People & Culture自分で決断したことはやりきれる。自分の想いに正直に生きる、女性研究職の生き方とは

自分で決断したことはやりきれる。自分の想いに正直に生きる、女性研究職の生き方とは 自分で決断したことはやりきれる。自分の想いに正直に生きる、女性研究職の生き方とは

「たった一度の、いのちと歩く。」を”私たちの志”として掲げる協和キリン。病気と闘うすべての人に笑顔を届けるためにいのちにまっすぐ真摯に向き合うこと、そして医療従事者とともに、いのちと歩み続けるという製薬会社で働く者としての思いが込められています。

その志に共感し、研究を通じて世の中に貢献する仕事をしたいと思う方は多くいらっしゃいます。しかし、まだまだ研究員というと男性が多いイメージがあったり、そもそも研究職に就くべく大学院(修士・博士)まで卒業してから就職をすることに漠然とした不安があったりする女性や学生も多いのではないでしょうか。

「研究職として、女性が第一線で働くとはどういうことか?」今回は、大学院(博士課程)を卒業後、協和キリンに入社し、研究員として第一線で活躍されている、髙橋愛実にお話を聞きました。

インタビュイー

髙橋 愛実(たかはし あみ)

協和キリン株式会社 研究開発本部 研究ユニット 創薬基盤研究所

北海道出身。北海道大学 薬学部 薬科学科を卒業後、同大学大学院 生命科学院 生命医薬科学コース 修士課程、博士課程を修了。博士(薬科学)。2018年協和キリン入社。創薬の研究初期の基礎研究~非臨床試験までの研究に欠かせない薬理研究(in vivo)の基盤業務を担当。

誰かを救えるかもしれないという可能性に魅力を感じて研究の道に

―まず髙橋さんの仕事内容について教えてください。

私は、創薬基盤研究所に在籍し、主に基礎研究から非臨床試験を担っています。熟練の技能を身につけ研究をサポートする技術職の方が多数在籍しており、社内の研究所から実験依頼を日々受けています。その中で、私は研究員として、様々な取り組みに携わっています。

具体的には、世界中の実験情報を調査したり、依頼された実験が目的に沿うかを検討したり、実験の対応策を提案したりする仕事です。もちろん社外の技術を導入することもあります。

創薬基盤研究所の仲間と撮影

―そもそも理系分野に興味をもったきっかけは何でしたか

一番のきっかけは、高校生の頃にハッチンソン・ギルフォード・プロジェリア症候群(通称プロジェリア)と闘うアシュリー・ヘギさんのドキュメンタリー番組を見たことでした。プロジェリアは、極めて稀な疾患で、非常に早いスピードで老化していく病気です。当時まだ治療法もなく、11歳のアシュリーさんの肉体年齢は100歳に近い状態でした。日に日に年老いていく中でも獣医という将来の夢を持ち、毎日を前向きに生きるその生きざまに衝撃を受けました。

実は4歳のころに心臓の手術を受け、それをきっかけに約10年間、大学病院に通院していたので、常に医療というものが身近にあったことも大きいです。

中学生までは文理問わず色んな事に興味があったのですが、「なぜ?」を突き詰めて考える性格だったこともあり、『実験⇒考察⇒結論』というプロセスを考えることが好きなのだと気づきました。

もし実験や研究という自分の好きなことで誰かを救えるとしたら素晴らしいなと、その可能性に魅力を感じました。

―学生時代、理系の道を進むうえでジェンダー平等における課題感はありましたか

高校の校風は「堅忍不抜」「自主自律」で、学校生活を過ごす上では特にありませんでした。

しかし、進路選択の際、将来の職業を考えたときに周りの大人からの忠告はありました。子育て、結婚などと女性を意識させる話題が多かったことを覚えています。また、理系を選択したうえで、学部を選ぶ際に「お医者さんは女の子には・・・」みたいな指摘も当時はありました。最近でもジェンダーの意識から 、子どもの進路に対して親が意見をいう風潮はまだまだ残っているように感じます。

私自身、高校2年までは音大に進学するつもりでした。幼少期からピアノを始めて、熱心な先生からの指導や母からの熱いサポート をうけた結果、小学生のころに全国大会に出ることができた経験もあり、周囲からは音楽専攻を期待されていたからです。得意なことを仕事にするという点に加えて、ピアノの先生になったら結婚しやすいのでは、また、時間に融通がきいて子育てとの両立がしやすいのではといった考えも加味されていたと思います。

