社会との共有価値 【解説記事】SXとSDGsの関係性とは?SXの具体的事例を紹介

SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)に関連し、SXという言葉を耳にしたことはないだろうか。SXは、社会の持続可能性と企業の持続可能性を同期化させて企業価値を高めていく概念だ。

今回は、SXの意味とSDGsとの関係、SXの事例について紹介する。

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)の概要

SXは何を表すのか、まずはSXの意味とSXを形成する要素、SXが求められるようになった背景について紹介していく。

SXとは企業と社会の持続可能性を両立させる経営や対話のあり方

SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)とは、長期的な時間軸において、企業と社会の持続可能性を両立させていく経営や対話の在り方を表す。

予想しやすい短期的な時間軸を前提にせず、5年や10年先など、時間軸を意図的に引き延ばして経営や対話を行う。SXでは、競争優位性のほか、企業内部の経営資源の分配、顧客に対する価値など、まずは企業内部の問題を捉えて経営を考えていく。

対して、近年注目を浴びるようになったのが、ESGやSDGsだ。ESGは、環境・社会・ガバナンスのことで、投資先に対してその配慮を求める投資行動をESG投資という。

SXと異なり、ESGとSDGsは企業外部の社会課題に対する働きかけで、社会の持続可能性に関連する。SXは、企業内部の問題はもちろん、このような企業外部の問題も一体化させて経営戦略を立てようとする考えだ。

SXを形成する3要素

外部環境が変化する中、社会の持続可能性に応えつつ企業の持続可能性を高めるには、競争優位性を築き、将来にわたり維持・強化していく必要がある。

そのためにも、5年や10年に渡る長期的な時間軸で、社会の持続可能性と企業の持続可能性を同期化させた経営戦略を実行することが重要だ。

SXを実践するためには、具体的に次に取り上げる3つの要素がカギとなる。

①「稼ぐ力」の持続化・強化

企業の持続可能性を高めるには、「稼ぐ力」である競争優位性や強み、ビジネスモデルを持続化・強化することが重要だ。また、事業ポートフォリオ、イノベーションやマネジメントに対する種植えも必要となる。

②社会のサステナビリティを経営に取り込む

企業を取り巻く環境を長期的な視野で見たとき、今後どのように変化していくかの推測が難しくなる。そのため、不確実性の高い将来に対して、十分な備えを施していくことも重要だ。

具体的には、将来にわたる社会の持続可能性をどのように実現していくか逆算し、企業の稼ぐ力に対するリスクと機会を把握して、社会の持続可能性と企業の持続可能性の両方を経営戦略に反映させる。

③長期の時間軸での「対話」によるレジリエンスの強化

不確実性に備えて、将来的に現在のシナリオが変更される可能性があることを理解し備えておくことも必要だ。

「稼ぐ力の持続化・強化」「社会の持続可能性に応える経営」の観点も踏まえながら、企業と投資家・株主などのステークホルダー間で対話を繰り返し、中長期的な経営戦略を磨いて企業としての基盤を整え、強固なものにしていく。

SXが求められている背景

不確実性の高い現代において、従来のような中長期的な経営計画においてリスクや機会を把握するだけでは、中長期的に企業価値を高めていくことが難しい。そこで、企業と投資家の双方が長期的な目線のもと、共通の時間軸で対話する必要が出てきた。

また、とりわけ日本企業においては、長期成長に向けた投資の伸びに課題がある。企業経営の持続化や成長のためには、企業価値の向上と稼ぐ力の向上が必須だ。

以上の外的な要因などもあり、SXに注目が集まるようになった。

SXとSDGsの関係性とは

SDGsは、国連サミットで採択された、地球規模の課題を解決するための2030年までの国際的な目標だ。全部で17の目標が設定され、169のターゲットと231の指標が定められている。

社会の持続可能性のためには、SDGs達成に向けた取り組みもクリアしていかなくてはならない。 SDGsの目標をチェックシートのように活用することで、SXの推進に必要な社会の持続可能性にも取り組みつつ、企業の持続可能性の向上に役立てることができる。

SDGsの17の目標の詳細や世界での取り組みについては、以下の記事で詳しく紹介している。

経済産業省と東京証券取引所が「SX銘柄」を創設

SXを推進する公的なバックアップも重要だ。日本の企業が抱える長期的な企業価値の向上を促すため、経済産業省と東京証券取引所はSX銘柄を創設した。2023年度中に審査基準などを策定し、2024年から選定結果の公表が予定されている。

SX銘柄の創設で期待されるのは、建設的な投資家との対話により、長期的に社会の持続可能性に取り組み企業価値を向上させようとする企業を可視化することだ。SX銘柄を選定して表彰することにより、日本企業を再評価してもらい、市場への期待感を高めることが目的とされる。

SXに関する具体的な事例

SXに関連する具体的な取り組みとして、どのようなプロジェクトが展開されているのだろうか。SXに関する具体的事例をふたつ取り上げる。

MEGURU BOXプロジェクト

MEGURU BOXプロジェクトは、北九州市で実施された資源循環のためのプロジェクトだ。

まず、スーパーや公共施設などの指定の回収場所で、使用済みボトルの容器や詰め替え用のパウチ類を回収ボックスに入れる。

回収されたプラスチック容器は、水平リサイクル(使用済み製品を同じ種類の製品に作り変える)の研究などに回され、より良いリサイクル方法の検証や環境負荷を抑えた商品開発に役立てられる。

同プロジェクトにおいては、地域の社会支援団体に、1個の回収につき5円が寄付される取り組みも行われた。参画した複数の日用品メーカーにとっては、社会の持続可能性に役立つ取り組みに関与しただけでなく、企業価値の向上にもつながる事業となっている。

2030年使い捨て傘ゼロプロジェクト

日本の傘の消費量は世界で一番多く、毎年多くの傘が輸入され廃棄されている。消費される傘の多くはビニール傘だ。プラスチックごみを取り巻く課題として、大量生産・大量消費される傘は、大きな社会問題となっている。

この課題解決に挑む取り組みが「2030使い捨て傘ゼロプロジェクト」だ。傘シェアリングの仕組みをカーボンニュートラルな形で運営すること、シェアリングが当たり前になるように普及させ、持続可能性を実現することが目的としている。

プロジェクトには複数の企業がパートナーとして参画し、持続可能性に向けた取り組みをサポートしている。

まとめ

SDGsやESGなど企業に求められる社会の持続可能性に取り組みつつ企業価値を高めていく、SXの推進が重視されるようになってきた。

2024年からは経済産業省と東京証券取引所の連携のもと、SXを推進する銘柄を選定し表彰するSX銘柄が創設される予定である。

長期的な視点で企業価値を捉えていくには、SXについて理解し、SXを推進する企業にも目を向けることが重要だ。

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