社会との共有価値 【解説記事】エコロジカル・フットプリントとは?環境問題に関する指標

エコロジカル・フットプリントとは?環境問題に関する指標 エコロジカル・フットプリントとは?環境問題に関する指標

環境問題について興味があり調べている中で、「エコロジカル・フットプリント」という言葉を耳にしたこともあるだろう。エコロジカル・フットプリントは、環境問題を考える上で重要な指標だ。

今回は、エコロジカル・フットプリントの概要と各国の応用事例、環境問題について私たちができることを取り上げる。

「エコロジカル・フットプリント」とはどういう意味なのか

まず、エコロジカル・フットプリントの概要について見ていく。

自然環境への依存度を示す指標

エコロジカル・フットプリントは、人の生活が自然環境にどれほど依存しているか、わかりやすく示した指標をいう。

人ひとりが必要な土地面積、具体的には、化石燃料消費による二酸化炭素を吸収する森林面積、建造物等で必要な土地面積、食料生産のための土地面積、紙や木材の生産のための土地面積を合算して、必要量を地球の面積(ha)で表す。

地球、あるいはその国で生活する人が、現在の生活を維持するためにどのくらい地球の面積が必要か、環境依存度を視覚的にわかりやすくした指標だ。

エコロジカル・フットプリントと似た言葉には、カーボン・フットプリントがある。カーボンとは、炭素のこと。カーボン・フットプリントは、製品のライフサイクル全体で排出された温室効果ガスを、CO2に換算して表示した指標をいう。

エコロジカル・フットプリントと、カーボン・フットプリントは、どちらも人間の環境への影響を示した指標として理解しておくと良い。

指標から見える日本と世界の環境問題

世界のエコロジカル・フットプリントは、年々増加している。1970年代にはバイオキャパシティと呼ばれる、地球が生産・吸収できる面積を消費が超過してしまった。それでもなお、エコロジカル・フットプリントは増えており、将来必要な資源を消費している状態となっている。

エコロジカル・フットプリントを国別に見ると、先進国の数値が高い。日本は、世界では38番目に大きく、アメリカの0.6倍、中国の1.4倍の数値だ。世界の人々が日本で暮らす人と同じ生活をしたと仮定すると、地球面積2.9個分に相当する。

日本のエコロジカル・フットプリントでわかることは、日本のバイオキャパシティよりもエコロジカル・フットプリントの方が大きく、環境への依存度が高いことだ。

バイオキャパシティを超えているということは、消費資源を国内だけで十分に調達できず、海外からの輸入にも頼っているということ。日本のエコロジカル・フットプリントの高さは、依存度の少ないほかの国の環境悪化にも影響を与えている。

人類の存続のためにも、エコロジカル・フットプリントをとおし、持続可能な社会を実現することが重要だ。

エコロジカル・フットプリントの応用事例

エコロジカル・フットプリントはどのようにして使われているのか、日本や世界での応用事例を紹介する。

日本の事例

エコロジカル・フットプリントが開発されたのは、1990年から1991年にかけてである。日本国内では、環境省が発行する「環境白書」において、エコロジカル・フットプリントの概念が触れられた。政府公式の書類では初のことである。

2003年には、国土交通省が「資源消費水準あり方検討委員会」で全国版と都道府県版のエコロジカル・フットプリントを算出。これにより、日本全体だけでなく、地域ごとの環境依存度が具体的に示されるようになった。

さらに、2006年、日本政府は第三次環境基本計画へエコロジカル・フットプリントを導入している。エコロジカル・フットプリントが政府内のさまざまな場面で使われることにより、地方自治体においても概念などが導入されるようになった。

このように、日本で公的にエコロジカル・フットプリントが採用されるようになったのは、自然資本会計の国への考慮で具体的な数値目標を出すことで、日本としての国の立場、今後の方向性を世界に示す目的もある。

自然資本会計とは、空気や水、川などの自然が企業経営を支える資本として捉え、適切に評価するツールのことをいう。

世界の事例

世界では、生態学的資本が重要な競争要因になってきている。そのために、生態学的資本を効果的に管理することが重要視され、そのための指標としてエコロジカル・フットプリントが注目されるようになった。

