社会との共有価値 【解説記事】サステナブル・シーフードとは?3つの認証と企業の取り組みを紹介

スーパーや飲食店で、「サステナブル・シーフード」という言葉を目にしたことはないだろうか。環境問題を考えるなら、サステナブル・シーフードの積極的な選択も考えていきたい。

今回は、サステナブル・シーフードの意味と3つの認証、企業の取り組みなどを紹介する。

サステナブル・シーフードとは海の環境を守りながら得た魚介類のこと

サステナブル・シーフードとは、将来も変わらず魚介類を食べ続けられるために、環境を配慮して持続可能な方法で漁獲、養殖された魚介類をいう。

サステナブル・シーフードで注目したいのが「MSC認証」「ASC認証」「CoC認証」の3つの認証だ。

サステナブルな天然の水産物の証「MSC認証」

MSC認証は、水産資源と環境に配慮し、適切に管理された漁業により漁獲された天然の水産物を認証したものだ。「海のエコラベル」ともいわれる。

MSC認証の水産物の特徴は、認証を受けていないものとは異なり、認証を受けた漁業までさかのぼれることだ。目印となるMSC認証のラベルが付けられるため、MSC認証を受けているかどうかが一目でわかる。

なお、MSC認証を受けるには、独立した機関による科学的根拠に基づいた審査を受ける必要がある。さらに、認証制度は厳格に管理されており、認証を取得しても、5年ごとに認証の更新を行う必要がある。

5年に一度見直しされるMSC認証の規格には、海洋管理における優先課題が常に反映されている。そのためMSC認証の取得は、世界でも最優良とされるレベルでの漁業を実践している証明にもなっている。

サステナブルな養殖の水産物の証「ASC認証」

ASC認証は、環境に配慮し、社会にも配慮した、持続可能な養殖による水産物を認証したものだ。

2021年9月時点において、ASC認証の対象となっている魚介類は12種だ。サケ、ブリ・スギ類、タイ、カレイ目の魚介類、海藻、カキやホタテなどの二枚貝などが含まれる。

食料生産システムの中でも魚介類の養殖は、技術やシステムの飛躍的な進化により、著しく成長してきた。これにより、環境に配慮した早急な対策が求められており、ASC認証の重要性は高まっている。

認証を受けた水産物を管理するための「CoC認証」

MSC認証やASC認証は、漁業者や養殖業者を認証する仕組みだが、魚介類が消費者のもとに届けられる過程には漁業者や養殖業者以外の業者も関わってくる。

CoC認証は、MSCやASCの認証を受けた魚介類の加工や流通を管理する、流通業者や加工業者、小売店のための認証だ。

加工や流通の過程で、MSC認証やASC認証を受けた水産物が、認証を受けていないほかの水産物と混ざらないために設けられている。また、CoC認証を設けることにより、認証商品の流通経路をたどれるようにもしている。

CoC認証においても、独立した機関による審査が必要だ。MSC認証やASC認証のラベルを貼って商品を販売するには、CoC認証を受けなくてはならない。

現在の漁業が抱えている課題

サステナブル・シーフードは、漁業者や養殖業者、流通や加工にかかわる業者や販売業者を厳格に管理することによって供給されている。これにより、消費者はサステナブル・シーフードとそうでないものを選択できるようになった。

それでは、なぜサステナブル・シーフードの必要性が高まってきたのだろうか。サステナブル・シーフードにかかわる、現在の漁業が抱える問題を3つ取り上げる。

海洋資源の減少

流通の国際化が進んだことで、世界全体の水産物の需要や消費量は増加してきた。また、世界の人口は増加を続けている。今後、さらに水産物の需要は高まると見込まれている。

このような需要増や消費増のなか、懸念されるのが安定的な水産物の供給だ。

水産物の需要が増したことで、過剰な漁業や破壊的な漁業が加速している。過剰漁業などによる海洋資源の被害は、年間800億ドルとも試算されているほどだ。

出典:「目標14 海の豊かさを守ろうpdfが開きます」(国際開発センター)

