社会との共有価値 【解説記事】水質汚染とは?日本の現状と取り組みを紹介

水は生命活動に欠かせないものであり、水質汚染は健康被害や生態系への影響も懸念される重大な問題です。今回は、水質汚染について日本の現状や取り組みをお伝えします。

水質汚染の主な原因

産業排水

日本では、かつて産業排水に含まれる有害物質により深刻な公害が各地で発生し、多くの人々が健康被害に苦しみました。こうした状況を受け、日本政府は1970年に「水質汚濁防止法」を制定し、産業排水に対して厳しい規定を設けました。以来、事業者は水銀やカドミウムなど特定の有害物質の含有量を基準値以下に抑え、水質汚染の防止を図っています。

生活排水

生活排水は、家庭生活で排出される水で「生活雑水」と「し尿」の2種類に大別されます。生活雑水とは、キッチンや風呂、洗濯機などから出る排水のことを指します。トイレから出る排水は「し尿」となり、これらを合わせて「生活排水」と呼びます。

日本では、産業排水については法規制によって制限されているため、現在の水質汚染の主な原因は生活排水となっています。例えば、東京都内では、川や海に流される排水による汚濁の70%以上は生活排水に起因しています。

気候変動

地球温暖化にともなう渇水や豪雨の増加なども、水質汚染につながります。特に問題視されているのは、公共用水域(公共に使用される河川や湖沼、湖畔や海域など)における、水中低層の溶存酸素濃度の低下による水質悪化や、湖沼でのアオコの異常発生です。

溶存酸素濃度とは、大気中から水に溶け込んでいる酸素量のことを指し、低下すると水棲生物が窒息死するなど生態系にも影響を及ぼします。好気性微生物(酸素量が多い環境下で活性化する微生物)の活動も低下し、分解活動などの自浄作用が損なわれる要因にもなります。

水質汚染が引き起こす深刻な問題

水質汚染は、どんな問題を引き起こすのでしょうか。

生態系に深刻な影響を与える

水質汚染によって水棲生物が減少すると、それを捕食している生物も餌が得られず減っていきます。その結果、多くの野生生物が絶滅の危機に追い込まれ、生物多様性の豊かさを阻害する要因になります。また、魚が減ると漁獲量が減るため、人間の生活にも影響を及ぼします。

人々の健康をおびやかす

汚染された水を飲料水として摂取すると、健康を害するリスクが高まります。また、汚染された海や川で獲れた魚介類を食べ続けることで病気になる事例も、数多く報告されています。このように水質汚染は、人々の健康にも深刻な影響を及ぼします。

水質汚染改善に向けた日本の取り組み

ここからは、水質保全のために実施されている日本の取り組みについて紹介します。

全国一律の排水基準の制定

現在の日本では「水質汚濁防止法」が、水質汚染改善の基本的な枠組みとなっています。同法は、排水基準を遵守するための規制が不十分だった水質二法を踏まえ、1970年に定められました。工場・事業場(特定事業場)から公共用水域への排出水に対し、全国一律の排水基準が定められています。

また、都道府県レベルでは、条例を制定することで、全国一律の基準よりもさらに厳しい排水基準を定めることができます。これには、汚濁発生源が集中する場所での水質汚濁を抑える狙いがあります。

基準に適合しない排出水を流した事業者に対しては、懲役または罰金が科せられます。加えて、事業者には排出水の濃度を測定することが義務付けられているため、水質汚濁防止法は強制力をもった法律といえます。

水質保全が必要な湖沼を「指定湖沼」に指定

湖沼は水の環境循環が起こりにくく汚濁物質が蓄積しやすいため、水質汚濁防止法だけでは十分な水質保全は難しいです。そこで、1984年に「湖沼水質保全特別措置法」が制定され、水質保全が必要な11の湖沼を「指定湖沼」に指定して水質の改善が図られてきました。
指定湖沼がある府県では、COD(Chemical Oxygen Demand=湖沼と海の汚れの指標)・窒素・りんの負荷量規制、下水道・浄化槽の整備、底泥の浚渫などの施策を推進しています。

  • 浚渫…海や河川、湖沼、ダム湖などに堆積している土砂や汚泥を機械的に除去すること

水の日・水の週間の制定

2014年に施行された水循環基本法によって、8月1日が「水の日」、8月1~7日が「水の週間」に制定されました。水の日と水の週間は、水資源は有限で貴重なことや水資源を開発していくことの大切さを国民に理解してもらうことを目的としており、その時期には講演会やワークショップなどさまざまなイベントが開催されます。

協和キリンの取り組み

協和キリンでは、事業活動を通じて水資源保全や水質汚濁防止に取り組んでいます。

  • 水資源保全への取り組み
    協和キリングループの2030年取水量削減目標として「2019年比40%削減」を策定し、製造工程における水使用量の削減を進めています。また、原料として使用する水を持続可能な状態にするために、医薬品製造の主力工場である高崎工場ならびに宇部工場では毎年、水源の森づくり活動として、下草刈りや間伐作業を実施しています。
  • 水質汚濁防止への取り組み
    河川へ排水する際には、管轄行政の排水基準よりも厳しい自主管理基準を設定しています。また、製造プロセスの改良や排水処理施設への設備投資を積極的に行っています。

加えて、水資源保全や生物多様性保全につながる活動として、キリングループの「水のめぐみを守る活動」に2007年度から参加しています。