成長社外取締役対談:世界中の患者さんに価値を提供するために――ガバナンスのこれから
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協和キリングループは2025年から2026年にかけて、監査等委員会設置会社への移行、CEO・COO制の導入、そしてAbdul Mullick新CEOのもとでのC-suite Executiveへの再編と、大きな経営体制の変革を遂げました。
この変革を踏まえ、独立社外取締役である取締役会議長の鈴木善久氏と、2026年3月に新たに就任した監査等委員会委員長の觀恒平氏による対談を実施。変革の背景と狙い、グローバル展開に向けた課題と展望、そして社外取締役としての役割について、それぞれの視点から率直に意見を交わしました。
プロフィール
社外取締役(取締役会議長)
鈴木善久(すずきよしひさ)
2022年4月より、協和キリン株式会社 社外取締役。前伊藤忠商事代表取締役社長COO及び取締役副会長。
社外取締役(監査等委員)
觀恒平(かんこうへい)
2026年3月より、協和キリン株式会社 監査等委員である社外取締役。国際会計士連盟(IFAC)ボードメンバー(現任)。
ガバナンスの透明性と経営スピードをさらなる高みへ
鈴木 協和キリンは経営の独立性を確保するため、取締役会議長を社外取締役とするとともに、社外取締役が取締役会の過半数を占める体制へと段階的に移行してきました。さらに、Vision 2030の実現およびStory for Vision 2030の実行をより確実なものとするため、2025年にはCEO・COO制を導入しました。そして2026年にはMullickさんが正式にCEOへ就任し、同時に監査役会設置会社から監査等委員会設置会社への移行も実現しました。Mullickさんの選任については、指名・報酬諮問委員会でも時間をかけて丁寧に議論を重ねました。Mullickさんは英国での豊富な実績はもちろん、能力や人柄においても社内外から高い評価を得ています。COOとしての1年間を経て、CEOとしての適性は十分にあると確信しました。他の取締役会メンバーの見方も一致しており、正式就任に至りました。
觀 一連の移行は納得感のある判断だと感じています。監査等委員会設置会社になることで、監督機能と執行機能の役割分担がより明確になり、ガバナンスの透明性が高まります。執行側に権限をしっかり委ねながら、取締役会は監督に集中できます。また、監査等委員が取締役会の構成員となることで、重要な意思決定のプロセスに対して、独立した立場からより実効的な監督ができるようになりました。こうした移行が実現できたのは、機動力の高いC-suite Executives制度という新しい執行体制が構築されたことが大きかったのではないでしょうか。
鈴木 おっしゃる通りです。執行体制がここ数年で着実に整ってきたことで、多くの意思決定を執行側に任せられるようになりました。以前はCxOがMullickさんを除き全員日本人でしたが、今回のC-suite Executives制度への移行で、北米と欧州のリージョン・プレジデントが新たに加わりました。さらに、オーチャード社のCEOも加わり、C-suite全体が真にグローバルな顔ぶれになりました。
觀 今回の移行は、経営のさらなるスピードアップにもつながります。特にR&D関連の意思決定を執行側に委ねることで、取締役会は大局的な戦略やそれを支える経営基盤について、より深く議論できるようになるのではないでしょうか。
鈴木 まさにその通りで、R&Dの意思決定には専門的な知見や詳細なデータが欠かせないこともあり、これまで取締役会でもかなりの時間を割いていました。今後は、年間のR&D予算の総枠は取締役会で決定しつつ、その配分は経営陣に委ねていく方向にしたいと思っています。一方で、觀さんが言うように意思決定のスピードはこれまで以上に上げていかなければなりません。取締役会と執行側が本当の意味で両輪となって、協和キリングループをともに力強く前へ進めていくことが不可欠だと感じています。
グローバルに対応する、地域や部門の壁を超えた経営体制
觀 私は、当社の執行をモニタリングする上で、規制対応を特に重視したいと考えています。北米が最重要市場となっていく以上、アメリカ食品医薬品局(FDA)をはじめとする規制リスクへの対応は、経営に直結する問題です。
鈴木 サプライチェーンのリスクも高まっています。これまで製造は主に国内の高崎工場が中心でしたが、今後は米国ノースカロライナ州サンフォードに新たなバイオ医薬品工場が加わります。高崎、サンフォードの自社拠点とCDMO(委託製造)を活用した製造体制となり、製造のグローバル化が一気に進みます。これをいかに適切に管理していくかが、新たな経営課題の一つです。
觀 サプライチェーンがグローバルに広がるほど、管理の複雑さもリスクも増していきますね。
鈴木 だからこそ、Chief Supply Chain Officer(CSCO)として藏夛敏之さんを選任しました。グローバル全体のサプライチェーンリスクを経営層で適切に共有しながら、不測の事態への備えを強化しています。加えて、米国のMFN(最恵国待遇)政策も今後大きなリスクになり得ます。北米を率いるSteve Schaeferさんには、北米だけを見るのではなく、会社全体としてグローバルでどう動くべきかという視点を持って執行に臨んでほしいと思っています。
觀 おっしゃる通りですね。各地域・各部門のトップが自分たちの領域だけを見ていては、この厳しい環境の中で会社として成長していくのは難しいです。地域や部門の壁を取り払い、グローバルとして一体的に経営していこうとする今回のC-suite Executives体制の構築は、まさに時流に合った変革だと思います。
鈴木 私も同じ思いです。2026年2月に発表したVision 2030 and Beyond:中長期構想は、グローバルでの成長ビジョンを全社で共有するための重要な指針になります。あわせて、KABEGOEという企業文化も大切にしていきたいです。サイロ化を防ぎ、オープンな議論と相互フィードバックを促すこの文化は、グローバルで仕事をする上で欠かせないものだと思っています。
「世界中の患者さんのために」社外取締役も思いは一つ
觀 監査等委員会の重要な役割は、経営へのブレーキではなく、会社が正しい方向に進むよう促すハンドルになることだと私は考えています。内部監査部門や外部監査法人と緊密に連携しながら、経営リスクがどのように認識・対処されているかをしっかりモニタリングしていきたいと思います。
鈴木 そのためにも、現場の情報がどれだけ適切に取締役会(ボード)まで上がってくるかが重要です。社内の監査等委員である柴田健志さんはもともと経営監査部の部長ですので、現場の実情をしっかり吸い上げてくれると期待しています。
私は社外取締役を務めるなかで、協和キリングループの皆さんが患者さんの人生に寄り添う姿勢に触れてきました。いわゆるペイシェントジャーニーを踏まえ、発症、治療だけでなく、その後まで見ようとしていますね。患者さんのコミュニティと連絡を取り合い、ご家族ともお話しし、患者さんが直面する困りごとを理解したうえで行動する。希少疾患に向き合うスペシャリティファーマとしての使命を実践していることに、いつも感動しています。
觀 協和キリングループの使命そのものが、大きな社会的価値を持っています。私自身がこれまで経営に関わってきた企業を振り返っても、「自分たちは何のために仕事をするのか」が会社全体にしっかりと染み渡っていることは、非常に重要なことです。協和キリングループがこれからグローバルでさらに大きく成長していく姿を、ボードの一員として間近で支えられることを、とても楽しみにしています。
鈴木 同感です。私たちボードのメンバーも、執行チームと同じ方向を向きながら、この会社の成長を力強く後押ししていきたいと思っています。協和キリングループが世界中の患者さんに貢献できる会社へと飛躍していくために、これからも全力で取り組んでいきます。
