People & Culture 【解説記事】「クィア」の意味とは。LGBTQ+の定義や企業の取り組み事例を紹介

SDGsの目標5は「ジェンダー平等を実現しよう」である。LGBTQ+など男性・女性の二元論に当てはまらないセクシュアリティを持つ「クィア」への理解や権利保護も、ジェンダー平等において深い関連性を持つ。

この記事では、クィアの概要と、クィアの権利保護に向けた世界各国の取り組み事例を紹介する。

「クィア」とは

まず、クィアの概要と、LGBTQ+に関連するSDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)の目標について解説する。

「クィア」の概要

クィア(Queer)とは、LGBTに当てはまらない性的マイノリティや、性的マイノリティを広範的に包括する概念である。

クィアは、もともと英語で「不思議な」「風変わりな」「奇妙な」という意味を持つ語である。かつて男女以外の性自認や異性愛以外の恋愛に理解がなかった時代に、同性愛者への蔑称として使われていた。

しかし、現在では性的マイノリティ当事者が、ポジティブな意味で用いることが増えている。

性的マイノリティについて述べるとき、LGBTQ+などといわれることがあるが、この「Q」はクエスチョニング(Questioning)またはクィアを指す。なお、クエスチョニングとは性自認・性的指向が定まっていないことや、あえて決めていないことを意味する。

LGBTQ+は、あくまで性的マイノリティの一部を定義したものに過ぎない。性的マイノリティには、レズビアン(性自認も恋愛対象も女性)・ゲイ(性自認も恋愛対象も男性)・バイセクシュアル(恋愛対象が男女両方)・トランスジェンダー(割り当てられた性と性自認が一致しない)のほかにも、次のようなタイプのマイノリティが存在する。

  • 性自認が揺れ動く「ジェンダーフルイド」
  • 男女のいずれか一方に性自認を限定しない「Xジェンダー」
  • 自身の性自認・性別表現に男女の枠組みを当てはめようとしない「ノンバイナリー」

クィアは、このような多様な性自認・性的指向・性別表現を持つ人も含む概念である。

クィアと関連の深いSDGsの目標

クィアの権利保護は、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」と深く関連している。

ジェンダー平等とは、男女の性別に関わらず平等な責任や権利を分かち合うことを意味する。特に、社会的に立場の弱い女性の地位を向上させることについていわれることが多い。

SDGsの目標において、直接的に性的マイノリティに対しての言及はなされていない。しかし、男女という二元論に当てはまらない性の多様性を認め、クィアを差別なく受け入れる社会を目指すことは、より本質的な意味でのジェンダー平等の実現といえるだろう。

SDGsの目標5については、以下の記事でも詳しく説明している。

性的マイノリティの保護に向けた国内外の取り組み

国内外では、性的マイノリティの権利保護に向け、さまざまな法整備が行われている。

【日本】労働施策総合推進法の改正

労働施策総合推進法の改正により、企業に対して職場におけるパワーハラスメント防止のための雇用管理上の措置が法的に義務付けられた。

大企業は2020年6月1日から、中小企業は2022年4月1日から改正法が施行されている。企業が行うべき雇用管理上の措置の中には、性的マイノリティに対するハラスメントについての対応も含まれる。

具体的な措置内容について厚生労働大臣が定める指針には、性的指向・性自認に関する侮辱的な言動(SOGIハラスメント)や、労働者の性的指向・性自認についてほかの労働者に暴露すること(アウティング)についてパワハラに該当する例と明文化された。

  • SOGI=Sexual Orientation(性的指向)・Gender Identity(性自認)

【世界各国】同性婚の法制化

同性婚の法制化も、性的マイノリティ保護に向けた大きな取り組みである。2001年にオランダで同性婚が法制化されたことを皮切りに、欧米を中心に同性婚が容認されるようになった。

NPO法人 EMA日本の調査によると、2022年7月末現在世界各国で同性婚および登録パートナーシップなど同性カップルの権利を保障する国や地域は、世界の約20%に及ぶ。

