社会との共有価値 【解説記事】サステナブルとSDGsの関係性とは?エシカルやCSR、ESGとの違いも紹介

近年、さまざまなところで「サステナブル」が意識されるようになってきている。SDGsに関連する広告でも、「サステナブル」という言葉を目にしたことはないだろうか。

この記事では、そもそも「サステナブル」とは何か、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )との関連性も含め解説していく。

最近よく目にする「サステナブル」という言葉について

まず、近年よく使われるようになった「サステナブル」とは何か解説する。

「サステナブル」=「持続可能な」

サステナブルとは、”持続可能な”という意味をもつ。サステナブルと同じく、よく使われる「サステナビリティ」は、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の向かう方向と同じく、持続可能な世界にしていこうとする動きの総称だ。

サステナビリティは直訳で「持続可能性」、SDGsは直訳で「持続可能な開発目標」であって、SDGsをもっと広い意味でとらえた言葉がサステナブルといえる。

日本でサステナブルが広まった背景

日本で「持続可能な」という意味をもつ「サステナブル」が広まるきっかけとなったのが、2006年の国連の責任投資原則の提唱だ。責任投資原則は、企業の環境・社会・ガバナンス(ESG)課題を、投資家が投資分析や所有方針などに組み入れる原則をいう。

責任投資原則によって、企業の持続可能性を重視したESG投資が急速に拡大していった。

さらに、日本においてより多くの人がサステナブルを意識するようになったのが、2015年の国連サミットである。国際的な社会課題の解決を図り、持続可能な世界を実現するため、SDGs(Sustainable Development Goals)の採択がサミットで行われたためだ。

日本はもちろん世界を巻き込んだSDGsの採択は、投資家に限らず、持続可能を意味する「サステナブル」をさらに多くの人に意識させるきっかけになった。

サステナブルとSDGsの関係性

次に、サステナブルとSDGsの関係について解説する。

サステナビリティを目指す取り組みのひとつがSDGs

まず、SDGsについて理解を深めるため、SDGsが採択された経緯について整理してみよう。

SDGs(持続可能な開発目標)が採択されたのは、2015年9月の「国連持続可能な開発サミット」でのことだ。150を超える各国首脳がサミットに参加し、MDGsを受け継ぐ2030年までの新たな目標としてSDGsが採択された。

MDGsとは、「ミレニアム開発目標」と呼ばれるもので、2000年に国連で採択された国際目標のことである。

MDGsは、多くの子どもが就学の機会を得られるようになったなどの一定の効果はあったものの、中には達成できない目標もあった。

また、平均値は改善したものの、隠れたところで世界の進展に取り残されている子どもがいるなどMDGsではカバーできない部分があったのも事実だ。

これらの、MDGsでは達成できなかった課題、MDGsで含まれていなかった課題、新たに生まれた課題を包括的に捉えるため、SDGsが生まれた。MDGsとの違いは、途上国のみならず、先進国も取り組むべき普遍的な目標とした点である。

17の目標と169のターゲットで構成された国際目標のSDGsは、ユニセフが採択前から重視した公平性のアプローチである”誰ひとり取り残さない”を掲げた。

以上のような経緯で採択され、誰ひとり取り残さない持続可能な社会を目指した国際目標は、持続可能性を示すサステナビリティとも深く関係している。

企業がサステナビリティに取り組む方法のひとつが、まさにSDGsだからだ。SDGs達成に向けた取り組みを企業が行うことで、企業の持続可能性が強化されることになる。

SDGs達成度からみる日本が取り組むべき「サステナブル」

現在、日本のSDGsの達成度は「持続可能な開発レポート2022」で確認することができる。

レポートでは、17の目標すべての現状やSDGs達成度のランキングが公表されている。2022年の日本は19位 だ。2021年では18位であったためランクダウンしている。

日本は、ジェンダー平等、つくる責任・つかう責任、気候変動、海の豊かさ、陸の豊かさ、パートナーシップの目標達成が不十分で、課題に対して積極的な取り組みが求められている。

