成長協和キリンCEO×COO特別対談:共に、新たな道を切り拓く

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2025年3月、協和キリンは新たにCOO(最高執行責任者)を設置し、Abdul Mullickが就任しました。今後はCEO とCOOの二人体制で、経営を進めていきます。新経営体制のもと、どのような道を切り拓いていくのか、CEOの宮本とCOOのMullickが、経営に対するそれぞれの考えと思いを語りました。
7年間の成果と課題:従業員と共に新たな道を切り拓く
―初めに宮本さんに伺います。CEOとしての7年間を振り返り、成果と課題を教えてください。
宮本 最大の成果は、グローバル市場に向けて2つの新薬を発売し、世界中の患者さんにLife-changingな価値を届けられたことです。一方で、いくつかの新薬候補品が開発中止を余儀なくされ、将来を担うパイプライン※1の充実が思うように進まなかった点は課題が残りました。
そのような環境変化も踏まえて、2024年2月に、Story for Vision2030を発表し、当社が創薬に注力する疾患領域やモダリティ(創薬技術)を明確化し、開発品 によってはパートナー企業との連携を取り入れて価値提供を行う方針を打ち出しました。この戦略ストーリーを推進するためCOOを新設し、CEO・COOの二人体制を採用することにしました。
新COOに任命したのは、希少疾患対象の医薬品のグローバル展開に豊富な知識と経験を持つAbdul Mullickさんです。今後は、新COOと協力しながら、経営をグローバルレベルでより一層強固なものにしていきたいと考えています。具体的にはパイプラインの充実、患者さんへの薬の提供、組織のさらなる効率化、生産、研究の強化といったオペレーションの部分は、全面的にMullickさんに任せる方針です。CEOである私はそれらを支えるCxO※2の体制を進化させることや、ステークホルダーとの関係構築・維持に注力します。
- ※1 パイプライン:製薬業界における研究開発段階にある医薬品や再生医療等製品の候補品のこと。製品パイプライン、新薬パイプラインともいわれる。
- ※2 CxO:「Chief x Officer」の略で、日本語では「最高〇〇責任者」。「x」には企業内の部門や役割の名称が入り、「x」に入る部門、役割における最高責任者を意味する。

―Mullickさんはこれまでも、欧州やアジア地域におけるビジネスの変革や医薬品のグローバル展開に尽力してきました。就任にあたり、どのようなお気持ちですか。
Mullick 宮本さんとともに経営の舵取りを担うことになり、ワクワクしています。協和キリンは、抗体などバイオテクノロジーをベースにした素晴らしい歴史を持ち、特定領域では他の追随を許さない強みがあります。一方で、今後グローバルに大きく飛躍するために強化が必要な部分も残されています。
しかし、見方を変えれば、協和キリングループで働く皆さんとともに新たな道を切り拓くチャンスがあるということです。これは、私が以前勤めていたようなメガファーマにはない大きな魅力だと考えています。私の経験と知見を存分に発揮し、この挑戦を楽しんでいきたいと思います。

Mullick COOと接して感じた「リーダーとしての資質」
―宮本さんから見て、Mullickさんはどのような方ですか。
宮本 Mullickさんには、経営者として特筆すべき資質があります。それは、将来のあるべき姿を見据えながら、中長期的な視点で戦略を立案し、その実行にオーナーシップを持ってコミットできるという点です。実際に、ヨーロッパや米国で新薬をいち早く、できる限り多くの患者さんに届けるという難しいミッションにおいて、その手腕を発揮し大きな成果を上げました。2023年には東京本社へ異動し、その後Chief International Business Officer(CIBO)として、協和キリンの欧州地域やアジア地域の再編に尽力しました。
さらに、彼がこの会社のトップにふさわしいと感じたのは、その柔軟な姿勢でした。欧米の製薬業界で長い経験を積んだリーダーの中には、自らの成功体験を適用すればうまくいくと考える人がいますが、Mullickさんは決してそのような一方的なアプローチを取りません。自身の経験や考えをしっかりと共有しつつも、自分の意見を過信せず、フラットに議論を進め、最適な解決策を導き出そうとします。日本企業のトップに外国人が就任する場合、ときに考え方や価値観の違いによる従業員との軋轢が懸念されます。しかし、Mullickさんには、そのような心配をまったく感じさせない柔軟性があります。
Mullick 高く評価してくださり、ありがとうございます。私が柔軟な姿勢で皆さんの意見を聞けるのは、当社のビジョンへの強い共感が大きいと思います。宮本さんが常日頃から語る「病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値を創出する」というビジョンは、私の経営哲学と完全に一致します。
私はある希少疾患の治療薬を上市するタイミングで協和キリンに入社しました。薬を待ち望むたくさんの患者さんとそのご家族に出会い、喜びの声を直接聞き、その笑顔を間近で見ることができたことは、私の心を大きく動かしました。私たちは、単に薬を届けるだけではなく、笑顔を生み出すことができる存在だと強く実感したのです。
―Mullickさんにとって、患者さんとの対話は大切な場になっているのですね。
Mullick はい。前職でも患者さんと直接お話しする機会があったのですが、特に希少疾患の患者さんとそのご家族と言葉を交わしたとき、薬がその方々の人生に与えるインパクトの大きさを感じました。あるご家族とは今も交流を続けています。お会いするたびに「薬を届け、その喜びを分かち合いたい」という想いが改めて胸に湧き上がり、私の原動力になっています。
患者さんを中心に考えることは、希少疾患だけでなく全ての病気において重要です。部署によっては患者さんと交流する機会が少ないのですが、患者さんを常に念頭に置きながら働けるように、従業員と患者さんが対話できる機会を、今後さらに多く作っていきたいと考えています。
協和キリンだからできる、Life-changingな医薬品を生み出すために
―今後の展望をお聞かせください。
Mullick 最も重要なことは、イノベーションを起こしながらこの先10年後、20年後もLife-changingな価値を継続的に創出し、世の中に広めていくことです。そのためには、それを支える「人の力」が不可欠です。2008年の当社設立時に作成した「私たちの志」の一節に、「私たちは、決して大きな会社ではない。でも私たちには、どんな大きな会社にも負けないものがある」というフレーズがあります。つまり、規模の大きさではなく、「どれだけ違いを生み出せるか」という価値観が私たちの根底には流れているのです。協和キリンだからこそなし得るLife-changingな医薬品を開発すれば、多くの病気と向き合う人々を笑顔にすることができます。
そのためには、まず私たち従業員が笑顔になることが重要です。従業員一人ひとりの成長やウェルビーイングを支えることで、自然と笑顔が生まれ、それが病気と向き合う人々にも笑顔をもたらすことにつながっていくと、私は確信しています。
また、当社は新たに「KABEGOE Principles」を掲げ、目指すべき企業文化、具体的な行動指針を、全世界の従業員と共有しました。ビジョン実現に向けて、私が先頭に立って「KABEGOE Principles」を推し進めていくことも重要な役割だと感じています。
宮本 私もMullickさんと同じ思いを持っています。協和キリングループの経営体制をより盤石なものにしLife-changingな価値を継続的に創出していくため、Mullickさんと手を携え、持てる力を尽くしていきます。
