社会との共有価値「買う」に「環境」という基準を。グリーン購入率90%を目指す協和キリンの取り組み【循環型社会】

大量生産、大量消費、そして大量廃棄型の経済システムは、私たちの暮らしに物質的な豊さをもたらしてきた。しかし、今、私たちが直面する気候変動、資源の枯渇、大気や水質汚染などの環境問題は、この経済システムの持続に大きな問いを投げかけている。

持続可能性の高い社会の実現のためには、これまでの“使い捨て”型の社会構造からの脱却が迫られているのだ。この豊かな地球環境を次世代へ繋ぐため、私たちはどのように行動し、選択していくべきだろうか。

今回ご紹介するのは、協和キリン株式会社グループ全体(国内対象)で実践する「グリーン購入」だ。「グリーン購入」とは何か、高い目標を掲げ、それを実施する目的や意義について担当者に聞いた。

話を聞いた従業員

八木 香機(やぎ かおり)
協和キリン株式会社 C S R推進部 環境安全グループ所属

2006年、前身となる協和発酵工業に入社。創薬研究者として、低分子創薬や高分子のDDS(ドラッグデリバリーシステム)研究に携わる。2017年よりC S R推進部環境安全グループに所属。社内の環境マネジメントを統括している。

買う前から「グリーン購入」は始まっている

画像:八木香機

–「グリーン購入」とはどのような取り組みですか。

八木香機(以下、八木)「グリーン購入」とは、実際に購入しようとする商品やサービスの必要性を十分考慮した上で、環境への負荷ができるだけ小さく、環境負荷の低減に努める製造・販売者から優先して購入をすることです。

普段、私たちは、モノやサービスを購入(利用)するとき、製品の「品質」「デザイン」、「機能性」、「価格」などのさまざまな情報から、一定の基準を持って自分にとってベストだと思う選択をしますよね。

「グリーン購入」の主旨を簡潔に言うならば、この、モノやサービスを購入する際の基準の1つに「環境」をおくこと。さらに言えば、消費行動の一つひとつに対し「本当にそれは必要なのか。」という問いを持つことなのです。

八木「グリーン購入」はエネルギー消費の低減や廃棄物の削減に向けた個々人の活動というイメージが強いと思いますが、実はそれだけではありません。

消費者の意識の変化は、モノやサービスをつくり出す側(企業など)にも変化をもたらすからです。「グリーン購入」が広がることで、環境に配慮した市場の拡大や環境型経営の活発化など社会全体に良い循環が波及していくと考えられます。

従業員の皆さんには、業務としてだけではなく一人の人間として、私たちが消費しているモノ・サービスの生産背景を知り、生産者の搾取を助長しない商品を買う、環境負荷の低い商品を買うという行動が、社会問題解決、またSDGsへの貢献に直結することを実感して欲しいと思っています。

–一人ひとりの消費行動が社会を変えるきっかけとなるのですね。

目標は「グリーン購入率」90%以上

–協和キリンで実施している「グリーン購入」について具体的に教えてください。

八木当社では、「グリーン購入法※1」をもとに、国の方針に近いところで、「グリーン購入」を実施しています。

企業のグリーン購入は、何を集計対象にするかを会社独自で決めることができます。当社では、現在グリーン購入率100%がほぼ達成できている項目だけでなく、まだチャレンジの余地がある項目も対象に加えることで、さらなるグリーン購入を啓発し、活動の意義を高めています。

活動を始めた当初に目標として設定したグリーン購入率80%は2010年に達成できましたが、さらに2017年、「ESG投資※2」の浸透をきっかけに活動の見直しを行っています。職場によってばらついていた集計対象をグリーン購入法で定められている21の特定調達分野のうち「紙類」「文具類」「オフィス家具類」の3つの項目※3へ全社統一して、また、マニュアルを策定し、2018年以降はグリーン購入率90%以上を目指して活動を継続しています。

  1. ※1グリーン購入法:国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成13年4月1日施行)。環境負荷の低減に資する物品・役務(環境部品等)について、国等の公的部門における調達の推進や情報の提供を通じて、環境負荷の少ない持続可能な社会の構築を旨とする。
  2. ※2Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する方法。
  3. ※3協和キリンでは3つの項目の購入金額ベースでグリーン購入率を算出している。
画像:社内で「グリーン購入品」の参考にしているサイト

–調達項目を「紙類」「文具類」「オフィス家具類」に限定した理由はあるのですか?