なかでも目標15「陸の豊かさを守ろう」に関しては、2020年までは緩やかな改善が見られたものの、昨年には悪化状態となった。原因には不明点も多く、正確な調査や統計、研究が求められる。

またジェンダー平等に関する指標の「国会の女性議員の割合」や「男女の賃金格差」は、現状としては大きな成果が出ておらず、目標達成までには多くの課題をクリアする必要があるだろう。

それでも、目標4「質の高い教育をみんなに」や、目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標16「平和と公正をすべての人に」など早い段階で達成している課題もある。

一つひとつの目標を達成しつつ、日本が抱える深刻な課題や問題を解決できるために、すべての人が現状を把握してサステナブルな社会を目指すことが大切だ。

サステナブルと「エシカル」「ESG」「CSR」との違い

サステナブルとも関連が深い「エシカル」「ESG」「CSR」について、それぞれの違いを解説しよう。

エシカルは「消費者ひとりひとりの行動」という観点

エシカルを直訳すると「倫理的な」や「道徳的な」という意味だが、一般的には「法律やルールに関係なく誰もが正しいと思える行動」と認識されている。

そして近年は、地球環境への配慮、人権の保護に関する一人ひとりの行動、社会に配慮したサービスなどがエシカルとして表現されるようになった。

「エシカル消費」は代表的で、倫理的消費ともいわれ消費者庁でも推奨されている。

環境に配慮して作られた商品や国際フェアトレード認証の商品を購入すること、地元のものを購入する地産地消などもエシカル消費のひとつだ。

そうすることで、SDGsの目標12の「つくる責任・つかう責任」の達成にも貢献することができる。環境や人、社会に配慮した行動そのものがエシカルなのだ。

ESGは企業の長期的な成長に必要な要素

ESGは、環境、社会、企業統治(ガバナンス)を意味する英単語の頭文字からできた略語である。これら3つの観点から企業経営を行うことで、長期的な成長が見込める、という考え方だ。具体的には以下の取り組みが求められている。

環境面
温室効果ガス対策や資源不足を補う活動、ゴミ削減などが代表的である。
社会面
人権保護や労働条件の適正化、強制労働や強制解雇などの不当な扱いをしないなどの配慮が重視される。
企業統治
社内の不正や不祥事を防止する取り組みなどが多い。

ESG経営を行っている企業は、信頼やブランドとしての評価が高まりやすく、消費者からも注目されやすい。

CSRは企業と社会との関係性に着目している

CSR(Corporate Social Responsibility)は、直訳で「企業の社会的責任」を意味し、頭文字から作られた略語だ。ここでいう社会的責任には、企業に関わる従業員や消費者だけではなく、環境への配慮なども含まれる。そして、広義には利益を追求しない社会貢献活動もCSRに含まれる。

植林やインフラ整備など大規模な活動から、地域のゴミ拾いのような身近なボランティアなどさまざまな活動が展開されている。

直接的な利益にならない社会貢献活動であっても、消費者や従業員からの信頼獲得や企業イメージの向上にもなり、同時にサステナビリティにつながる部分が多い。

つまり、エシカルやESG、CSR、そしてSDGsは、サステナビリティを達成するための考え方や手法のひとつといえる。

サステナブルに関する社会の取り組み

次に、サステナブルに関連してどのようなことが行われているのか、社会の取り組みについていくつか取り上げる。

国連SDGsアクションキャンペーン

国連事務総長が主導し、国連開発計画(UNDP)が運営するキャンペーンが、「国連SDGsアクションキャンペーン」だ。

「私たち一人一人が行動を計画・実行し、進捗を確認することでのみSDGsを達成できる」という考えをベースに、一人一人が意識することで、SDGs達成に向けたアクションがさまざまな国で拡大し、加速することを狙っている。

アクションキャンペーンのひとつが「フェスティバル・オブ・アクション」だ。SDGs達成に向けた行動を応援するフェスティバルで、各界の代表が登壇し、SDGs達成のアイデアや成功例、これからの活動を語り、エールとSDGs達成のヒントを提供する。

