患者さんのためになることを第一に考え、患者さんの笑顔のために、自分自身も笑顔を忘れず、誠実に業務に取り組みます。」

秋山 鮎子
協和キリン株式会社
CMC研究センター 分析2グループ

強固なチームワークで安定供給を支える

安定供給にとって最も大切なことは、工場の安定稼働と精緻な需要予測です。協和キリンでは、工場稼働率の最適化を目指したIT/デジタルや人材への投資に加え、サプライチェーンマネジメント(SCM)にも力を入れています。Crysvitaを中心とするグローバル戦略品の販売国が着々と増え、海外売上も毎年増加していますが、これに伴い、製造拠点や物流拠点など委託先も含めたプレイヤーが増加し、サプライチェーンがますます複雑化しています。SCM部門は、協和キリンの医薬品を必要とする患者さんに必要な時に必要なだけ確実に届けるため、この複雑な状況を的確に把握・コントロールする役割を担っています。

サプライチェーンの最適化を進め、製品を安定的に患者さんのもとへ届ける

サプライチェーンを最適化するには、IT/デジタル技術や組織体制などが整備されていることも大事ですが、社内外のステークホルダーとの連携・チームワークが非常に重要です。高い精度で需給バランスをコントロールし、安定供給を実現するため、SCM部門がコーディネート役となり、内部では特に品質部門・生産部門・販売部門と、また、外部では製造委託会社や物流会社などとの強力なパートナーシップを構築します。同時に、S&OPの取り組みをさらに進化させることで、マネジメントによる迅速な意思決定をサポートするとともに、在庫水準の適正化にも貢献します。さらに、BCP(Business Continuity Plan/事業継続計画)の観点から、昨今の新型コロナウイルス感染症によるパンデミックや自然災害などといった供給リスク発生時においても安定供給を継続するため、グローバル戦略品をはじめとする製品の製造・保管拠点複数化の検討も進めています。

  • Sales and Operations Planningの略。販売部門と生産・オペレーション部門の間で、計画・実績を数量と金額の両面で確認し、会社にとって最適な計画に合意する仕組みのことで、意思決定の精度とスピードを高め、財務目標の達成を促進します。

「当社は急速に変化する環境の中で成長しています。協和キリンのグローバルな展望に見合った社内チーム・人材開発能力を構築することによって、引き続き、当社の製品、人材、プロセスの価値向上を牽引していきます。他の地域とも協力しながら、どうすれば継続的に供給能力を改善し、新たな領域に進出できるか、それを理解することが私たちの日々の活動の中心にあります。世界中で、病気と向き合う人々をより多く笑顔にしていきます。」

Emily Newlands
Supply Chain Manager, Rare Disease
Business Unit
Kyowa Kirin International plc

世界水準の品質保証(Quality Assurance/QA)体制を築く

医薬品は人命に直結する製品であり、製薬企業にとって「品質」は従業員一人ひとりの責任です。確かな品質とコンプライアンスなしには、患者さんや医療従事者、各国の規制当局の信頼を得ることはできません。協和キリンのQA部門は、製品・治験薬の生産プロセスに関わるすべての工程が関連法規に準拠して適切に行われていることを確認し、患者さんにお届けする医薬品の品質に問題がないことを保証する役割を担っています。

グローバル戦略品が欧米で発売となり、グローバル化が本格化し始めた2019年以降、私たちは「協和キリングループ品質基本方針」および「2025年に向けたグローバル品質ロードマップ」を策定し、着々とグローバル品質保証体制の強化を進めています。中でも、エンタープライズ/電子品質マネジメントシステム(eQMS)の導入は特に重要な施策であり、2022年に本格稼働する予定にしています。品質保証業務の対象範囲は、逸脱管理、是正・予防措置(CAPA)、教育、文書管理、監査、サプライヤー管理、変更管理など多岐にわたりますが、このシステムの導入により、従来の紙ベースの運用から完全な電子プロセスに移行し、グローバルで一貫した水準をもって各国関連法規の要求を満たすしくみが整います。

グローバル品質保証体制として、協和キリン代表取締役社長、グローバルQAヘッド、グローバル品質マネジメント、グローバル品質システム、グローバル監査・R&D品質、リージョナルQAの下に日本、北米、EMEA、APACが紐づいています。

2021年まではグローバル企業としての基盤固めを中心に取り組んできましたが、今後はさらにオペレーションの改善やトレーニング、クオリティ・カルチャーの醸成を進め、競合他社に優位性を持つ、世界水準の品質保証体制の構築を目指してまいります。

「私たちの使命は、患者さんが必要とする薬が安全で効果があることを保証することです。品質は、私たちの活動すべての中心となります。これこそが、患者さんと協和キリンの間の永続的な信頼関係構築に不可欠となります。私たちの薬は、患者さんだけでなく、その家族や友人の生活の質にも大きなプラスの効果をもたらします。患者さんの笑顔は、私たちを笑顔にします!」

Fatos Bejta
Head of Global Audit and R&D Quality,
Global Quality Assurance
Kyowa Kirin International plc

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