八木「グリーン購入」を国内各社で一体感をもった活動とするため、そして従業員一人ひとりが取り組める活動にするためには、基準を統一し、達成率を「見える化」する必要性があると考えました。

当社のような医薬品製造業では、研究所や工場、営業所、バックオフィスなどさまざまな業務内容が混在しているため、それぞれの役割で、使用する設備や備品にも違いがあります。

その点、「紙類」「文具類」「オフィス家具類」は、従業員の誰もが使用するため、共通した数値を基準にすることができるのです。

もちろん、これらの項目以外にも実施していますが、会社全体が共通した視点で「どのくらい達成できているか」を共有することは、企業として行う環境活動の推進に止まらず、全社で一体感を持った活動になり、また、従業員一人ひとりが自ら行動できる身近な環境活動であると認識でき、結果、一人ひとりの環境意識の向上につながると考えています。

企業人として、一人の人間として。持続可能な社会を次世代に。

–「グリーン購入」の活動に取り組んでみて、印象的な出来事や意識の変化はありましたか?

八木おかげさまで、(物品の調達を担う)調達部をはじめとした多くの従業員がこの活動に賛同し、積極的に協力をしてくれています。

先述した3つの項目以外のものでも、「これを買いたいのだけど、グリーン購入品はありますか?」と問い合わせをもらったり、「実はこれはグリーン調達資材なんですよ」と逆に教えてもらうこともあります。

「グリーン購入」が従業員一人ひとりの意識に自然に溶け込んでいる。これも、長期間にわたり「グリーン購入」を推進してきたひとつの成果だと思っています。

私自身もこの活動に取り組んでみて意識に変化がありました。

CSR推進部に異動する以前も、FSC認証を受けた製品を選ぶなど環境に配慮した活動は個人的にも行っていましたが、社内でこの活動を推進するにあたりCO2の削減や太陽光発電に関して調べていくと、実に様々な情報があることが分かりました。そこで得た事実から自分の認識が大きく変わることもあり、「自ら正しい知識を身につける・知ろうとする」ことの重要性に気づきました。これも企業人として、また一人の人間として「今、変わらなければ。」と強く思った出来事でした。

私が経験したように、従業員一人ひとりが、地球環境が置かれている現状を正しく認識し、その上で「グリーン購入」などのSDGsに関わる活動を自ら進んで実践していこうとする流れを感じられることは、とても嬉しいことです。

これからも「グリーン購入」の旗振り役となれるよう、最新の情報などを含め適切な情報発信を心がけていきたいです。

–最後に「グリーン購入」に関して、活動の展望を教えてください。

八木これまでCSR推進部では、協和キリンとして循環型社会の実現のために「今」そして「これから」すべきことは何か、そのための課題は何か、課題解決のための『良識的な(エシカルな)』行動とは何かを考え、さまざまな形で伝えてきました。その1つが「グリーン購入」です。

今後は、ここまで育ててきた「グリーン購入」の輪を、さらに大きくしていきたいと考えています。そのために、環境先進国である欧州のグループ企業の情報なども得ながら、海外も含めグループ全体で協力体制を構築していくことがひとつの目標です。

「グリーン購入」は、一人ひとりが、ほんのちょっとの余裕、そして他者を思いやる行動がSDGsに繋がっていることに気がつく一つの“きっかけ”であると思います。

ひとりでも多くの人が、「グリーン購入」を通じて私たちの未来について考えて欲しいーー。この活動が企業内だけでなく、地域社会にもポジティブな輪として広がっていくよう、これからも活動を続けていきます。

–活動の輪が企業という枠を越え、地域社会に伝播していく。これが本質的なCSRの形なのですね。ありがとうございました。

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