社会との共有価値 【解説記事】水力発電の仕組みとメリット・デメリット
現在、日本における発電の主流は火力発電です。しかし、化石燃料を燃やして得られるエネルギーを電力へと変換するこの発電方法は、温室効果ガスを排出するため、環境への負荷が高いことで知られています。そこで注目されるようになったのが、「水力発電」です。建設・補修時以外は二酸化炭素を排出しないため、全体の温室効果ガス排出量が他の発電方方に比べ、少ないといわれています。
水力発電とは
水力発電は、高い場所から低い場所に水が流れる際のエネルギーを利用する発電方法です。水の勢いで発電用のポンプ水車を回し、その回転で発電機を動かして電気をつくります。
主な方式は、水路式(流れ込み式)、調整池式、貯水式、揚水式の4つです。水路式は水路や河川に発電用の水車を設置する方法で、河川などに流れ込む水をそのまま利用します。調整池式、貯水式、揚水式は、いずれもダムや調整池を利用した発電方法です。蓄えられた水を放水するため、需要に合わせて発電量を調整しやすいのが特徴です。
なお、2025年8月時点における電気事業者の発電電力量のうち、水力発電(揚水式含む)は82.6億kWhで、全体の14.2%を占めており、他の発電方式と比べると比較的少ない水準にとどまっています。
水力発電のメリット
水力発電には、大きく4つのメリットがあります。
安定的に供給できる
水力発電では、渇水のリスクを除き、太陽光発電や風力発電のように気象条件によって発電量が大きく左右されることはありません。また、水を貯蓄しておくタイプの水力発電は、短い時間で発電を開始できるため、季節や時間帯で変化する電力需要に応じて調整しやすいのが特徴です。
ほとんど温室効果ガスを排出しない
水力発電は、化石燃料を使用する他の発電方法に比べて、温室効果ガスの排出量が著しく少ないのが特徴です。温室効果ガスの増加は地球温暖化を加速させる原因にもなるため、温室効果ガスをあまり排出しない水力発電は、地球温暖化の抑制につながります。
再生可能エネルギーである
再生可能エネルギーとは、太陽光・風力・地熱・バイオマスといった、温室効果ガスを排出しない再生可能なエネルギーのことです。
水力発電のエネルギー源である水は、河川から海に流れ、蒸発して雲になり、雨となって河川に戻ります。このため、水力発電も再生可能エネルギーに位置づけられています。
純国産のエネルギーを利用できる
日本は、OECD諸国の中でもエネルギー自給率が低水準であり、そのほとんどを、海外から輸入する化石燃料に依存しています。水力発電は、河川などに流れ込む水を利用するため、重要な国産エネルギー源として注目されています。
水力発電のデメリット
水力発電はさまざまなメリットがありますが、良い点ばかりではないのも事実です。ここでは水力発電のデメリットを3つ、挙げていきます。
初期費用が高い
水力発電は、設備投資などにかかる初期費用が他の発電方法と比べて高いです。なぜなら、まず設置の前に河川流況の調査が必要になります。流量調査には最大1年以上が必要とされます。さらに、事業性が確保できないと設置まで至らないため、調査しても設置まで進むとは限りません。調査に時間もお金もかかるため、大規模な水力発電については参入のリスクが高く、新電力会社の新規参入の障壁になっています。
また、ダムを新設したり、水車や発電機などの設備を準備したりする際に多額のコストがかかるのも大きな課題です。
発電量が雨量に影響される
水力発電には、渇水のリスクがあります。渇水とは、降水が少ないなどの理由で河川の流量が減り、ダムの貯水が大幅に減少して、平常時と同じように取水できないことです。
渇水になると、エネルギー源の水が減少、あるいはほとんどなくなるため、水の流れを利用した発電および電力の供給ができなくなってしまいます。
環境や生態系に影響を与える可能性がある
水力発電では、発電時に温室効果ガスをほとんど排出しないとされていますが、特に大規模ダムにおいては以下のような環境への影響が懸念されています。
- ダムを建設する際に周辺の森林を伐採することによる環境破壊
- ダム湖による、自然生態系への影響
- ダムを建設することによる川全体への影響(下流の堆積砂で生活する生物の減少、河川には本来いないプランクトンの増加など)
近年は「中小水力発電」が盛んに
日本の水力発電は明治末期ごろから始まり、昭和初期には全国で大規模なダム建設が進められました。一時期は水力発電が電力の大部分を担うこともありました。しかし、大規模なダムの建設は1960年代以降、急速に減少しました。日本では大規模な施設を建設できる場所が限られていたためです。
近年は、既存のダムの活用に加え、中小規模の水力発電(中小水力発電)の導入が進んでいます。固定価格買い取り制度では3万kW未満の水力発電所が「中小水力」とされており、既存の河川や農業用水、上下水道を利用することで、森林伐採や地形の改変を最小限に抑えられます。そのため、大規模なダムと比べると、森や川、そこに住む生き物などの生態系への影響が小さいです。
中小水力発電はまだ活用されていない場所が多く、環境への負荷が小さいうえに、地域雇用の創出にもつながります。そのため、将来に向けた有力な発電方法の一つとして期待されています。
協和キリンが導入した「アクアプレミアム」
協和キリンでは、2020年に医薬品製造業で初めて「アクアプレミアム」を高崎工場に導入しました。その後、2022年には富士リサーチパークおよびCMC研究センター(いずれも静岡県駿東郡長泉町)にもアクアプレミアムを導入しました。
アクアプレミアムとは、東京電力エナジーパートナー株式会社が提供する、二酸化炭素を排出しない水力発電所の電気のみを供給する国内初の料金プランです。同プランを利用することにより、両施設で使用する購入電力の100%が二酸化炭素を排出しない水力電源由来の電力になっています。