なお、国連開発計画(UNDP)が運営するキャンペーンは、フェスティバル・オブ・アクションだけではない。ほかにも、国連SDGアクション賞の授与、国連総会会期中のサイトイベント「SDGアクションゾーン」など、SDGsに関連したイベントやキャンペーンを展開している。

SDGs未来都市

日本政府主導でも、サステナブルに関連した取り組みが行われている。そのひとつが、「SDGs未来都市」だ。「SDGs未来都市」とは、SDGsを原動力に地方創生を進めるため、SDGs達成に向けて優れた取り組みを提案する都市・地域を選定するもの。

新しい時代の流れを踏まえ、政府は2018年からSDGs未来都市を選定し、資金面でのサポートなどを実施している。

2020年までには、全国93都市がSDGs未来都市に選定された。地方におけるSDGs達成に向けた取り組みの推進に貢献している。

容器のリユースプロジェクト「Loop」

「Loop」とは、米仏で先行してスタートしたプロジェクトのことだ。食品や生活用品で使用される容器ボトルを、再利用可能なものに置き換えて、循環型のショッピングプラットフォームを整える取り組みのことである。

ポイントは、従来のプラスチック製の使い捨て容器とは違い、再利用可能なものに置き換えることだ。再利用することでごみが減り、環境にもプラスとなるため、サステナブルな活動のひとつといえる。

デザイン性、利便性の面で優れていることもあり話題になった。2021年から、日本でもさまざまな企業が団結してLoopを始動している。

ほかにも、サステナブルに関連して、社会ではさまざまな取り組みが行われているので、個々人でもまずは身近なところから関心を持つようにすると良いのではないだろうか。

個人レベルでできるサステナブルな取り組み

サステナブルな取り組みは個人レベルでも可能だ。最後に、個人でもできることをいくつか取り上げたい。

サステナブルに関連する情報を集める

サステナブルな取り組みのためには、まずどのような行動がサステナブルといえるのか、情報を集めることだ。

この記事でも説明したように、SDGsはサステナブルな取り組みのひとつなので、SDGsについて理解を深めるのが手っ取り早い。

個人でもできることについては、国連の「持続可能な社会のためにナマケモノにもできるアクション・ガイド」が作成されているので、参考にしてみるのも良いだろう。

サステナブルな商品を購入する

サステナブルの輪を広げるには、消費者である個人が、サステナブルな取り組みを行っている企業を応援することも重要である。まずは、日々の買い物から見直してみるのが良い。

原料はどこで調達されているのか、再利用やリサイクルの取り組みは行われているか、サステナブルな生産や調達の行われている商品か関心をもつようにする。商品選択の際も、これを基準に判断すると良いだろう。

商品パッケージからはなかなか判断しにくい部分もあるが、オーガニック認証マークなど、第三者認証のある商品だと選択しやすい。認証マークのある商品ばかりではないが、ひとつの目安として、どのような認証マークや認証機関があるかも知っておくと良いだろう。

また、サステナブルの輪を広げるには、環境に配慮したエコ商品を購入するだけではなく、“倫理的な(エシカル)消費”を意識するのも良いだろう。倫理的な消費とは「購入することで社会にプラスの影響となるか」という基準で商品を購入することだ。

たとえば、教育が行き届いていない人々の支援につながる商品を購入したり、開発途上の生産者のサポートにつながるフェアトレードの商品を購入したりと、「誰かをサポートする」ことを判断基準を持ってモノやサービスを購入していくことでサステナブルの輪を広めていくことができるだろう。

ごみを増やさない

サステナブルな取り組みとしては、個人がごみを増やさない選択をすることもあげられる。

ごみが増える商品を選ばないだけでなく、消費しきれないほどの食材を買わない、紙を無駄にしないためにパソコンやスマートフォンの機能などを活用する、など日々の行動も意識したい。

まとめ

SDGsは、サステナブルな取り組みのひとつであるため、両者の関係は深いといえる。国連や政府をはじめ、サステナブルな取り組みは至るところで行われているので、まずは関心をもって、さまざまな事例を知ることからはじめてみると良い。

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