たとえば、スイスではエコロジカル・フットプリントを公式国家指標に導入している。国家指標として採用されたことで、行われるようになったのが毎年のスイス連邦統計局によるエコロジカル・フットプリントの数値の公表だ。

エコロジカル・フットプリントの数値が高いスイスの公式採用は、生態学的資本を適切に管理する意味で興味深い事例である。

また、エクアドルでは、2009年にエコロジカル・フットプリントなどの指標を整備することで、生態学的資本を管理する大統領令を採択した。エコロジカル・フットプリントの値が小さく、黒字を出し続けている国が適切に資源を管理する方法として注目される。

ほかにも、東南アジアでは初の試みとして、フィリピン政府が、2012年の国家土地利用法にエコロジカル・フットプリントを導入するに至った。

以上のように、生態学的資本を管理するという点で、エコロジカル・フットプリントの概念と計算は、さまざまな国で必要な指標のひとつとされている。

限りある資源に対して私たちはどうすべきなのか

エコロジカル・フットプリントは、日本や世界の国々で公式に採用される環境指標になった。

これは、エコロジカル・フットプリントで環境依存度を把握することによって、先進国などの依存度の高い国では依存度を下げるために、生態学的資本の多い国では依存度の低い状態を維持することに役立つためである。

環境資源の管理を適切に行うことは、社会の持続可能性にも、国の発展にもつながるとして注目されるようになってきた。

環境保全のカギは「SDGs(持続可能な開発)」の達成

生物学的資源を維持していくには、環境保全に力を入れることだ。環境保全のカギは、SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標 )の達成が握っている。

SDGsとは、2015年の国連サミットにおいて採択された、持続可能な開発目標をいう。SDGsには17の目標があり、その中には、環境保全に関連する項目もいくつか存在する。国際的な目標においても環境保全は重要な課題だ。

SDGsの目標には、エコロジカル・フットプリントの削減に関連する目標がいくつか存在している。たとえば、「目標12.つくる責任つかう責任」だ。目標12では「経済性成長」と「持続可能な開発」を達成するための推進が掲げられている。この目標を達成するためには、個々人が商品、資源の生産や消費の方法を変える必要がある。詳しくは以下のページを参考にしてほしい。

この目標12を達成することで、エコロジカル・フットプリントの環境依存度を下げることに大きく貢献するだろう。

また、SDGsの達成に向けて、各国の政府をはじめ、企業でもさまざまな取り組みを行っている。環境保全に関するSDGsの目標に関しては、以下で具体的に解説しているので参考にされると良いだろう。

キリンホールディングスのグループ会社キリンビールでは、ライフサイクル全体のCO2を評価するカーボンフットプリントについて2008年にビール業界と共に取り組みをスタートした。作成した基準を指標に環境負荷の低減を行っている。また、オセアニアのグループ会社ライオン社では、ニュージーランド初のカーボン・ゼロ・認証ビールを作った。

私たちは身近なことから環境保全に取り組もう

持続可能な社会の実現のためには、私たちひとりひとりが、環境保全について意識をもって行動することが重要だ。

具体的な取り組みとしては、まず、持続可能な消費行動をとること。たとえば、電気を節約する、ムダな印刷を控えデジタル付箋などを活用する、買い物にマイバッグを持参する、環境保全の取り組みを行う企業の製品を購入するなどである。

ほかに、食品ロスの減少も挙げられるだろう。食べきれない量の注文をしない、食べきれない生鮮食品を早めに冷凍する、肉でなく資源の消費が少ない植物を積極的に取り入れるなど、意識して行動することで、必要以上の消費やムダがなくなる。

まとめ

エコロジカル・フットプリントは、人の生活の環境依存度を、地球の面積で表現した指標である。

どのくらいの生態学的資本を消費しているのかわかりやすいことから、日本政府をはじめ、世界各国で公式的に採用されるようになった。限りある生態学的資本を適切に管理する意味でも役立てられている。

エコロジカル・フットプリントについて、関連が深いのが、環境保全の目標も盛り込まれたSDGsの達成だ。私たち個人にも、SDGsの達成のために環境について意識を向け、持続可能性を実現できるような行動を選択していくことが望まれる。

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