People & Culture 【解説記事】ジェンダーニュートラルとは

ジェンダー問題はSDGsの目標にも組み込まれており、国や文化を超えた大きなテーマです。今回は「ジェンダーニュートラル」とは何か、具体的な取り組み例とともに解説します。

「ジェンダーニュートラル」とは?

ジェンダーニュートラルとは、gender(性別)とneutral(中立)の2語から成り立つ言葉で、言葉のとおり男女の性差にとらわれない中立的な考え方のことを指します。近年まで世の中には男性と女性だけがいることを前提とした考え方・制度・慣習が、幅広く存在していました。また、「女性らしさ」「男性はこうあるべき」という固定観念によって、性的マイノリティだけでなく男性・女性自身にとっても、疎外感や生きづらさを感じる原因となってきました。ジェンダーニュートラルの考え方は、こうした性差の偏りをなくし、あらゆる人々が自分らしく生きられる社会を目指しています。例えば、ジェンダーニュートラルに配慮された商品であれば、性別に関係なく自分の好みに合ったものを選べます。ジェンダーニュートラルとは、単純に性的マイノリティのみに配慮したものではなく、性自認または志向によらず、すべての人へ平等に機会を提供するための概念なのです。

「ジェンダーニュートラル」の取り組み事例

社会全体や企業で、さまざまな取り組みが実施されています。

男女にとらわれない代名詞や名称

私たちが日常的に使う言葉の多くには、性別によって変化するものや性別の固定観念に基づいたものがあります。例えば、英語の「he」「she」や、職業を表す「〇〇man」などが挙げられます。このような男女で分けられた呼称はジェンダーニュートラルの観点から、変化しつつあります。

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従来の代名詞・名称 ジェンダーニュートラルな代名詞・名称
三人称 he/she they
警察官 policeman police officer
飲食店の給仕係 waiter/waitress server
客室乗務員 steward/stewardess flight attendant

上記のほかにも、多くの代名詞・名称で性別にとらわれない呼び方が浸透し始めています。
日本においても、看護婦が看護師へ、保母が保育士へ、女優が俳優へと、さまざまな職業で性別を問わない呼び方が一般化したり、言い換えが進んでいたりします。

「ladies and gentleman」の呼びかけの廃止

劇場や公共交通機関などのアナウンスは、「ladies and gentleman(紳士淑女の皆さま)」から始まるのが定石でした。しかしLGBTQ+の人々をはじめ、男女の2種類に区分されることに違和感を覚える人は少なくありません。そのため現在、飛行機での機内アナウンスは従来の「ladies and gentleman」から「everyone(皆さま)」や「all passengers(乗客の皆さま)」に変更されている場合が多いです。この呼びかけ方は、性自認が男女のいずれにも当てはまらない層を含めた呼びかけとして、ジェンダーニュートラルを実現しています。

性別でターゲットを分類しないファッション・コスメ

これまで化粧は女性のものとされる場合が多かったですが、近年はメンズコスメブランドやジェンダーフリーコスメの浸透もあり、美容アイテムに興味をもつ人は性別問わず多くなっています。そこで、性別問わず多くのユーザーをターゲットに設定したコスメブランドが誕生し、人気を集めています。

「女の子用」「男の子用」で分けないおもちゃ

おもちゃ業界は、ジェンダーニュートラルの観点から変化しています。アメリカの一部の州では、性別で区別しないおもちゃ売り場の設置を義務付けており、各店の裁量によってジェンダーニュートラルな店舗作りが行われています。人形のおもちゃにも、性別の壁を取り払う取り組みが行われています。男性キャラクターの登場や、お母さんキャラクターの衣装からエプロンを取り払うなど、性に基づいた固定観念が生まれないように配慮されています。

性別にとらわれない世界を目指して

個人ができるジェンダーニュートラルの取り組みも、多くあります。まず大事なことは、普段使っている言葉や無意識の行動が、性別の固定観念に基づいていないか疑問を持つことです。例えば周囲の人に対して「男のくせに女々しい」「女のくせに偉そうに」など、性別に紐づけた言葉を使っていませんか? 自分の言動は固定観念に基づいていないか、誰かの性的志向や性自認を攻撃していないか自問しつつ、互いに尊重し合う意識をもつことが重要です。

まとめ

近年、多くの場面でジェンダーニュートラルの取り組みが進んでいます。ジェンダーニュートラルは、性別という概念にとらわれた無意識下での差別をなくすための考え方であり、生物学的な身体的特徴の違いを無視するものではありません。企業や国単位で取り組むものもあれば、個人で実践できる取り組みもあります。ジェンダーニュートラルは個人の尊重にもつながる重要な考え方であり、今後、より重視されていくでしょう。

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