ペイシェント 関節痛やリウマチと間違われやすい希少疾病「骨軟化症」健康な未来のために、今できること。

関節痛やリウマチと間違われやすい希少疾病「骨軟化症」健康な未来のために、今できること。 関節痛やリウマチと間違われやすい希少疾病「骨軟化症」健康な未来のために、今できること。
  • 階段を降りる時に足の甲が痛む
  • 寝返りを打ったときに肋骨が痛む
  • 歩く時に股関節が痛む
  • 骨折がなかなか治らない

これらは、骨の石灰化に問題が起こる「骨軟化症」によく見られる症状です。

「骨軟化症」は関節痛やリウマチなどと非常に間違われやすい希少疾病

気がつかずに長期間放置したり、正しく診断されず、別の疾患として治療が継続されることで深刻な合併症に進行するケースも多いといいます。

この問題に対応するため、協和キリン株式会社では「骨軟化症」の認知向上に取り組んでいます。その一環として2020年7月、「骨軟化症(くる病)」に関する一般向け疾患啓発情報サイト「くるこつ広場」をオープンしました。

今回は、「骨軟化症」について適切な診断・治療を受けるために知っておくべきこと、そして「くるこつ広場別ウィンドウで開きます」に託す思いをお伝えします。

話を聞いた3名

氏名:ギブス好美(ギブス ヨシミ)

協和キリン株式会社 メディカルアフェアーズ部 フィールドメディカルグループ所属 ブロスマブMSL(メディカルサイエンスリエゾン)

1994年、キリンビール株式会社(医薬事業本部、現:協和キリン株式会社)入社。MR,マーケティング部、海外事業企画部を歴任。

推定患者数と通院患者数の差が著しいことから低リン血症性の「骨軟化症」「くる病」の疾患啓発の必要性を感じ、疾患情報サイト「くるこつ広場」を開発。

氏名:前川久幸(マエガワ ヒサユキ)

協和キリン株式会社 メディカルアフェアーズ部 フィールドメディカルグループ所属 ブロスマブMSL(メディカルサイエンスリエゾン)

1995年、キリンビール株式会社(医薬事業本部、現:協和キリン株式会社)入社。MR、学術企画などを歴任。

2020年6月より「くるこつ広場」プロジェクトに参画。「患者さんとそのご家族のお悩みを、少しでも和らげるお手伝いができれば」という思いで、デジタル広告の運用、新規コンテンツ企画等の業務に携わる。

氏名:黒田匠(くろだたくみ)

株式会社メディウィル デジタルマーケティングディレクター

「くるこつ広場」のWEB構築、ならびにサイト内の病院検索システムの企画・制作・運営に携わる。

多くの方が適切な治療にたどり着けていない

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——「くるこつ広場」を作った目的を教えてください。

ギブス好美(以下、ギブス)このサイトは、一般の方の「骨軟化症(くる病)」の認知を向上する、そして患者さんへの情報提供の場となることを目指しています。

低リン血症性の骨軟化症は非常に珍しい病気(希少疾病)のため、広く知られていません。※1

また、症状の多くが関節等の痛みであり、疾病特有の症状ではないことから、受診しなかったり、変形性関節症や骨粗しょう症、リウマチなどに対する治療が行われることも多いようです。

子ども時代に遺伝性の「くる病」の治療を受けていた方でも、進学や引っ越しなど何らかのきっかけで治療を中断されたり、「治った」という誤解から治療をやめてしまうケースもありますね。

前川久幸(以下、前川)2万人に1人という数字は推定値ですが、実際に治療を受けている方は圧倒的に少ないのが現実です。多くの潜在患者さんが適切な治療にたどり着けていない現状を改善したい、この思いからより多くの人が閲覧できる「WEBサイト」という形で患者さんが疾患の可能性に気づいて頂けるような情報を発信することにしました。

  1. ※1FGF23関連の骨軟化症に関してのみ認知度が低い。骨軟化症の種類については後述。

骨が固くならない希少疾病「低リン血症性骨軟化症」

——「骨軟化症」はどんな病気なのですか?