転機は、友人からの一言です。私自身は「生まれ変わったら、(アシュリー・ヘギさんのような)病気を治す仕事がしたいな~」というのが口癖でした。するとある時、友人から「なんで今、やりたいのにやらないの?」と言われたのです。ずっと色んなものを犠牲にしてピアノのレッスンを優先してきて、「もう後悔はしたくない。自分が本当に好きな気持ちを大切にしたい。一番私がやりたいのは研究だ」と心が決まりました。

最初は母とも和解ができないまま、半分押し切るような形で、文系志望から理系志望に進路を変えて学校に提出しました。正直、周りを完全に説得できたわけではありません。その後の受験で、私が頑張って志望校に合格した時に、本気なのだと母は納得してくれたようです。

先を見越してキャリアプランを想定しておくことの重要性

―大学卒業後はどのような進路を選ばれましたか?

大学で4年間を過ごし卒業したあと、2年間の修士課程と3年間の博士課程に進みました。

研究をするのであれば、日本だけではなく世界の研究者とも対等にわたりあいたいと思っていたので、研究者の入り口として博士課程は必須だと考えていました。

大学は親の援助を受けながら通いましたが、自分で選択した進路のため、修士課程を終えた後は博士課程の間の生活費は自分で用意して、親にできるだけ負担をかけないようにしました。

大学時代に社会経験も兼ねて貯めたアルバイト代や、奨学金でやりくりをしていたのですが、その奨学金は成績(研究業績を含む)が良ければ返還が免除になることもあり、とにかく研究を頑張りました。また、奨学金申請 の経験は今の仕事にもつながっていると感じています。自分の研究や活動を「他者に伝える」力が身につきました。また、自分の研究や活動を客観的に振り返る良い機会となり、足りない部分に気づいたり、常にモチベーションを高く保ったりすることができたと思います。

―他にはどのような活動を行いましたか?

給付型の奨学金にも応募しました。博士も奨学金や、日本学術振興会の特別研究員 としていただいたお給料 から学費を捻出していました。

特別研究員として研究を進めるうえで、研究のストーリー・研究計画を一から立てることはもちろん、資金管理や研究倫理、学内や国内のルール・規制の理解に至るまで、学生のうちに携わることができたのは財産になりました。これらは現在の仕事にも非常に活かされている点だと思います。

これらの積極的な研究・活動は、様々な人との出会いにも繋がり、私の視野が広がりました。

―修士課程や博士課程に進む中で、悩みや葛藤はありましたか?

私の場合、本当に周りにめぐまれて沢山サポートいただいたなと思います。意識していることは、自分のビジョンややりたいことを周りに共有しておくことです。自分からさらけだすことで、周りのサポートを得られる機会が多いなと感じています。両親は私に薬剤師資格をとることを期待していたみたいですが、根気強く説明し、最終的には好きにしなさいと言われました。

私は家庭を築いて子どもを持ちたいという思いが昔からあったので、博士課程を修了して就職する時点で28歳になるキャリアに迷いがなかったわけではありません。だからこそ、企業や大学で研究しながら子育てをしている先輩の話を聞く機会は必ず足を運んで作っていました。

描いたとおりになるかはわかりませんが、「キャリアプランを想定しておくことの重要性」は就職活動時も入社初年度からも意識しています。

―協和キリンを選んだ理由を教えてください。

当初は、大学で研究を続けていくほうがいいかなと考えていました。「研究を極めるなら企業ではないよ」「企業は研究するところではないよ」と言われていたことも大きかったのかもしれません。一方で、大学研究には研究者しか経験がなかったり、企業に就職したが合わずに戻ってきたり、と様々なケースを見たことがありました。なので、いろいろな可能性を考慮して、企業への就職活動にも取り組んでいました。

その後、実際に就職活動を進めていくうちに、「企業は研究するところではない」というのは事実ではないと思うようになりました。当然、最終的なアウトプットは、企業と大学研究では異なりますが、どちらがいいかは個人の価値観によるのではないかということです。私自身は、論文などを通じて自分の名前が世に出ることよりも、自分が携わった薬が世に出て役に立つのであればいいかなと思いました。

―実際に入社前と入社後にGAPはありましたか?