一方で、憲法で同性婚を禁止していると解釈される国や、宗教上の理由で禁止されている国も少なくない。

【オーストラリア】婚姻法改正

オーストラリアは1970年代以降、性的マイノリティをめぐって制度改正が行われてきており、2017年12月の婚姻法の改正で同性婚が法制化された。

先だって行われた郵便調査において国民の6割以上が同性婚に賛成する中、連邦議会では圧倒的多数の賛成で法案が可決された。

【台湾】「司法院釈字第748号解釈施行法」の可決

台湾では、2019 年の「司法院釈字第748号解釈施行法」の可決により、同性婚が認められた。 アジアで同性婚が法制化された最初の地域である。

ただし外国人と台湾人の同性婚については、外国人の母国で同性婚が認められている場合にのみに限られている。

【ノルウェー】「クィア・カルチャーイヤー2022」の開催

ノルウェーは、性的マイノリティの権利に関して先進的な取り組みを行っている国のひとつだ。

「クィア・カルチャーイヤー2022」は、非合法であった男性の同性愛が非犯罪化されてから50年を記念した行事である。大学や国立美術館、国立図書館などの協力を受け、ノルウェー全土で1年間にわたり、クィアに関する歴史や文化・芸術などに関するイベントが展開される。

【企業事例】LGBTQ+の権利について啓発を促す取り組み

LGBTQ+への理解に向け、さまざまな企業が啓発を促す取り組みを行っている。ここからは、近年の企業の取り組み事例を具体的に紹介する。

スターバックス コーヒー ジャパン株式会社

スターバックスは、早くからLGBTQ+をサポートしてきた企業である。2018年から、インクルージョン&ダイバーシティのテーマに「NO FILTER」を掲げ、多様性をモチーフにしたアイテムも販売を企画している。

2022年4月には、カラフルなレインボーカラーのボトルとタンブラーを限定発売した。レインボーカラーは多様性のシンボルであり、レインボーカラーのアイテムを身に付けることは、LGBTQ+への理解や賛同の意味を持つ。

レインボーカラーグッズの売上の10%は、認定NPO法人ReBitへ寄付され、「レインボー学校プロジェクト」へ活用される。レインボー学校プロジェクトとは、中高大学生へ多様性やLGBTQ+について学ぶ機会となる出張授業を提供する取り組みであり、ReBitとスターバックスが共同で進めているものだ。スターバックスのバリスタも当事者として経験を語っている。

関西電力株式会社

関西電力は、ダイバーシティ&インクルージョン推進の一環として、従業員のLGBTQ+に関する理解を深めるため、以下のような取り組みを進めている。

  • 全従業員対象のeラーニングを実施
  • LGBTQ+に関する基礎知識やハラスメント防止についてのハンドブックの作成
  • 相談窓口の設置

これらは、LGBTQ+当事者のみならず、誰もが働きやすい環境を整えることを目的としたものだ。

レストラン・ブランズ・インターナショナル

レストラン・ブランズ・インターナショナルは、バーガーキングの店舗を運営するカナダの持株会社だ。

バーガーキングでは、毎年6月に世界各国でLGBTQ+の権利についての啓発活動を行う「プライド月間(Pride Month)」が開催されている。また、オーストリアのバーガーキングでは、2022年のプライド月間に同社のハンバーガー「ワッパー」のプライド版「プライド・バーガー」を限定販売した。

プライド・バーガーは、バンズの上半分2個もしくは下半分2個で作られたバーガーだ。ふたつの同じバンズを使うことで、「平等な愛と平等な権利」を訴えるものである。

まとめ

性的マイノリティについては「LGBTQ+」という表現で語られることが多くなってきた。しかし、セクシュアリティは個々で多様性があることを示すのが、クィアという概念である。

「LGBT」という総称や「L」「G」「B」「T」についての個々の概念は社会に浸透しつつあるが、クィアやクエスチョニングを表す「Q」については、まだまだ知られていないのではないだろうか。

クィアについて理解することは、SDGsの目標であるジェンダー平等にもつながっていく。多様性を認め、あらゆる人が差別や迫害を受けることなく自分らしく生きられるように、配慮を持った言動を行いたい。

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