社会との共有価値 【解説記事】カーボンニュートラルとは?背景と取り組み事例を紹介
2023年度における日本の温室効果ガス総排出量は、約10億1,700万トンにのぼります。温室効果ガスは地球温暖化の原因となり、私たちの生活や生態系に大きな影響を与えます。そのため、国や地域を問わず削減は喫緊の課題です。その解決に向けたアプローチの一つが「カーボンニュートラル」の推進です。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を実質的にゼロにすることを意味します。
カーボンニュートラルの実現に向けては、まず排出削減を進めます。しかし、温室効果ガスの排出を完全にゼロに抑えることは現実的に難しいため、排出せざるを得ない温室効果ガスについては同じ量を「吸収」または「除去」する取り組みを実施します。これにより、差し引きゼロ、正味ゼロ(ネットゼロ)を目指します。
日本では、2020年10月に行われた菅義偉首相(当時)の所信表明において、政府が「カーボンニュートラルを2050年までに実現すること」を宣言したことで、世間に広く認知され注目が一気に高まりました。
EU諸国や中国など、日本に先立ち実現目標を表明した国も多くあります。カーボンニュートラルは、世界各国が実現を目指す目標なのです。
カーボンニュートラルが求められる背景
カーボンニュートラルが世界規模で求められる背景には、深刻な気候変動の影響があります。世界気象機関(WMO)が2025年に公表した年次報告書によると2024年の世界の平均気温は、過去最高となり、これまでの最高だった2023年から0.1度上昇しています※1。今後も二酸化炭素などの温室効果ガスへの対策を行わなければ、上昇は続くでしょう。その結果、温暖化異常気象や豪雨・干ばつ、海面上昇などの気候変動が生じ、自然災害や健康、農林水産業などへの影響がさらに深刻になっていきます。
- 具体的な影響の例
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- 豪雨による大規模な水害
- 高温・少雨による森林火災の多発
- 異常な降雪による都市機能の停止や、海水面の上昇に伴う都市の水没
- 猛暑日や干ばつの増加による健康被害
- 降水量や気温の変化による作物の不作
すでに世界各地で深刻な被害が起こっています。こうした被害を軽減していくためには、今後、世界の平均気温の上昇を1.5℃以内に抑える必要があると考えられています。そのためには、温室効果ガスの排出量の大幅削減が欠かせません。
- ※1世界気象機関(WMO)『State of the Global Climate 2024
』
取り組み事例
すべての分野で温室効果ガスの排出自体を短期間でゼロにするのは困難です。そのため、排出量を大幅に減らす取り組みを迅速に進めるとともに、排出せざるを得なかった分は吸収や除去により相殺し、全体としてカーボンニュートラルを目指す取り組みが進められています。
実際、以下のような取り組みを政府や自治体、企業が進めています。
- 再生可能エネルギーの導入
- 省エネルギー設備の導入
- 電気自動車(EV)や水素自動車の利用
- 建築物の省エネ化
- 森林保全や植林(二酸化炭素を吸収し排出量を相殺)
協和キリンの取り組み
キリングループでは、2050年までに一連の事業活動による温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指しています。協和キリンでは、この目標の達成に向け「2030年のCO2排出量を2019年比55%削減する」という数値目標を掲げ、ロードマップに従い計画的にCO2排出量の削減を進めています。例えば、国内主要事業場においては、太陽光発電設備を導入。また、使用電力の100%を再生可能エネルギーに切り替えました。その後もさまざまな取り組みを継続的に実施しており、その結果2024年の排出量(2019年比)は 18,221 t-CO2となり、65%の削減を達成しました。
