社会との共有価値 【解説記事】【環境問題】レジ袋有料化の背景と環境への影響

【環境問題】レジ袋有料化の背景と環境への影響 【環境問題】レジ袋有料化の背景と環境への影響

2020年7月から全国の小売店でプラスチック製レジ袋を有料化する制度が実施された。レジ袋が有料化となった背景にはプラスチック問題が関係している。

そこで今回は、レジ袋有料化の具体的な背景を解説していく。また、プラスチック問題とつながりのある、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )という国連が定めた国際的な目標についても紹介する。

レジ袋が有料化された背景とは?

2020年7月1日に日本でレジ袋の有料化が導入され、各店舗で一斉に「マイバック持参」が推奨され始めた。そもそもレジ袋に焦点があてられたのは、当たり前に使用しているプラスチック利用への意識改革が目的である。

では、なぜレジ袋を減らす動きが取られたのか。ここからはレジ袋が有料化された背景を解説する。

プラスチックごみが引き起こす環境問題

プラスチックごみといえば、どのようなものを思い浮かべるだろうか。

今回取り上げるレジ袋のほかにも、スーパーに並ぶほとんどの商品には、プラスチックを利用した厳重な包装がされている。その大量のプラスチックがゴミとなり、廃プラスチックの処理に莫大な社会的コストがかかっている。

環境省によると、世界中で使用されるレジ袋は、毎年最大5兆枚。1分あたり約1,000万枚が使用されている計算になる。そして、世界全体で年間800万トンのプラスチックごみが海に溜まり続けている。

これは日本国外の問題だけではない。日本の大阪湾には沈むレジ袋の数は約300万枚と推計されている。2050年には、海洋中のプラスチックごみの重さが魚の重さを上回ると試算されている。

ポイ捨てされたプラスチックごみが海に流れ込めば、海の生き物を傷つけたり、生態系に影響が起きたりする。漁業の盛んな日本にとって、放置できない問題だ。

日本はプラスチック廃棄量の多い国

日本人はこれまで、当たり前のようにプラスチックを使用してきた。1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量は年間約30kgを超え、主要国のなかで2番目に多い結果となっている。

その廃棄量を人口で比べると、日本がどれだけのプラスチックごみを生み出しているのか差は歴然だ。例えば、中国の総人口数は日本の10倍以上でありながら、プラスチック廃棄量は日本と同程度である。

また、発展途上国ではあるもののインドのプラスチック廃棄量は日本のたった3分の1である。いかに日本がプラスチックを消費しているか分かる。

60カ国以上でレジ袋に関する規制が定められた

プラスチックごみがもたらす環境破壊を考慮し、世界でレジ袋削減の動きが活性化し始めた。2018年に主要国首脳会議(G7)で採択された「海洋プラスチック憲章」により、プラスチック廃棄による海洋汚染問題への対策がまとめられたことが背景にある。

現在、レジ袋に関する規制を定めているのは、世界で60ヵ国以上にのぼる。フランス、カメルーン、バングラディッシュなどではレジ袋の使用を禁止し、南アフリカ、スウェーデン、韓国などでは有料化を実施。デンマーク、ベルギー、アイスランドなどでは課税対象にすると決定している。

日本も有料化によりレジ袋削減を目指す

諸外国に合わせ、日本では環境省と経済産業省が「みんなで減らそうレジ袋チャレンジ」の推進を始めた。レジ袋有料化はチャレンジの取り組みのひとつで、日本全国2020年7月1日に一斉スタートした。

このチャレンジの目標は、レジ袋の辞退率を6割にすることだ。レジ袋有料化をきっかけに、ごみ問題でのプラスチック利用について意識を向けるねらいがある。

マイバッグ持参での買い物を続けることで、大量消費が当たり前のライフスタイルを見直すきっかけになるだろう。この国民一人ひとりの意識改革が、レジ袋有料化の本当の目的である。

有料化により、レジ袋の辞退率は7割以上に

レジ袋有料化により、買い物するときのマイバッグ持参が習慣化した人も多いのではないだろうか。もちろん最初の戸惑いは大きかったはずだ。今まで無料でもらえていたレジ袋が有料になれば、損した気持ちになる人もいるのではないだろうか。

有料化が始まって以降、レジ袋有料化の成果は確実に現れている。レジ袋が有料化される前の辞退率は約3割程度に対し、環境省が2020年11月に行った調査の結果、レジ袋の辞退率は71.9%と大幅に上がった

また、レジ袋有料化により「プラスチックごみ問題への関心が高まった」と答えた人は、全体の78%にものぼった。

身近なレジ袋有料化からSDGsについて考える

レジ袋有料化に深いつながりのあるSDGsを知っているだろうか?SDGsとは、2015年の国連サミットで採択された、持続可能でより良い世界を目指すための国際指標である。

しかし、SDGsに関する取り組みは進展したものの、実際にはまだ目標には届かず遅れを取っている状態である。2019年9月に開催された「SDGサミット2019」で、グテーレス 国連事務総長は「2030年までをSDGs達成に向けた『行動の10年』とする必要がある」と発言している。

SDGsの目標は17項目あり、その中でプラスチックごみに関する目標が5つある。つまり、レジ袋の削減を実現することで、プラスチックごみに関する5つの目標に、同時にアプローチできるのである。SDGsで掲げられているプラスチックごみに関する目標は以下のとおりだ。

目標14:海の豊かさを守ろう

「持続可能な開発のために、海洋・海洋資源を 保全し、持続可能な形で利用する」ことを目標としている。

目標15:陸の豊かさも守ろう

「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠 化への対処ならびに土地の劣化の阻止・ 回復および生物多様性の損失を阻止する」ことを目標としている。

これらのSDGsの目標達成を実現するためには、国や企業だけでなく個人の取り組みも重要だ。個人でできる取り組みは、レジ袋有料化にともなうマイバッグの持参や、環境に配慮した商品を選ぶなどさまざまである。

マイバッグ持参やSDGsの取り組みなどをきっかけに「日常生活のなかで、いかに多くのプラスチックが使われているか」「どうすればプラスチックごみを減らせるか」など、環境問題について考えることが大切である。

まとめ

今回は、レジ袋有料化の背景と、環境への影響について解説した。

レジ袋有料化をきっかけに、日本でもプラスチックごみへの意識が高まっている。ただ、マイバッグを持参することだけが習慣化してもSDGsの達成は見込めない。普段の生活にどれだけのプラスチックが使われ、どれだけを無駄にしているのか、実態に気付く必要がある。

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