People & Culture 【解説記事】「ジェンダーギャップ指数」とは

「ジェンダーギャップ指数」とは

「ジェンダーギャップ指数」とは、男女格差を数値化したものです。世界経済フォーラムが2006年から毎年発表しており、指数は0~1の数値で評価され、スコアが1であれば完全平等、0だと完全不平等を示しています。そのため、男女格差の少ない国ほど1に近い数値となり、不平等な状況であればあるほど0に近づきます。指数を構成する分野は「経済」「教育」「健康」「政治」の4つで、格差状況を表す数値を「女性÷男性」で計算される値とし、全体の平均値がその国のスコアとなります。各項目は、男女格差が生じやすい分野として考えられており、すべての項目で平等な社会を実現することが目標です。

2024年現在でジェンダーギャップ指数の対象となっている国は146ヶ国です。2024年で最も指数の高い国はアイスランドで0.935というスコアを出しています。地域別にみると欧州の指数が高く、その次に北米が続きます。日本は、スコア0.663で146ヶ国中118位という結果です※1。この結果は非常に低い順位で、アジアの他国と比べても韓国や中国、ASEAN諸国よりも低い状態です。

  1. ※1世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2024」pdfが開きます

【分野別】日本のジェンダーギャップ指数

日本のジェンダーギャップ指数は分野ごとに数値が大きく異なります。教育や健康の数値は高いですが、経済と政治に関する数値が非常に低い数値となっています。以下、「Global Gender Gap Report 2024pdfが開きます※1」P219の日本に関する報告を参考にまとめました。

【教育】0.993(72位)

日本の教育に関する男女格差は、0.993という比較的高い数値です。特に識字率の男女比と中等教育就学率の男女比はスコア1.000で完全平等を達成しており、146ヶ国中1位です。ただし、複数の国が完全平等を達成しているため、1位を獲得しているのは日本だけではありません。

【健康】0.973(58位)

健康に関する男女比を評価した数値は、日本は比較的高い水準です。「Global Gender Gap Report 2024pdfが開きます」によると健康分野の1位のスコアは0.980で、ブラジルやポーランドなど複数の国が該当しています。

【経済】0.568(120位)

経済に関する男女格差の指標では、日本は非常に低い結果となっています。評価基準は生産年齢人口の労働参加率、同一の労働で生じる賃金格差、男女の収入差、管理職の男女比です。日本はいずれの評価基準においても低い水準となっていますが、特に管理職の女性割合が低いことがスコアを下げる原因となっています。

【政治】0.118(113位)

男女が平等に政治へ参加できているかを評価する指標で、日本はこの分野が最も低いスコアとなっています。評価基準は国会議員の女性割合、閣僚の男女比、過去50年に女性首相が在任した期間です。日本は、世界中と比較しても女性議員の割合が少なく、過去に女性首相が誕生したことがないため、低い数値になっています。

ジェンダーギャップ解消に向けた取り組み

日本が特に低評価となっている経済と政治分野について、ジェンダーギャップ解消に向けた取り組みを紹介します。

クオータ制の導入

クオータ制とは、政治や経済分野での男女格差を解消するために、あらかじめ女性または両性の割合を定めておく制度です。政治においてクオータ制を導入すると、女性議員を一定数確保できるようになります。ジェンダーギャップ指数3位のノルウェーはクオータ制の発祥地として有名で、政治だけではなく一般企業においても法制化により導入しています。
その結果、女性の積極的な登用を促すことに成功し、経済分野のジェンダーギャップ解消にもつながりました。日本では政府が2020年12月に「第五次男女共同参画基本計画」を閣議決定し、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性割合を35%とする目標を掲げたものの※2、クオータ制の採用については意見が分かれており、具体的な導入には至っていません。

  1. ※2内閣府男女共同参画局「第五次男女共同参画基本計画」pdfが開きます

男性の積極的な育児休暇取得

ジェンダーギャップ指数1位のアイスランドでは、男性にも最低3ヶ月の育児休暇取得が義務付けられています。この取り組みは2000年に育児休暇法が改定されてから開始されました。目的は、男性の育児休業取得を促すことによって、女性の雇用継続も図り、男女格差を解消することです。以前はアイスランドでも「育児は女性がするもの」という認識が根強かったのですが、男性が育児休暇を取得するようになり、育児への認識が改められ、現在では男女格差の解消につながっています。

まとめ

ジェンダーギャップ指数は「経済」「教育」「健康」「政治」の分野で男女格差を評価し、数値化したものです。日本は総合的に低い水準で、特に政治と経済で男女の差が大きいです。世界経済フォーラムによると、現在のデータに基づくと、完全なジェンダー平等を達成するまでに134年かかります※3。ジェンダーギャップの解消に向け、クオータ制の導入や育児休暇の整備など、各国でさまざまな取り組みを推し進めていく必要があります。

  1. ※1世界経済フォーラム「Global Gender Gap Report 2024」別ウィンドウで開きます

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