いい意味で期待を裏切られました。入社前から『人と人とのつながりがあったかく、チームワークを大切にする』と聞いていましたが、想像以上にその通りだったからです。

また、福利厚生が整っているという話は聞いていましたが、私自身働きながら子育てをしてみて、本当に制度が整っていて働きやすい職場だと感じています。入社3年目で一人目を出産したのですが、今の職場は子育てしている女性研究員や、共働き家庭の人も多く、子育ての大変さを理解してもらえるのは有難いです。会社だけでの付き合いではなく、親せきや家族のようなアットホームな空気で子育てのサポートをしてもらえることも恵まれているなと感じています。

より生きやすい社会に向けて、まずは自分自身がロールモデルになる

―協和キリンの研究者として働くうえで、ジェンダー平等はどのくらい達成されていると感じますか。

普段ジェンダー平等の面で問題意識はありません。男女は平等だと感じていますし、能力差も感じたことはないです。

人数比でいうと、私より少し上の世代ではまだ男性の方が多いのですが、最近は一般的なイメージよりも女性が増えてきていると思います。

―(上記)を実感した具体的なエピソードについて教えてください。

採用試験の時から、女性だから不利だと感じることは一度もありませんでした。

会社としてもジェンダーや多様性に関する研修もたくさん取り入れていて、上司に理解があることも大きいと思います。私の上司も男性ですが、とても話しやすい関係性でコミュニケーションに全く問題ありません。

上司には研究や業務の相談だけでなく、子育てなどのプライベートな相談も乗ってもらっています。子どもの体調不良で急に休む場合もあるのですが、きちんと相談して、対応や計画を立てるサポートもしてもらっています。

働き方としても、多くの研究員は労働時間に縛りのない裁量労働制で勤務しています。求められるハードルは高い分、労働時間の長さだけで評価されないので、育児と仕事の両立もしやすいと思います。

―企業や社会においてジェンダー平等を実現するには何が重要と感じますか。

協和キリンは制度も充実していますし、職場環境も整っているなと感じています。そんな恵まれた環境でも、結婚や出産を機に、働く現場における女性としての課題はあると感じました。

制度を使って会社は休めるけれども、休暇によるブランクや休暇後のキャリアについて他の社員と比べたときに私の中で焦りがありました。復帰して業績を出そうと頑張りましたが、自分の想定どおりに結果がでないことも多く、不安になることもありました。業績を出すこと、今後のキャリア、育児との両立、全く葛藤がないといえばウソになります。

社会としても今はまだ過渡期で、育休などの制度面は整ってきましたが、男性だから女性だからといった既成概念や役割分担は今後さらにアップデートしていく必要を感じています。それが実現していくと、性別を超えてより生きやすい社会になっていくはずです。

そのためには管理職の比率にまだまだ改善が必要だと考えています。お子さんを持つ女性先輩社員に話を聞くと、上司になかなか理解をされずコミュニケーション上困ったという経験がある人もおられました。子育て、介護の経験を含めて多様な人材が管理職になっていけば、一人で悩みを抱え込むことなく生き生きと仕事ができる人が増えるのではないかなと思います。

私自身もロールモデルがなかなか見つからず苦労したので、必ずしも研究職ではなくとも子育てとの両立に困っている方とコミュニケーションをとるような活動をしています。まだまだ身近にロールモデルがいなくて、同じような人の話を聞きたいという方は大勢います。次は自分がロールモデルとなって、よりよいキャリアプランを次の世代に共有したいと思っています。

―今後のキャリア、ビジョンについて教えてください。

チャンスがあれば研究に限らず、どんどんチャレンジしていきたいです。プライベートでいうと、子どもは今1人ですが、可能であれば3人ほしいなと思っています。仕事が好きでやりがいを感じているので、出産の際も極力お休みを取らずに復帰するのが希望です。「何かあった時は助け合う、お互い様の精神」が浸透した職場なので、そういう要望を自由に言えて、いざというときは周りからサポートしてもらえるのがありがたいです。

子育てと両立しながらチャレンジできることに価値があると思いますし、子育てを理由にせず、変に臆病にならずにキャリアを築いていきたいです。最終ゴールとしては、管理職になって、仕事の幅や影響力を広げながら、次の世代にむけて方向を指し示していける存在になりたいです。

―ずばり、協和キリンの魅力は?

協和キリンの”私たちの志”にすべてが集約されていると思います。全文は長いのでもし興味があれば読んでみていただければと思いますが、志に共感している仲間と仕事をしていけることが有難いです。

“私たちの志”全文はこちら

―今進路を考えている方、また、就職活動中の方へ一言お願いします。

女性であることで悩むことも沢山あるかもしれませんが、今の時代、自分のやりたい、こうなりたいという想いに正直になることが大切だと思います。自分で決断したことは、それが良い結果になってもならなくても、後悔せずに、やりきることができるのではないかと思います。

私自身も今、子育てとの両立など大変なことは沢山ありますが、進路や就職に対する後悔は全くなくて、やりがいを感じています。ぜひトライしてみましょう。

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