海洋環境や海洋資源を無視した過剰な漁業が拡大し、続くようになれば、やがて水産資源は不足し、枯渇してしまうだろう。

このような海洋資源の減少や枯渇を終わらせ、安定的な供給を確保するため、サステナブル・シーフードがその重要性を高めている。

海に流れるプラスチックごみ

海洋ゴミは、海洋汚染につながる深刻な問題だ。特に、海洋ゴミの中でも、6割から8割をプラスチックごみが占めるといわれている。

プラスチックごみの問題は、海洋生物が誤飲してしまうことだ。プラスチックごみは微細になっても微生物により分解されないことから、海洋に漂い続け、魚介類が誤飲することによる生態系への影響が問題となっている。

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出典:「目標14 海の豊かさを守ろうpdfが開きます」(国際開発センター)

海の酸性化

海に吸収される二酸化炭素が増えたことにより、海洋の酸性化が進んでいる。酸性化による問題は、海洋生物がうまく育たなくなることだ。

特に、サンゴは酸性化による影響を受けやすい。サンゴの骨格などの生成は酸性度に影響されやすく、海の酸性化が進むと成長が妨げられてしまう。

また、海の酸性化は、プランクトンや甲殻類、サンゴを住処にするほかの生物にも影響を与える。

海洋資源を正しく管理することは、海の環境を維持し、食物連鎖を故意に乱さないためにも重要だ。

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標14「海の豊かさを守ろう」では、世界の海洋と海洋資源を保全し、持続可能な形で利用することを呼びかけている。サステナブル・シーフードは、目標14を達成する解決策のひとつだ。

SDGsの目標14についての詳細はこちら

サステナブル・シーフードを導入している企業事例

日本国内においても、海洋問題を意識して、サステナブル・シーフードを導入する企業が増えてきた。今回はその中でも3つの事例を紹介する。

セブン&アイグループ

セブン&アイグループでは、オリジナルブランドの「セブンプレミアム」で、サステナブル・シーフードの販売を拡大している。

同社がサステナブル・シーフードとして取り扱っているのが、先に紹介したMSC認証の商品、ASC認証の商品のほか、MEL認証の商品、アラスカシーフードなどだ。

MEL認証は、マリン・エコラベル・ジャパン認証のことだ。環境への配慮や水産資源の持続可能性のための管理を積極的に行う生産者や加工、流通業者を認証するもので、オリジナルブランドとして、認証マークのある商品の販売を行っている。

アラスカシーフードは、アラスカの天然のシーフードを表すマークだ。厳しい漁業管理による持続可能性を実現しているシーフードであることを示している。

パナソニック

パナソニック株式会社では、社員食堂でサステナブル・シーフードを使ったメニューの提供を行っている。

社員食堂に導入した取り組みは日本初で、WWFジャパンやサプライヤの協力の下、実現に至った。2021年3月時点で、同社のサステナブル・シーフードを導入した社員食堂は50拠点を超えている。

ニッスイ

ニッスイグループでは、水産資源の持続可能性を検証するために、国際連合食糧農業機関(FAO)が公表する水産資源の状態を基準に、資源安定、満限利用、過剰漁獲の3段階で取り扱う水産物を調査している。

加えて、MSC認証やASC認証の商品を積極的に利用する取り組みも実施している。2017年の調査においては、ニッスイグループの扱う天然魚の37%がMSC認証などを取得していることがわかった。

ほかにも、水産物の認証プログラムを検証する機関である世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)とともに資源の持続性を推進するために、日本では初めてGSSIと国際パートナーシップを組むなどの取り組みも行っている。

まとめ

サステナブル・シーフード推進のために、さまざまな機関や企業が海洋資源の持続可能性に向けた取り組みを行っている。

海洋保全実現のためには、このような企業などの取り組みを知り、個々人がサステナブル・シーフードについて理解し、活用していくことが大切だ。

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