People & Culture 【解説記事】「ルッキズム」とは

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「ルッキズム」とは、外見に対する差別や偏見のことです。1970年頃、アメリカを中心として始まった肥満差別の廃絶を訴えるファット・アクセプタンス運動のなかで生まれた言葉とされています。今回は、ルッキズムの概要や歴史、見直しの動きなどについて紹介します。
「ルッキズム」とは

ルッキズムとは、外見のみを重視して人を判断したり、容貌や容姿を理由に差別的な扱いをしたりすることです。外見を意味する「Looks」と、主義を意味する「ism」を組み合わせた言葉で、日本語では「外見至上主義」と訳されたりします。年齢・性別・国籍などいかなる理由による差別があってはならないとしているSDGsの目標10「人や国の不平等をなくそう」と深く関係しています。
痩せていることを美しいと捉える風潮は、ルッキズムの代表例と言えます。当初は海外を中心に問題視されていたルッキズムですが、最近では日本にも考え方が浸透しており、2022年には新語・流行語大賞にもノミネートされました。
「ルッキズム」の歴史
ルッキズムの始まりは、1970年代のアメリカにまで遡ります。肥満を理由とした差別に抗議する運動「ファット・アクセプタンス運動」で、ルッキズムという表現が使われたことが始まりとされています。その後、外見を理由とする差別などをなくすための運動や研究・メディアなどで、広く使われるようになりました。ただし、日本で使われるようになったのは、比較的最近のことです。2018年発行の広辞苑には採用されておらず、2021年の三省堂国語辞典に新語として収録されたことから、ここ数年で広く認知され始めた言葉だと言えます。
「ルッキズム」が起きる原因

ルッキズムが起きる原因としては、メディアによる影響が大きいとされます。例えば、痩せている俳優やモデルが美しく価値のあるものとして取り上げられることで、視聴者がダイエットをしなければならないと考えてしまう、という問題があります。また、SNSの普及もルッキズムに拍車をかけています。一般人であってもSNSで気軽に情報などを発信でき、「いいね」の数やフォロワー数・リツイートによって反響が可視化されることから、外見の良いユーザーに対する賞賛の声を目にする機会が多いためです。見た目の良い人に「いいね」やフォロワーなどが集まる状況を目の当たりにして落ち込み、過度なダイエットをしたり、美容整形を選んだりしている人の例もあります。
日常で見られる「ルッキズム」
ルッキズムは無意識のうちに形成され、社会に根付いています。ここでは、日常で見られるルッキズムの例を取り上げます。
人の外見への安易な口出し
他者の外見に対して、安易に意見したり要望を述べたりすることは、ルッキズムに該当します。例としては、知り合いや家族・友人などに「痩せたほうが良い」などと、安易に口出ししたり意見したりする風潮が挙げられます。また、特に女性のスポーツ選手について、競技内容ではなく外見の良さや特徴ばかりが取り上げられることもルッキズムの表れです。
企業の「顔採用」
企業が採用活動をする際に、容姿端麗な人が有利になることがある、いわゆる「顔採用」もルッキズムに当たります。具体的には、外見についても加点の対象としたり、事前に見た目に関する情報の提供を求めたり、といった扱いが挙げられます。日本では、求職者が応募時に企業に提出する履歴書には、顔写真を貼り付けなければならないことが多いです。最近は廃止している企業も増えつつありますが、求職者の顔写真が選考に影響を与えることはルッキズムの一種と言えます。
「ルッキズム」を見直そうとする動きの例

社会に根付くルッキズムの問題に対し、このような風潮を見直そうとする動きが近年、活発化しています。ここでは、ミスコンテストの廃止やお笑いの方向性の見直し、プラスサイズモデルといった代表的な取り組みをお伝えします。
ミスコンテストの廃止
ルッキズムを見直す動きとして、民間団体や大学などで実施されていた女性が容姿の美しさを競う「ミスコンテスト」を廃止する動きが相次いで見られています。スリムなプロポーションや容貌の美しさを競うコンテストは、外見のみを重視する考え方へとつながってしまうからです。また、ミスコンテスト自体は続けるものの、水着審査を取りやめるケースなども出てきています。
外見を蔑視するお笑いの見直し
お笑い業界においても、外見を蔑視することで笑いを取るスタイルが見直されつつあります。ルッキズムについての理解が深まったことで、他者の容姿を軽々しく批評することや、コメディアンが自分の容姿を自虐するお笑いのスタイルに反感を覚える人が増えているからです。笑いを届ける側、それを受け取る側の双方において、外見に対する差別や偏見について考え直す機会となっています。
「プラスサイズモデル」の活躍
モデル業界においても、ルッキズムを見直そうとする動きがあります。それは、身長や体重が平均より大きい「プラスサイズモデル」の活躍です。ぽっちゃりした体型のプラスサイズモデルが活躍し、ポジティブな笑顔で雑誌やSNS上を飾ることで、「痩せていることが良いこと」という風潮を変化させています。
「ルッキズム」を解消するためにできること
ルッキズムを解消するために、私たちができることがあります。それは、自分に対してありのままの容姿や体形を受け入れ、「こういう外見であるべき」という考え方にとらわれないことです。他者に対しても、見た目の多様性を受け入れ寛容であることが重要です。違いを理解して尊重することを心がければ、ルッキズムに囚われずに、自由な見方や評価が可能になります。メディアや周囲の言動に振り回されることなく、容姿のみに囚われない社会づくりにつなげていくことが求められています。
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