People & Culture 【解説記事】「人権」「差別」とは

世の中には、人権が脅かされるような、さまざまな差別が存在しています。人権の定義と共に、現代に存在する差別問題と、解決のための取り組みを紹介します。

「人権」とは

人権とは性別や国籍、年齢を問わず、この世に生きるすべての人が持っている、人間らしく生きる権利のことです。人権には、人種・性別・身分などの区別に関係なく(普遍性)、人間であることにより当然に有し(固有性)、原則として公権力に侵されない(不可侵性)という特徴があります。人権は、すべての人があらゆる区別なくまもられるべきものです。しかし、現実にはさまざまな侵害が起きています※1。そうした人権侵害と深くかかわるのが、差別問題です。

  1. ※1朝日新聞SDGs ACTION!「人権とは? 憲法やSDGsとの関連性、身近な人権問題の例を解説」pdfが開きます

差別問題の事例

女性

女性の社会参画は進んでいますが、まだ「男性は仕事、女性は家庭」というような、男女の役割を固定的にとらえる考えが残っています。このような考えなどによって生まれているのが男女差別です。また、女性への職場でのセクシャルハラスメント、妊娠や出産によるマタニティハラスメントなどが社会的な問題となっています。

子ども

いじめ、体罰、児童虐待、性的搾取、いじめなどに起因する自殺などが深刻な人権問題として起きています。

高齢者

高齢であることによる職業差別、介護施設や家庭内での身体的虐待や心理的虐待、高齢者の意思を無視した財産処分が問題として起きています。

障害者

職場での差別的な待遇、車いすを理由にした乗車拒否や入居拒否、サービス拒否などの問題があります。共生社会の実現には至っていないのが現状です。

先住民族の人々

先住民族(日本ではアイヌ民族など)の人々に対しては、現在でも理解不足による就職や結婚の差別が存在しています。近代以降の同化政策により、固有の言葉、伝統的な儀式などの独自の豊かな文化が十分に保存、伝承されてきませんでした。そのため、自身の文化やアイデンティティに誇りを持てずにいる人も多いです。

HIV感染者・ハンセン病患者などへの差別

HIVやハンセン病などの感染症については、今も誤った認識や偏見が存在しています。そのため、今もHIV感染者やハンセン病患者、あるいは元患者や家族に対して、日常生活、学校、職場、医療現場などのあらゆる場所で、差別やプライバシー侵害が起きています。

刑を終えて出所した人

刑を終えて出所した人や家族に対する偏見や差別があり、社会復帰の妨げになっていることがあります。

ホームレス

ホームレスに対する嫌がらせや暴行事件などが社会問題として挙げられるようになっています。ホームレスに対する偏見、差別からの嫌がらせや暴行をなくすためにも、行政などの自立をサポートする取り組み、地域社会の理解と協力が必要です。

LGBTQ+

LGBTQ+への偏見から職場で不当な扱いを受けたり、周囲から好奇な目を向けられたりする人がいます。そのためにカミングアウトしない人も多くいます。

外国人

外国人であることを理由にしたアパートやマンションの入居拒否、職業上の不当な扱い、特定の国籍の人などに対する差別的な言動であるヘイトスピーチなどが問題になっています。

日本固有の問題:部落差別(同和問題)

部落差別(同和問題)は、日本の歴史的な身分制度によって形成されてきた、日本固有の問題です。昭和44年の特別措置法以降、同和地区の劣悪な環境は改善の傾向にありますが、今も結婚や交際、就職などで不当な差別があります。また、差別発言や差別的書き込みも存在します。

差別・人権問題の解決を目指す取り組み

差別をなくすために、近年さまざまな取り組みが実施されています。代表的な取り組みが、「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の目標達成」と「ダイバーシティの推進」です。

SDGsの目標達成に向けた取り組み

2015年の国連サミットで採択されたSDGsは、「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、2030年までに世界が達成すべき17の目標(ゴール)です。すべての目標が人権と関連していますが、特に目標5の「ジェンダー平等を実現しよう」や、目標10の「人や国の不平等をなくそう」は、差別・人権と深く関わる内容になっています。これらの目標達成への取り組みが、差別解消につながっていきます。

ダイバーシティの推進

ダイバーシティはビジネスの世界でも重視されており、世界の流れを受けて日本では、経済産業省が企業に向けてダイバーシティ経営を推奨しています。ダイバーシティ経営とは、年齢、性別、人種、障害の有無、性的指向、価値観、働き方、経験などにとらわれず、多様な人材を活かして、それぞれ能力が最大限に発揮できるような機会を提供する経営を言います。ダイバーシティ経営のメリットは、個々人が特性を活かせることで、企業側は多様な人材によるイノベーション、価値創造、競争力の強化を期待できます。

【協和キリンの取り組み】差別を解消するための取り組み事例

人権への配慮

協和キリンおよびキリングループでは、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠する人権方針を策定しています。そして人権方針の精神を社内で定着させるために、各種研修や施策を実施しています。また、差別問題でも取り上げたように、ハラスメントは重要な人権課題の一つです。ハラスメントをなくすために、啓発研修や相談窓口、内部通報制度を設置するなど、環境整備と風土改善にも努めています。

Diversity, Equity and Inclusionの推進

協和キリンでは、人事部に「HRサポート&ウェルビーイングG」を設置し、社員一人ひとりの能力を最大限引き出し、変革に挑み新しい価値を創造ひとりの能力を最大限引き出し、変革に挑み新しい価値を創造し続ける人と組織をつくるため、制度の充実や環境整備を推進しています。実施されているのは、女性の活躍を進めるための女性社員のエンパワーメント推進、介護や育児と仕事との両立支援、グループ全体での障害者雇用の拡大、国籍などにとらわれない公正な採用などです。2022年には「私たちのDE&I宣言」も策定し、人権や多様な人材の活躍に配慮してプロアクティブに取り組みを行っています。

まとめ

差別問題は、世界的な課題であるのはもちろん、日本国内でもさまざまな差別が存在し、大きな人権課題となっています。差別をなくすためにも、問題に関心をもち、正しい認識をもつこと、政府や企業の取り組みについて、多くの人々が関心を寄せることが大切です。

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