(ギブス)私たちの骨は、古くなった組織を壊し、常に新しく作り替えることで強度を維持しています。「骨軟化症」は、骨の石灰化(骨を硬くする働き)が妨げられる疾病です。名前通り、“骨が軟らかい状態になる”病気と言えます。

適切な治療を行わなければ、骨の材料であるリンが慢性的に不足し、骨が変形、骨折(偽骨折※2)したり、痛みなどの症状が現れます。なお、成長過程にある子どもで同じ状態がみられる場合は、これを「くる病」と呼びます。「骨軟化症」「くる病」の主な症状には、

  • 下肢の変形(O脚やX脚など)
  • 歩行異常(足を引きずる、バランスをとるために左右に揺れながら歩く)
  • 筋肉の痛みやこわばり、筋力の低下
  • 歯肉膿瘍(骨と同じく、歯もうまくつくれない)

などがあります。早期に適切な治療を行わないと症状が進行し、歩行が困難になる場合もあるほか、身長は、平均と比べて著しく低くなる傾向があります。

関連リンク>>くる病の歯のケアについて詳しく知る別ウィンドウで開きます

  1. ※2骨を分断するように完全に折れてはいないが、ごく小さなヒビが入るなどの状態

「骨軟化症」には3種類ある

——「骨軟化症」にはどんな種類があるのですか?

(ギブス)「骨軟化症」や「くる病」は、原因別に大きく以下の3種類に分けることができます。

【骨軟化症・くる病の種類】

①体内のビタミンDが不足する(ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症)

②ビタミンDが体の中で働かない(ビタミンD依存性くる病・骨軟化症)

③腎臓でリンの再吸収がうまくいかない(低リン血症性くる病・骨軟化症)

まずは①ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症。

この場合は、リンやカルシウムの吸収に関わるビタミンDの摂取量が不足していたり、日光浴の時間が短いことで発症します。人はビタミンDを食事などから摂るだけでなく、日光の力を借りて皮膚の表面でも生成しているのです。

しかし、ビタミンDを十分に摂っていても、体内でビタミンDに作用する酵素が不足していたり、ビタミンD受容体に問題がある場合、リンやカルシウムを十分に吸収できません。これがビタミンDが体の中で働かない②ビタミンD依存性くる病・骨軟化症です。

最後に、③低リン血症性くる病・骨軟化症ですが、こちらは、腎臓の尿細管の異常や血液中のリンの量を調節するホルモン(FGF23)の影響で血液中のリンが不足する(尿からリンが過剰に排泄される)ことで引き起こされます。

①の場合は、ビタミンD補充などの一時的な治療で完治することが多いですが、

②③の場合は、先天的な疾患であったり、腫瘍性(FGF23を過剰に分泌する腫瘍ができる)であるため、基本的には生涯にわたる継続的な治療、観察が必要とされています※3

  1. ※3腫瘍性の場合、一般的には腫瘍を適切に切除できれば完治します。

関連リンク>>骨軟化症についてもっと詳しく知る別ウィンドウで開きます

早期発見、早期治療のためにできること

——「骨軟化症」の早期発見・治療のためにできることはありますか?

(ギブス)長引く関節痛や、足の甲、背中、助骨、筋肉の痛みなどを抱えていらっしゃる方は、早めに専門医へ受診することをおすすめします。疾患に関する基礎知識や専門医について詳しくお知りになりたい方は、ぜひ「くるこつ広場」をご覧になってください。

(前川)また、「骨軟化症」は脊柱管狭窄症、変形性関節症、慢性関節リウマチなどと混同されやすい疾患です。すでに通院されている方であっても、主治医にこの病気に関してたずねてみることも選択肢の1つではないでしょうか。

「骨軟化症」「くる病」啓発サイト「くるこつ広場」

——「くるこつ広場」をつくる際にこだわった点はありますか?

(ギブス)一般の方が見て親しみやすく、必要な情報を探しやすいサイト構成にすることを心がけました。誰でも活用が可能な「正しい診断のための相談シート」やお近くの専門医を検索できる「病院検索」機能などがその1つです。

関連リンク>>正しい診断のための相談シートはこちら別ウィンドウで開きます

関連リンク>>お近くの専門医を検索できる「病院検索」はこちら別ウィンドウで開きます

(黒田匠)私は協和キリン株式会社の皆さんと協力して、サイト企画やシステム面での支援を行っています。WEBサイトは様々な方がご覧になるので、それぞれの置かれた状況にフィットするコンテンツを揃えることが大切です。専門的な情報だけでなく、患者さんのエピソードなどニーズに寄り添ったコンテンツをどんどん充実させていきたいですね。

(前川)希少疾病の啓発は、一足飛びのようにはいきません。地道、かつ粘り強く一歩ずつ前進していくことが大切だと考えています。「くるこつ広場」がより多くの患者さんの正確な診断、適切な治療への架け橋になることを願っています。

——希少疾病に対する認知や理解を高めることは、患者さんの健康、そして社会全体の福祉に寄与することにつながるのですね。みなさん、ありがとうございました。

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